増税と物価高
今の日本のトレンドと言えば増税と物価高です。その大きな原因として挙げられるのが実質賃金の低下ですね。
厚生労働省が毎月発表している勤労統計調査によると、物価変動を考慮した実質賃金は16カ月連続のマイナスとなっており、歯止めがかかる兆しすら見えない状況です。
特に昨年の10月からは月のマイナス成長率が2%を超える月が続いています。
一方で、名目賃金(現金給与総額)はプラス成長を続けています。
・名目賃金は上昇し続けている
・実質賃金は下降し続けている
これは異常事態と言ってよいですね。給料が上がっているにも関わらず、物価高の影響によって、日々の暮らしぶりが良くなることはないということです。
そして、この状況にさらに追い打ちをかけているのが、増税と社会保険料の増加ですね。
社会保険料と税負担を足した国民負担率はきれいな右肩上がりを続けており、令和5年の国民負担率は46.8%となっています。
会社員や公務員のような給与所得者であれば、社会保険料は労使折半によって雇用先が半分負担しているので、実際に46.8%が給料から引かれているわけではないですが、それでも大きな割合で負担をしているということです。
・物価高による実質賃金の減少
・税と社会保険料負担の増加
この2つの原因によって起こる大きな問題というのがお金を貯めることができないということです。
貯蓄と負債の状況
物価高と税、社会保険料負担によってお金が貯めることができない世帯が増加しているのは事実ですが、総務省が行っている統計調査によると、世帯の貯蓄というのはそれほど少ないわけではありません。
2022年の家計調査年報(貯蓄・負債編)によると、貯蓄現在高の平均値は1,901万円で4年連続上昇しています。
このように、貯蓄額の平均は2019年から4年連続で増加しており、今回の調査対象の2022年には1901万円となっています。
※貯蓄とは通貨性預貯金・定期性預貯金・生命保険など・有価証券・金融機関外の5つの資産の合計です。
この1,901万円という貯蓄額は過去最多となっています。
貯蓄の内訳を2019年から比較すると、通貨性預貯金と有価証券が大きく額を増やしていることがわかります。
・2019年の通貨性預貯金 494万円
・2022年の通貨性預貯金 634万円
通貨性預貯金は2019年から140万円増加しており、全体に占める割合も28.1%から33.4%に増加しています。
そして、有価証券(株式等)も金額、割合が大きく増加しています。
・2019年の有価証券 234万円
・2022年の有価証券 294万円
このように、4年間で60万円増加しており、全体に占める割合も13.4%から15.5%に増加しています。
しかし、この平均金額というのはかなり偏ったものであるということです。
その理由としては、3分の2以上の世帯が平均値を下回っているからですね。
このグラフを見てわかるとおり、貯蓄保有額1,000万円以下の世帯割合が非常に多いことがわかります。
・100万円未満 9.7%
・100万円~200万円 5.4%
・200万円~300万円 4.6%
このように抽出していくと、平均値に届いていない世帯割合は68%になり、貯蓄現在高の少ない方に偏った分布になっているということです。
しかし、貯蓄が1,000万円以上ある世帯全てが資産形成できているわけではありません。負債を抱えている世帯もあるからですね。
負債の状況について
2022年の家計調査年報(貯蓄・負債編)の負債についてザックリとまとめと以下のようになります。
・負債現在高の平均値は576万円
・負債保有世帯の平均負債額は1,528万円
順番に触れていきます。
負債現在高の平均値は576万円
2022年の家計調査年報(貯蓄・負債編)の負債について確認してわかることは、「負債現在高の平均値は576万円」ということです。
この表からわかるとおり、2人以上世帯における2022年の負債平均残高は576万円となっており、昨年と比較して1.6%の増加となっています。
しかし、負債残高については2019年から確認していくとそれほど変化がないことがわります。
・2019年 570万円
・2022年 576万円
このように、4年間で6万円しか増加していないということです。10年前の2013年から比較していくと増加傾向にはありますが、急激に増加しているということではないですね。
そして、この負債残高の平均が576万円というのはかなり少なく感じますね。
・住宅ローン残債が数千万円ある
このような世帯が一定数いるにも関わらず、負債残高の平均が576万円というのは少なく感じるということです。
これは調査世帯の属性によるところが非常に大きいですね。
・単身世帯
・こどもがいない世帯
・高齢者世帯
このような世帯は住宅ローンを組んでいなかったり、返済が完了しているということです。そのため、負債を抱えていないということですね。
そして、負債残高の平均が576万円であることについては、負債が全くない世帯も含まれています。
負債がある世帯だけを抽出するとその金額は大きく変わってきます。
負債保有世帯の平均負債額は1,528万円
2022年の世帯における負債現在高を負債がある世帯だけに絞って確認すると、負債平均額は1,528万円になります。
上のグラフで確認すると、負債残高がある世帯割合は37.7%で、その平均額は1528万円、中央値は1,231万円となっていることがわかります。
・負債が全くない世帯割合が62.3%
・その負債が全くない世帯を含めた負債残高平均が576万円
・負債残高がある世帯に限って確認すると、負債残高平均は1,528万円
各世帯の負債状況を確認すると、このようになっているということです。
そして、世帯における貯蓄と負債の状況をまとめると以下のようになります。
・世帯における貯蓄の中央値 1,091万円
・世帯における負債の中央値 1,231万円
・世帯の実質的な保有資産 -140万円
これが平均的な世帯の家計の状況であるということです。
YOHの考え
今回は世帯の金融資産保有状況について触れてみました。
日本の現在のトレンドは増税と物価高でこの流れは短期間のうちに終息することは無いと言ってよいですね。
・出生率の低下
・少子高齢化
この2つが解消されない限り、税金や社会保険料は年々上昇を続けていくでしょうし、生産者人口が増加しないかぎり、経済的な大きな成長はなく、物価高も解消されることがないということです。
そして、このような状況を踏まえて世帯における金融資産の保有状況は決してよいものではありません。
・世帯における貯蓄の中央値 1,091万円
・世帯における負債の中央値 1,231万円
・世帯の実質的な保有資産 -140万円
平均的な世帯であればこのような状況にあるということは、多くの世帯が慢性的に借金をし続けているということです。
このような状況で起こることというのは2極化です。
・お金のある世帯はどんどんと資産を増加させていく
・お金のない世帯は負債がある状況で停滞を続ける
このような2極化が進んで行くということです。そして、現在の日本というのは、お金のある世帯にとって有利にできているということです。
しかし、現在資産保有状況がマイナスであっても自助努力によってどうにかすることは十分に可能です。
政府としては「お金を受け取れるポジション」に就く方法を用意しているからですね。
それを使うためには、過去の考えに縛られることなく、時代の変化に合わせて自分自身の考えを変えていくことが求められているということです。
今の社会では、漫然と生活していれば、お金を受け取れるポジションにつくことはできません。
できれば、私のこどもが親になるころには、そのような社会構造が解消されることを願っていますが、現在に日本はそうではないということです。
現在の日本では、時代の変化に柔軟に対応し、新しい考えを持って行動する人だけが「お金を受け取れるポジション」に就くことができるのだと、私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
平均的な収入で平均的なポートフォリオを組めば、金銭的に難しい人生になるということです。
収入が安定した職場にいれば生活に困らないように思われますが、それは幻想です。実際にはしっかりと資産形成をする必要がありますね。
資産運用をしていると、周囲の常識と考え方が乖離していると感じることが多々ありますね。特に、公務員組織ではそれが顕著です。