年金財政検証結果
公的年金(老齢年金)は多くの方にとって老後生活における収入の柱となるものです。
・毎月一定の金額が支給される
・死ぬまでもらうことができる
この2つが老後生活における収入の柱となる理由です。
そして、公的年金の財源は3つから成り立っています。
・保険料収入
・国庫負担金
・積立金
この3つの財源を公的年金受給者に支出することによって、公的年金制度は成り立っています。
そして、公的年金の財源は定期的に見直され、検証が行われ公表されています。
直近では、2024年7月3日に厚生労働省から将来の公的年金の財政見通しが公表されました。
この将来の公的年金の財政検証の見通しは「年金財政検証」と言われ、厚生年金法と国民年金法の規定によって、少なくとも5年に1度行われることになっています。
・公的年金の現時点での財政状況
・将来における公的年金の財政見通し
年金財政検証はこのようなことを検証していることから、公的年金の健康診断ともいわれています。
そして、今回の公的年金の健康診断結果を一言で言い表すなら、「良好」であるということです。
現時点と今後の公的年金の財源状況には概ね問題がなく、順調に推移しています。
・年金財政検証結果について
・今の現役世代は老後生活を年金受給に頼ってよいのか
今回は、年金財政検証結果について、この2点を中心に触れてみたいと思います。
今回の年金財政検証結果
今回の年金財政検証結果が良好な理由を大まかにまとめると以下の2点となります。
・日本の経済成長が鈍化しても将来の所得代替率が50%を下回ることはほぼない
・年金財政の積立金は順調に増加し続けている
この2点が年金の健康診断結果が良好な理由です。それぞれについて順番に触れていきます。
日本の経済成長が鈍化しても将来の所得代替率が50%を下回ることはない
年金の健康診断結果が良好な理由のひとつ目が「日本の経済成長が鈍化しても将来の所得代替率が50%を下回ることはほぼない」ということです。
年金財政検証では、将来の所得代替率について4つのパターンで検証を行っています。
・高成長実現ケース
・成長型経済移行・継続ケース
・過去30年投影ケース
・1人当たりゼロ成長ケース
このうち、3つのケースで所得代替率が50%を下回ることがないという結果が出ています。
・高成長実現ケース・・・56.9%(2039年時点)
・成長型経済移行・継続ケース・・・57.6%(2037年時点)
・過去30年投影ケース・・・50.4%(2059年時点)
年の状況は異なりますが、13年~35年後にはこれぐらいの所得代替率で年金支給がされることになるということです。
年金財政は積立金が順調に増加し続けている
年金の健康診断結果が良好な理由の2つ目が「年金財政は積立金が順調に増加し続けている」ということです。
年金の積立金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が管轄しており、その運用は非常に順調です。
運用開始の2001年から2023年度末のチャートはきれいな右肩上がりで推移しており、運用資産額は着実に増加し続けていることがわかります。
・累計収益額 153兆7976億円
・運用資産額 245兆9815億円
GPIFは年金積立金を管理運用することによって、これだけの収益を上げているということです。
GPIFが年金積立金をこれだけ増加させることができている理由はその運用方法にあります。
このように、資産構成割合を国内株式、国内債券、外国株式、外国債券がほぼ同比率になるようにすることにしています。
・相場の下落時には債券によって損失を抑える
・相場の上昇時には株式によって利益を増加させる
このような目先の利益に捕らわれることがない、長期的な運用をしているということです。
YOHの考え
今回は2024年7月3日に厚生労働省から将来の公的年金の財政見通しについて触れてみました。
この将来の公的年金の財政見通し(年金財政検証結果)は公的年金の健康診断と言われています。
そして、その健康診断結果は概ね良好と政府は判断しているということです。
実際に、この年金財政検証結果を受けて、厚生労働省は以前から議論していた国民年金の納付期間5年延長のついては撤回することを決定しました。
現在の国民年金納付期間は20歳から60歳までの40年ですが、これが65歳になると総額で100万円近い保険料負担が増加することになります。
これを撤回したということは、それだけ現在の公的年金の健康状態は問題ないということです。
公的年金、特に老齢年金についてたまに耳にするのは「年金はもらうことができないから払うだけ無駄」という意見です。
私自身は、この意見については明確に間違っていると考えています。
・現役世代が年金保険料を納付しない
・年金支給額が保険料額を大きく超える
・年金積立金が枯渇する
このような3つのケース全てが満たされた場合、年金をもらうことはできない、ということになりますが、このようなケースはほぼ考えられないといってよいですね。
仮に、このようなケースが発生した場合というのは年金どころの話ではありません。日本が北斗の拳のような世界になってしまっているということです。
しかし、老後生活を年金受給だけで悠々自適に生活をしていくことができるのかと言えば、そうではないですね。
年金財政検証結果で検証されている最も悪い「1人当たりゼロ成長ケース」であれば、2059年までに積立金を取り崩して支給して所得代替率は50.1%、その後は保険料収入と国庫負担金のみで支給することになり、所得代替率は33~37%となることが予想されています。
もちろん、これは最悪のケースですが、所得代替率は順調に経済成長を続けたとしても70%以上になることはありません。
・最も良くて60%
・普通で50~55%
・悪くて33%
年金受給に関しては、これぐらいの温度感で構えておく必要があるということです。
現役時の手取平均額が月30万円であれば、夫婦合わせて月15万円。これぐらいで考えておく必要があるというのが私の印象です。
暮らしぶりによりますが、夫婦で月15万円の生活をするのは楽ではありません。
そのため、金銭的に困らない生活をするのであれば、年金受給だけに頼るのではなくある程度の資産を形成しておく必要があるというのが、私の考えです。
ご覧いただきありがとうございました。
年金納付期間引き上げに関して頂いた質問についてはこちらで記事にしています。
今回の年金財政検証結果では在職定時改定についても触れられています。在職定時改定についてはこちらで記事にしています。
年金に頼らない人生設計をしておくことは非常に重要ですね。