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【朝日新聞デジタル】救急車のサイレンの苦情について

2月11日の朝日新聞デジタルの記事

 内容としては非常にシンプルで、救急車のサイレンがうるさいとの苦情が全国の消防本部で寄せられているということです。ヤフーニュースのコメント欄には1万件を超えるコメントが寄せられています。

 ・緊急自動車なのでしょうがない

 ・周りが配慮すればよい

 どちらかと言えば、このような救急車を擁護するようなコメントが多い印象です。

 ・大音量過ぎる

 ・鳴らす必要がない場面で鳴らしている

 ・少しは配慮してもよいのでは

 しかし、このように感じる方も少なからずおられるのは間違いありません。今回は、救急隊員の立場からこの記事の内容について触れてみたいと思います。

緊急自動車の要件

 前提条件として、救急車の緊急走行は緊急自動車の要件を満たして走行する必要があります。

 ・公安委員会の指定を受けていること

 ・走行が緊急用務であること

 ・サイレンを鳴らしていること

 ・赤色灯を付けていること

 ・走行中であること

 これらの要件を満たしていることが緊急自動車の要件となります。ひとつでも欠けていると、緊急自動車としての要件を満たしていないことになります。そのため、救急出動とサイレンは切り離すことはできないということですね。

 そして、緊急自動車はいくつかの特例が認められています。

 ・停止義務の免除

 ・追い越し禁止区域での追い越し

 ・車両通行禁止区域での走行

 ・道路標識に従わなくてもよい

 このようなことが認められています。しかし、実際に救急車を運転する場合、特例で認められている走行は必要最小限度に留めます。

 ・一方通行の逆走

 ・反対車線へはみ出しての走行

 ・赤信号での交差点への侵入

 このようなことは、なるべくしたくないというのが救急隊の本音です。非常に危険が伴い、事故の確率が上がるからですね。新御堂筋線のような、交通量の多い片側3車線以上の交差点などに赤信号で進入する時は、生きた心地がしません。

 ※速度に関しては、一般道では80㎞/h、高速道路では100㎞/hが上限で決められています。急いでいるからといって、140㎞/hなどで走行することはできないということです。自治体によっては、救急車にリミッターをつけて100㎞/h以上出せないようにしている場合もあります。

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出典 緊急自動車の特例

サイレンを止めて走行することはできるか

 サイレンを止めて救急出動することができるか、というのは法令上はできないということになります。しかし、119番通報時に「家の近くに来たらサイレンを止めて欲しい」という要望を言う方はおられます。

 基本的にはできないと伝えますが、熱望する方が一定数おられます。その場合、どうするかと言えば、現場に向かっている救急隊に判断してもらうことになります。救急要請の概要を無線送信する時に、「サイレンについて配慮して欲しいと要望がありました。」と伝えるということです。

 ・緊急自動車なのでそれはできない

 ・住宅街だし近づいたらサイレンを止めてゆっくり走行しよう

 このような判断をするのは出動している救急隊ということです。

 ※サイレンの配慮をするのは住宅街や病院に着く直前で、市街地を走行中にサイレンを止めることはまずありません。

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サイレンがうるさいのは理解ができる。しかし、安全に走行する上で欠かせないものということ。

YOHの考え

 私は救急出動でサイレンに配慮して欲しいという要望があっても、サイレンを止めて走行することはありません。傷病者にとって、得をすることが何ひとつとして無いからですね。

 ・サイレンを止めて走行したことで、他の車が救急車に気付かず事故が起こった

 ・サイレンを止めて走行したことで、現場到着が数秒遅れた

 このようなことになっては、救急要請した方が不利益を被ってしまうということです。そして、市街地を走行する際は、サイレンはなるべく大きな音で鳴らすようにしています。

 ・車の遮音性能の向上

 ・音楽プレーヤーやスマートフォンの普及

 このようなことによって、周囲の音に気付きにくい環境が広がっているからですね。少しでも傷病者を安全に早く搬送するためには、救急車のサイレンは欠かすことができないものだと私は考えています。

 しかし、普通に生活している方にとっては耳障りということは間違いありません。そのため、お互い歩み寄る必要があるのですね。

 ・市街地では音量を最小限にする

 ・全く鳴らさずに救急出動することができないことを了承する

 このようなお互いの歩み寄りが大切だと私は大切だと考えています。

 ・法令で決まっているからサイレンを止めることはできない

 消防側がこのようなことを理由に歩み寄りを拒否してしまえば、市民との良好な関係を築くことができません。

 ・救急隊員が横柄だったから、今後は救急車を使わない

 ・消防組織が嫌い

 このように感じてしまえば、救える命が救えなくなる可能性があります。それでは、意味が無いということですね。サイレン問題ひとつにとっても、法令で決まっているから、というだけではなく、しっかりと向き合うことが大切だと私は考えています。

 ご覧いただきありがとうございました。

 仕事に関することはこちらで記事にしています。

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 救急搬送困難事例は増加していますね。

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 墜落外傷についてはこちらで記事にしています。

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