個人金融資産2,000兆円突破
3月17日に日本銀行が発表した2021年第4四半期の資金循環調査で、2021年末時点で家計の金融資産が2023兆円になったと発表されました。
・現金、預金
・債券
・投資信託
・株式
・年金、保険、定期保障
・その他
このような項目を合計した額が2,000兆円を上回ったということです。個人金融資産の増加は7四半期連続の上昇で2,000兆円を上回ったのははじめてとなります。
・預金、現金 1092兆円(3.3%増)
・債券 26兆円(2.7%減)
・投資信託 94兆円(20.4%増)
・株式 212兆円(15.5%増)
・保険、年金、定期保証 540兆円(保険379兆円)(1%増)
・その他 60兆円(5.3%増)
金融資産合計2,023兆円の内訳はこのようになっています。各世帯で金融資産を保有している割合が増えているということです。
・新型コロナウイルス蔓延による消費の低迷
・新型コロナウイルス蔓延給付金の貯蓄
・株高、円高による株式や投資信託の評価額の増加
このような要因によって、個人金融資産が増加しているということです。新型コロナウイルス蔓延によって消費が落ち込んでいるため、現預金が増加するのは自然と言ってよいですが、注目すべきは株式や投資信託の増加割合です。
・投資信託 94兆円(20.4%増)
・株式 212兆円(15.5%増)
他の金融資産と比較して増加割合は突出しています。
投資信託 94兆円(20.4%増)
個人金融資産の投資信託は昨年比から20.4%増加して94兆円となっています。金融資産の構成比は4.7%となっています。
2018年~2021年の投資信託の増減割合はこのようになっています。興味深いのは、以下の2点です。
・2018年第4四半期に取引額要因と調整額要因が大きく落ち込み、そこから取引額要因も落ち込んでいる
・2021年第1四半期から取引額要因、調整額要因が大きく上昇している
2018年第4四半期と言えば、新型コロナウイルス蔓延によって、世界的に経済状況が落ち込んだ時期ですね。そこでは調整額要因はマイナス15%ほどになっています。これは投資信託の評価額が著しく落ち込んだことによるものです。
そこから投資信託の取引額要因は7四半期連続マイナスで推移しています。投資信託を購入する世帯や金額が減少していたということです。
そして、2021年第1四半期からは取引要因額と調整要因額が大きく上昇しています。これは、新型コロナウイルス感染対策に一定の効果が見え始めたなどの、様々な要因によって、景気が上昇基調になったからですね。
投資信託の増減割合は日経平均と相関性がある動きをしているということです。
・株価が下がったら投資信託購入をする人が少なくなる
・株価が上がったら投資信託購入する人が増える
このようになるということです。
株式 212兆円(15.5%増)
個人金融資産の株式割合は昨年比から15.5%増加して212兆円となっています。金融資産の構成比は26.7%となっています。
2018年~2021年の株式の増減割合はこのようになっています。投資信託と同様に興味深いのは、以下の2点です。
・2018年から取引額要因はマイナス基調
・調整額要因はマイナス25%~プラス40%と変動幅が非常に大きい
資産運用、特に長期投資をしていると多くの方が株式を購入して保有していると思いがちですが、実際の株式の増減割合を見ると、そうでもないことがわかります。取引額要因にそれほど誤差がないからですね。
2018年の第4四半期のコロナショックの時から調整額要因はマイナス20%付近で推移していますが、取引額要因の落ち込みはそれほどではありません。そして、2021年第1四半期からは調整額要因が大きくプラスに転じていますが、取引額要因は伸びておらず、マイナスに転じていることがわかります。
・株式は景気が上下動しても、取引額要因はそれほど動かない
・株式の資産増減には調整額(株式の評価額の増減)が大きく影響している
個人金融資産の株式割合を見ると、このようなことがわかるということです。
YOHの考え
2021年末時点で家計の金融資産が2023兆円となり、過去最高の金額となっています。その中で、割合を伸ばしているのが投資信託と株式です。
・投資信託 94兆円(20.4%増)
・株式 212兆円(15.5%増)
しかし、割合が増える要因は異なっていることがわかります。
・投資信託 取引額要因が増えると、概ね評価額要因も増加している
・株式 取引額要因は増えなくても、評価額要因が増加している
グラフから読み解くとこのように考えることができるということです。長期投資には様々なスタイルがありますが、長期投資に欠かすことができないのが投資信託です。
・毎月決まった額を積立購入することができる
・少額から投資することができる
・つみたてNISAやiDeCoの積立対象
このようなことから、金額や割合は個人によりますが、投資信託を保有していない長期投資はいないと言ってもよいですね。しかし、景気が落ち込んだ時には、取引額要因は減少しています。
そこから考えると、以下のようになります。
・投資信託の評価額が下がった時には、投資信託を購入しない
・投資信託の評価額が上がった時は、投資信託を購入する
このグラフは全体の割合推移なので、個人世帯の状況に当てはめて考えることはやや強引かもしれませんが、このような動きをしている世帯が多いということです。そして、これでは効率よく資産を増やすことが難しいということです。
・投資信託の評価額が下がった時は同じ金額で多くの口数を購入できる
・投資信託の評価額が上がった時は、同じ金額で少ない口数しか購入できない
このようになるからですね。投資信託の長期積立投資で大切なことは、毎月同じ金額を購入し続けることです。そうすることによって、長期的に見て平均的な値で購入し続けることができるからですね。
値動きや時期を見て購入することは、長期投資の投資信託購入においては避けなければならないことだということです。
個人金融資産合計が2,000兆円を突破しましたが、長期投資家がすべきことは変わりはないということです。
・安全資産をある程度保有する
・リスク資産をある程度保有する
・淡々とリスク資産を積み上げて行く
・値動きに一喜一憂しない
どのような状況になっても、このようにしていくことが大切だと私は考えています。ご覧いただきありがとうございました。
日本証券業協会のデータはこちらで記事にしています。
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公務員や会社員にとっての資産形成の王道は投資信託だと考えています。