就労者年齢の上昇
ひと昔前までの公務員や会社員の王道人生設計というのは、定年退職後は年金で生活するというものでした。
・60歳まで同じ会社で働き続ける
・年金受給後はローン返済が完了したマイホームで悠々自適に生活する
具体的に言えばこのような人生設計ですね。しかし、現在はこのような人生設計は成り立たなくなっています。
その主な原因は年金制度の改正によるところが非常に大きいですね。
・年金受給年齢の引き上げ
・年金受給金額の減少
このようなことに加えて、平均寿命も上昇しているので定年退職後に年金だけで生活するということは難しくなっているということです。
そのため、60歳以降も働くという選択を取る方が非常に多くなっています。
そんな中で、令和4年4月から新たな年金制度として、「在職定時改定」が導入されています。
・在職定時改定とは
・在職定時改定によって、年金額はどのようになるのか
今回はこの2点について触れてみたいと思います。
在職定時改定
在職定時改定とは、65歳以降に在職中であっても年金を増額して受給できる制度です。
その、在職定時改定で抑えておきたいポイントは以下の2つです。
・厚生年金保険料を払いながら年金受給額が増加する
・トータルの年金受給額は増加する
この2点を抑えておく必要があります。順番に触れていきます。
厚生年金保険料を払いながら年金受給額が増加する
在職定時改定で抑えておきたいポイントのひとつ目は「厚生年金保険料を払いながら年金受給額が増加する」ということです。
65歳以降で年金受給をしながら働いている場合、年金受給しながら厚生年金保険料を納めています。
そして、在職定時改定が導入される前は、その働きながら納めている年金を受給できるのは、厚生年金の被保険者資格を失う70歳からか退職した翌月になります。
図にするとこのようになりますね。要するに、在職定時改定が導入される前は、65歳以降も働いて厚生年金保険料を納めていても、働いている間は年金受給額が増加することは無かったということです。
しかし、在職定時改定が導入されてからは、65歳以降も働いて厚生年金保険料を納めていれば、納付額に応じて毎年年金受給額が増加することになります。
図にするとこのようになりますね。さらに詳しく解説すると、厚生年金受給額が上乗せされるのは毎年10月になります。
・65歳から66歳の間の7月~6月まで年金受給しながら厚生年金保険料を払った
この場合は、66歳の10月から上乗せ分を含めた厚生年金を受給できることになります。
そして、退職した場合は、翌月から厚生年金受給額が上乗せされることになります。
・66歳から67歳の6月まで働いて退職した
この場合は、67歳の7月から上乗せ分を受給できることになります。
トータルの年金受給額は増加する
在職定時改定で抑えておきたいポイントの2つ目は「トータルの年金受給額は増加する」ということです。
在職定時改定によって、上乗せされる厚生年金受給金額は現在の厚生年金受給金額ど同様に計算することができます。
平均標準報酬月額 × 0.005481 × 加入年数
この計算式に当てはめて計算すると、月給20万円の場合は以下のようになります。
・20万円 × 0.005481 × 12カ月 = 13,154円
この金額が働いている間、厚生年金受給額に年々加算されていくことになります。
このように考えると、厚生年金受給額はトータルで増加すると考えてよいですね。
このような厚生年金受給形態になることから、上乗せされる年金受給金額分がトータルで増加することになるということです。
例に挙げた平均標準報酬月額20万円のケースの場合の具体的な金額を確認していきます。
・20万円 × 0.005481 × 12カ月 = 13,154円(約1.3万円)
これを5年間(65歳~69歳)まで納めるので、70歳以降に受給できる厚生年金は年間6.5万円増加することになります。
そして、66歳~69歳の上乗せ分がトータルで受給できる年金増加分になります。
・66歳~69歳(4年)
・67歳~69歳(3年)
・68歳~69歳(2年)
・69歳(1年)
・合計10年
この10年分の上乗せ金額がトータルで増加することになるので、生涯で13万円の増加になると考えておいてよいですね。
このように、在職定時改定によって、65歳以降に働いた場合、年間の上乗せ額がトータルで増加されることになります。
※実際には、誕生日によって、厚生年金加入期間は異なるので多少の増減はありますが、標準報酬月額20万円のモデルケースではこの金額から大きく逸脱することはないですね。
YOHの考え
今回は在職定時改定について解説をしました。在職定時改定について抑えておきたいポイントは2つです。
・厚生年金保険料を払いながら年金受給額が増加する
・トータルの年金受給額は増加する
このことは65歳以降も働く年金受給者にはプラスになるということです。
・年間1.3万円
・合計13万円
標準報酬月額20万円の場合、金額はこのようになり、微々たる金額という印象を受けますが、とりあえずは増加することに間違いはないということです。
年金制度というのは非常に複雑で、年々形を変えていきます。そのため、自分が年金受給する時にどのような制度になっているかはわかりません。
・受給開始年齢
・受給金額
今の現役労働者世代にとって、この辺りは全くの未知数だということです。
しかし、変化しないこともありますね。
・月数万円は受給できる
・掛金に応じた金額を受給できる
・死ぬまで受給できる
この3つは崩壊することが無いと私は考えています。しかし、年金だけで老後生活を送ることは不可能だとも考えています。
・受給開始は70~75歳
・受給金額は月10~12万円
私が厚生年金を受給するころには、平均標準報酬月額40万円で40年間納めていてもこれぐらいの水準になっていると考えています。
夫婦2人で受給なら、月20~24万円になるので慎ましく老後生活は送ることは可能でしょうが、そうでは無い場合は金銭的には非常に難しいことになるということです。
在職定時改定は65歳以降も働く年金受給者にとってプラスにはなりますが、根本的な解決策になることはありません。
・預金
・投資
・節約
このようなことで、年金に依存しないような金銭的土台を作っておくことが大切だと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
年金制度で抑えておきたいポイントはマクロ経済スライドです。これによって、年金制度は長く保つ設計がされています。
年金財源のひとつである積立金はGPIFによって管理運営されています。その運用は長期投資のお手本のような健全かつ的確なものですね。
65歳以降に働く際には役職を外れてしまうことが一般的です。その時に老害と呼ばれないような準備をしておくことが大切ですね。