所得倍増プラン
6月15日に岸田文雄総理は年末までに「所得倍増プラン」を策定すると明らかにしました。
・NISA制度
・iDeCo
岸田総理が掲げる所得倍増計画には、この2つの制度改革が目玉のひとつであることは時折触れられることからも明らかです。そのため、年末に策定する「所得倍増プラン」でどのように触れられるのか非常に注目されています。
しかし、岸田総理の経済政策というのは二転三転することが多く、一貫性がありません。
※実際に自民党総裁選挙の際、立候補者は将来的な増税には賛成をしていましたが、金融所得課税に積極的に触れていたのは高市早苗氏だけだったと記憶しています。
・株式譲渡益や配当金の税率を上げる
・自社株買いの規制
岸田総理は就任当初から、このような金融所得課税強化に触れるような発言があり、その度に株式市場は敏感に反応して岸田ショックと言われていました。
・金融所得課税を現行の20%から25%に引き上げる
このように発言した直後に株式市場は大きく値を下げ、すぐに金融所得課税はすぐに行わないことを明らかにするなど、金融政策が不透明だということです。
しかし、年末に策定する「所得倍増プラン」でどのように触れられるのかは個人的には非常に楽しみですね。今回は、岸田総理が年末までに策定を進めている所得倍増プランについてNISA制度の点から予想してみたいと思います。
一般NISAの変更
NISA制度は現在、一般NISAとつみたてNISAがありますが、一般NISAは2024年から新しくなることが決まっています。
・成人年齢の引き下げにより18歳から運用可能
・2階建ての制度、1階は積立、2階は自由
・1階部分は投資信託などの積立型の金融商品のみの購入(年間20万円)
・1階部分を少しでも使わないと2階部分を使うことはできない
・2階部分は個別株などを購入可能(年間102万円)
現行との変更点をザックリと挙げるとこのようになりますね。制度改正による金融庁の思いとしては「少しでも多くの人に長期・積立・分散による投資をして欲しい」ということですね。
そのため、基本的に1階部分を少しでも使わないと2階部分が使えないようになっているということです。
YOHの予想は新しいつみたてNISAの創設
岸田総理の所得倍増プランではここからさらに変更したNISA制度が打ち出されることが考えられます。
・つみたてNISAよりも少ない積立額で長期運用する、新つみたてNISAの創設
私は所得倍増プランではこのようなことを盛り込んでくるのは、と考えています。岸田総理が金融政策で掲げているのは「一億総株主」というフレーズです。
・自己保有金融資産を貯蓄から投資にシフトさせたい
・多くの人に株式投資をして欲しい
このようなことを実現させるためには、幅広い年齢層に株式投資をしてもらう必要があります。そのためには、手軽にすることができる仕組みが必要だということです。
・年間積立上限額は10~20万円
・運用期間は25年以上
・税制優遇面は変更無し
内容についてはこのように予想しています。ずばり言ってしまえば、現在、つみたてNISAを年間40万円積み立てている投資家にとっては全く旨みのないものだということです。
つみたてNISAの満額投資は少数
2020年末時点でつみたてNISA口座は約304万口座開設されていますが、そのほとんどが年間上限額の40万円を積み立てることができていません。
金融庁が公表しているNISA口座の利用状況調査によると有効に利用できている方はそこまで多くないことがわかります。
・0円 98万口座(32%)
・0~20万円以下 121万口座(39%)
・20~40万円以下 84万口座(29%)
各積立額の口座数を確認するとこのようになっています。20~40万円以下が29%ですが、この中の全ての人が年間40万円を積み立てているということは考えにくく、実際には年間40万円を積み立てることができている投資家は10%ほどと考えてよいですね。
単年で見てもこれだけ少ないということは、複数年継続して満額積立ができる投資家は非常に少ないということです。
・毎年40万円を20年間積立
これをできる投資家は、つみたてNISA口座開設者の3%ほどではないかということです。
・口座開設はしたけどつみたてNISAに投資するお金がない
・年によっては満額40万円を積み立てることができない年がある
・思ったリターンが得られないから辞める
このような方が少なくないということですね。そして、岸田総理が策定を進める所得倍増プランではこのような方にとって使いやすい制度を打ち出す必要があるということです。
YOHの考え
私は岸田総理が策定を明らかにしている所得倍増プランで打ち出してくるのは「新しいつみたてNISAの創設」だと考えています。
・つみたてNISAよりも年間積立額上限が少ない
・つみたてNISAよりも投資期間が長い
このような内容を予想しています。今、株式投資を積極的にしている投資家にとってはそれほど旨みが無い制度の創設だということです。
岸田総理は現在のところ金融政策を積極的に打ち出そうとしていますが、根本にあるのは株主とそうでない人の格差是正です。ずばり言ってしまえば、現在の株式投資の税制面や制度面に不満があるということです。
格差を示す図としてよく用いられるのは、この1億円の壁が有名ですね。これをどうにかしたいということです。そこで目を付けたのが2,000兆円と言われる個人金融資産です。
しかし、2,000兆円と言われる個人金融資産を貯蓄から吐き出してもらうためには株式投資などをしてもらう必要があります。
そのためには、今までに株式投資に興味が無かった人を取り込む必要があるということです。そのためには、誰もがとっつきやすい制度を作る必要があるということです。
・一般NISAの上限額の増加
・つみたてNISAの上限額の増加
現在の口座積立状況から見ても、このような変更にはならないと考えるのが自然といってよいですね。現在のNISA制度のままでもすでにNISA制度を使っている投資家には全く影響が無いからです。
・投資をしていなかった人に投資をはじめてもらう
このような仕組みをNISA制度を使って打ち出してくる、というのが私の予想です。ご覧いただきありがとうございました。
自民党はNISA制度恒久化を議論していますが、所得倍増プランでは叶いそうにないですね。
個人金融資産が2,000兆円を超えましたが、全てが預金ではありません。株式も含んでの2,000兆円です。
つみたてNISAは運用期間を含めると40年間かかります。非常に息の長い制度ですね。