社会保険料について
会社員や公務員は厚生年金と健康保険といった社会保障制度に加入しています。そのため、給料から控除される形で社会保障費を納めており、全ての人が納付しています。
・標準月額報酬
・社会保険料率(約18.3%)
これを掛け合わした金額が社会保険料となります。
・長期掛金(厚生年金)
・短期掛金(健康保険料)
社会保険料として給料から天引きされているのはこの2つです。
社会保険料の半分は会社や共済組合が負担してるので、実質的な負担は標準月額報酬の9%ほどになります。
・年収660万円
・標準月額報酬44万円
・厚生年金 37,000円/月
・健康保険 22,000円/月
公務員のボリュームゾーンの給料で考えると、このような負担が平均的となります。
会社員や公務員の年金について
会社員や公務員の年金は厚生年金です。
・年金はもらえるかわからない
・年金は払い損
・年金に期待はしていない
このようなことを聞きますが、実体は異なります。
・年金はGPIFが適切に管理している
・マクロ経済スライドがある
このことから、今のところ、年金の制度そのものが破綻することは無いと言ってよいですね。しかし、年金に老後資金全てを期待する、ということも避けた方がよいですね。
・所得代替率は低下する
・支給額も低下する
・受取り時期が遅くなる(70歳~)
これらのことは、間違いなく起こるからですね。年金がもらえなくなることはないが、年金だけで豊かな老後を送ることは難しい。このように考えておくべきです。
・保険料
・税金(所得税、住民税等)
・積立金
年金の財源はこの3つですが、現在のところ、保険料と税金だけで年金は運営を続けています。積立金については、GPIFが適切に管理しており、2001年から2021年の20年間で100兆円以上の含み益を出しています。
そして、現在運営の主体となっている保険料と税金のバランスを保つために大きな役割を果たしているのが、マクロ経済スライドです。
・年金は払うだけ無駄
・年金は現在の若い世代は受け取ることができない
このようなことを言われることがありますが、マクロ経済スライドがある限り、その心配は非常に少ないと言ってよいですね。しかし、多くの方が気になるのは、「将来の年金額が減額されるのではないか」ということです。
・年金改正法
・マクロ経済スライドとは
・年金は減額されるのか
そのため、今回は年金が破綻しない要因の1つであるマクロ経済スライドについて、この3点から触れてみたいと思います。
2004年の年金法改正
公的年金制度は100年維持できるように、5年ごとに見直しが行われています。5年ごとに少しずつ変化していっているのですが、年金制度の方向性が大きく変わったのは2004年の年金制度改正です。
・2004年まで → 年金支給総額に合わせて年金負担額を決める
・2004年から → 年金負担額の範囲内で年金支給額を決める
このような制度改正が行われました。年金受給者が増え続け、労働者がある程度減ることが明らかです。支給額を一定にしていれば、年金の掛金はどんどん上がっていくからですね。
公務員やサラリーマンにはピンときませんが、自営業やフリーランスの方は年金を納めないという選択肢を取ることもできるため、年金の掛金が上がって行けば未納者が増加して年金制度が破綻してしまう恐れがあるということです。
そのため、2004年の年金法改正によって、年金の掛金が大きく上がることは無くなったということです。しかし、年金負担額が減れば、年金支給額が減ってしまうということです。
そこで年金の調整策として作られたのがマクロ経済スライドです。
マクロ経済スライドとは
マクロ経済スライドとは、保険料を払う人が減ったり、年金をもらう人が増えた分を年金支給額から差し引く仕組みです。年金の大改革によって、財源が固定化されたので、決められた額の中でやりくりするために作り出された制度です。
物価が上昇すれば、年金の受給額も増加します。同じ15万円でも、昨年よりも物価が上昇していれば、生活費は上昇するからですね。
マクロ経済スライドは主に物価上昇率に応じて適応されます。
【以前】物価が2%上昇したら年金支給額も2%上昇させる
【現在】物価が2%上昇したら年金支給額は1%の上昇に留める
この1%のスライド調整がマクロ経済スライドです。
・物価上昇時は年金支給額が増える
・物価減少時は減少幅よりも低いスライド調整をするので、実質支給率は目減りしない
このようなルールで調整が行われていますが、実際にマクロ経済スライドが発動したのは2015年、2019、2020年の3回だけです。デフレが長期化したからですね。このことから考えても、マクロ経済スライドは基本的に物価上昇時に発動することを前提に作られた仕組みということです。
これと、新たに年金受給者となる高齢者には現役労働者世代の生活水準の変化に応じた賃金変化率、既に年金受給をしている高齢者には実質的な年金価値を維持するための物価変動率のスライドルールを導入しています。
2004年からは長期的なデフレが続いており、マクロ経済スライドは発動できずに10年以上経過しましたが、2018年からデフレを抜け出しつつあります。
今後も緩やかながらインフレ傾向にあるので、マクロ経済スライドは発動することが期待できるでしょう。
・年金の支給額は減らさない
・年金の支給額は増やさない
・社会保険料の負担をできるだけあげない
・年金制度を維持する
この無理難題をこなしていくシステムがマクロ経済スライドなのです。しかし、現在の年金受給額が減額されていないかと言えば、そうではありません。
マクロ経済スライドによって、年金は減額されるのか
無理難題をこなしていく仕組みとして非常よくできたマクロ経済スライドですが、それがあるから年金が減額されないということはありません。
現に、2022年は年金受給額は減額されています。理由としては、マクロ経済スライドが発動しなかったからですね。
マクロ経済スライドに必要な2022年の物価上昇率と賃金変化率は以下のようになっています。
・物価上昇率 -0.2%
・賃金変化率 -0.4%
賃金変化率が物価上昇率を下回っているため、2022年はマクロ経済スライドの調整は行われません。そのため、年金受給額は-0.4%となります。
国民年金の平均受給額は1人5.5万円/月、厚生年金受給額は14.5万円/月とすると2022年の年金受給額は以下の減額されることになります。
・5.5万円×12カ月×0.4%=2,640円(国民年金の減額分)
・14.5万円×12カ月×0.4%=6,960円(厚生年金の減額分)
このようになるということです。夫が厚生年金、妻が国民年金のモデルケース世帯で考えると、2022年の年金受給額は合計金額の9,600円が減額されることになるということです。
YOHの考え
マクロ経済スライドがある限り、今後50年は年金財源が枯渇することは心配しなくてもよいでしょう。しかし、減額することがあるのは自然な流れと言ってよいですね。
・所得代替率の低下
・支給開始時期の延長(70歳から)
財源が枯渇することは無くても、このような調整は避けられないからですね。物価変動に伴う年金受給額の変動は避けることが難しいということです。
・年金受給額が現在の水準の半分以下になる
・100歳まで生きても元を取れない
しかし、このようなことは考えにくいですね。。
私の考えになってしましますが、マクロ経済スライドはデフレ時でも発動するのがよいのです。物価や賃金の上昇、減少に関わらずマクロ経済スライドでスライド調整を行うことが、年金制度を最も長く存続させることができるからですね。
今の30代、40代が年金を受給できるのは30年先です。そのころに受給できる額は今の70%、現在の貨幣価値で月12万円ほどになると私は考えています。
月12万円、配偶者が国民年金受給なら2人合わせて受給できる金額は月に18万円ほどです。これでは、生活することで手一杯ということになります。
・年金だけで老後は安泰
この考えは終わりを迎えています。年金はもらえることは間違いないでしょうが、年金だけに老後の人生を任せることはあまりにも危険です。このような認識をもって、貯蓄や資産運用をする必要がある私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
年金積立金の管理運営を行っているのはGPIFです。そのポートフォリオは非常に参考になります。
年金受給において、所得代替率の低下は避けられませんが、数字を確認するとそれほど悲観的ではないですね。
2022年4月の年金制度改正については、こちらで記事にしています。