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【86歳で内部収益率-1.02%】厚生年金は96歳まで生きてようやく元がとれる金融商品

国民年金と厚生年金

 老後生活の柱である年金は国民年金と厚生年金の2種類があります。

 ザックリと言えば、自営業やフリーランス、扶養内で働いておられる方は国民年金、会社員や公務員として働いておられる方は厚生年金に加入しています。

 ・国民年金・・・掛金は一律で厚生年金と比較して少額、受給できる金額も少なく保障は薄い

 ・厚生年金・・・掛金は収入が多ければ増えるが、その分受給できる金額も多くなり保障も手厚い

 一般的にはこのような解釈でよいですね。そして、国民年金、厚生年金については、様々な意見があります。

 ・払ってももらえないから払い損

 ・年金だけでは生活できないので、払うだけ無駄

 このような否定的な意見が多いですね。

 しかし、実際にどれだけの損得があるのかは、数字でしっかりと確認する必要があります。

 そして、金融商品の優劣を判断する指標のひとつとなるのが内部収益率です。

 ・内部収益率とは

 ・国民年金の内部収益率について

 ・厚生年金の内部収益率について

 ・国民年金と厚生年金は得をすることができるのか

 今回は国民年金と厚生年金について、この4点を中心に触れてみたいと思います。

内部収益率とは

 金融商品が優れたものかを判断する指標のひとつとして内部収益率があります。

 内部収益率とは、ザックリと言えばお金の時間的価値を考慮した利回りのことです。

 投資において大切なのは「投資額に対してどれだけのリターンを得ることができるか」ということですが、それだけを考えていては投資で効率よく資産を増やすことはできません。

 例を出して考えてみます。

  

 株式を3年間保有することを考えた場合、A社とB社どちらの株式が投資先として優れているかと言えば、A社です。その理由はリターンと時間的価値を比較した場合、A社の方が優れているからです。

 ・購入時価格は同じ30万円

 ・3年経過時点での含み益は同じ0円

 リターンだけを考えた場合、3年後のA社とB社に差はありません。

 しかし、時間的価値を考慮した場合、優れているのはA社となります。

 ・A社は2年目の時点で投資元本のうち20万円を回収できている マイナス10万円

 ・B社は2年目の時点で投資元本のうち15万円しか回収できていない マイナス15万円

 このように、リターンと時間的価値を考えた場合、A社の方が元本回収が適切に行えているということです。そのため、A社の株式を購入していた方が、株式投資としても適切であったということです。

 この時間的価値を考慮したものが内部収益率です。内部収益率はパーセンテージで表示することができ、数字が大きいほど優秀だということになります。

 例のA社、B社の各年の内部収益率を表すとこのようになります。3年目の内部収益率は同じ0%(元本回収できているということ)ですが、1年目、2年目はA社の内部収益率がB社よりも高いことがわかります。

 これによって、A社の方がB社よりも投資対象として適切だということを、数字でも確認することができたこということです。

 それでは、国民年金と厚生年金の内部収益率をそれぞれを確認していきます。

国民年金の内部収益率

 国民年金の現在の掛金と受給額は概ねこのようになっています。(満額拠出の場合)

 ・掛金 年間193,200円(月16,610円)

 ・総掛金 7,972,800円(40年間)

 ・受給額 年間780,900円(月65,075円)

           

 国民年金の場合、75歳で元が取れることになり、女性の平均寿命(86歳)まで生きて受給した場合の内部収益率は2.1%となります。

 内部収益率を見て、65歳から受給して75歳でも元が取れるのであれば、平均寿命を考えると、国民年金は多くの場合で得をするような設計がなされていると考えてよいですね。

 次に厚生年金の内部収益率を確認していきます。

厚生年金は考え方によって意見が分かれる

 厚生年金の内部収益率を考える前に触れておく必要があるの労使折半です。

 厚生年金の加入者は公務員・会社員で、掛金は労使折半されており、半分は共済組合や会社が支払っています。

 この労使折半分をどのように考えるかによって、厚生年金の内部収益率は変わってきます。

 ・労使折半分は企業が負担してくれている

 ・労使折半分は自分の収入を企業が先取して納めているだけ

 この2つの考え方によって、厚生年金の掛金に対する考え方も違ってくるということです。

労使折半は企業が負担してくれていると考えた場合

 労使折半を企業が負担してくれていると考えた場合は、納めている金額は厚生年金掛金と同じ金額です。

 多くの方がこの金額を厚生年金掛金と考えています。今回は年収600万円ほどの会社員のケースで考えてみます。

 ・標準報酬月額 440,000円

 ・厚生年金掛金 年間 483,120円(月40,260円)

 ・総掛金額 19,324,800円(40年間)

 ・厚生年金受給額 年間 1,218,412円(月101,534円)

           

 このケースの場合、80歳時点で内部収益率がプラスに転じることになります。そして、女性の平均寿命(86歳)まで生きた場合の内部収益率は0.90%となります。

 ・80歳まで受給しないと元が取れない

 ・平均寿命まで生きて、内部収益率が0.9%

 このように考えると、割のよい金融商品とは言い難いですね。

 次に労使折半分は自分の収入を企業が先取して納めているだけと考えた場合の内部収益率を確認していきます。

労使折半分は自分の収入を企業が先取して納めているだけと考えた場合

 労使折半分は自分の収入を企業が先取して納めているだけと考えた場合、労使折半されている金額の倍の額が本来の厚生年金の掛金です。

 この場合で、年収が600万円の方が厚生年金で元が取れるのかを内部収益率から考えてみます。

 ・標準報酬月額 440,000円

 ・厚生年金掛金 年間 996,240円(月80,520円)

 ・総掛金額 38,649,600円(40年間)

 ・厚生年金受給額 年間 1,218,412円(月101,534円)

           

 このケースの場合、96歳まで受給してようやく内部収益率がプラスになります。女性の平均寿命まで受給したとしても、内部収益率がプラスにならず、元が取れない元本割れ商品ということになるのですね。

 ・86歳時点の内部収益率 -1.02%

 ・96歳時点の内部収益率 0.02%

 拠出額合計が3,800万円ほどで、毎年受給できる金額が120万円ほどなので、30年以上受給しても元が取れないことは肌感覚からも分かります。

 労使折半分は自分の収入を企業が先取して納めているだけと考えた場合は、掛金が大きくなるので、受給額に対する内部収益率は低くなってしまうということです。

 100歳まで受給して内部収益率が0.29%、ここまで受給できる方がどれほどいるかを考えると、厚生年金は元が取れないと言う意見も間違いではないということです。

 ※今回の計算は社会保険料控除を加味していません。社会保険料控除を加味すれば、もう少し、内部収益率は上昇します。掛金が多くなればなるほど、社会保険料控除は増加するので、高年収の厚生年金加入者は90歳付近で内部収益率がプラスになると考えられます。

国民年金と厚生年金はどちらが得なのか

 内部収益率から国民年金と厚生年金どちらが得かについて考えてみました。

 ザックリとまとめるとこのようになりますね。内部収益率から国民年金と厚生年金のどちらが得かを考えれば、国民年金だということは明らかです。

 厚生年金については、会社や共済組合の労使折半分をどのように考えるかで厚生年金の内部収益率は変わってきます。

 ・労使折半分は会社が負担してくれているものだから、ありがたい

 ・労使折半分は本来は給料に振り込まれるべきで、会社が給料から労使折半という名目で給料を支払っていないだけ

 労使折半にはこのような考え方があります。どちらが正しいのかはわかりません。

 しかし、これらのことを考えるのは本質的ではありません。会社員・公務員である以上、厚生年金は納めないという選択はできないからですね。

 どちらの考え方にしろ、厚生年金は労使折半分を個人が支払っており、80歳まで受給してようやく元が取れる金融商品ということを考えると、資産を増加させる金融商品とは言い難いということです。

内部収益率だけを見た場合、国民年金の方が優れているが・・・

YOHの考え

 厚生年金は40年間掛金を納め続けて、平均寿命まで生きたとしても、内部収益率をマイナスになる金融商品だということです。

 これは、金融商品としては不適格で資産投下に値しないと言ってよいですね。

 そのように考えれば、金融商品として適切なのは、早い段階で内部収益率がプラスになる国民年金です。

 しかし、厚生年金には手厚い保険機能が付帯しています。

 ・遺族厚生年金

 ・障害厚生年金

 ・傷病手当金

 ・出産手当金

 これらは、掛金の少ない国民年金には無い充実した保険内容です。

 掛金と受給額、付帯する保険を加味すると、決して悪くない保険商品だと私は考えています。

 人生における大きなセーフティーネットの役割を果たしているからですね。

 ・厚生年金(社会保険)を金融商品として見た場合は不適格

 ・厚生年金(社会保険)を保険商品として見た場合は資産投下に値する

 私自身はこのように考えています。掛金と受給額だけを内部収益率から見ると、自分で資産運用をした方が資産形成はできそうですが、それだけで考えてはいけないのが厚生年金なのですね。

 しかし、今後は掛金が増加して受給額が下がることは間違いありません。

 そうなると、内部収益率はさらに下降して、100歳まで受給しても内部収益率がプラスにならないことは十分に考えられます。

 老後生活を国民年金や厚生年金だけに依存することは、すでに終わりを迎えています。

 老後生活を送るためには、現役世代の時に自分自身でしっかりと年金の3階、4階部分を積み上げて行く必要があるということです。

 ご覧いただきありがとうございました。

 年金に関してはこちらでも記事にしています。受給金額というのは年々難しいものになっていきますね。

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 年金は現在のところ、収入だけで運営が成り立っています。年金財源には積立金があり、それには手を付けられていません。その積立金を管理運営しているのがGPIFです。

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 年金はGPIFとマクロ経済スライドによって適切に管理運営されています。マクロ経済スライドについては、こちらで記事にしています。

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