新しいNISAを最速で使うために必要なこと
新しいNISAの開始まで2カ月を切り、そろそろ決めなければならないのがその使い方ですね。
新しいNISAは年間の非課税投資限度額が360万円、合計で1,800万円ありますが、これを早く使い切ることができれば、それだけ運用期間を長く取ることができます。
最も早く使うことを考えると、4年と1ヶ月で使うことができます。
そして、毎月定額を積み立てる方法を使うのであれば、毎月30万円を積み立てして5年間(60カ月)で使い切ることができます。
しかし、毎月30万円を積立投資に充てることができる投資家というのは非常に少数で、多くの投資家には現実的な金額ではありません。
さらに、一括で360万円を使うことができる投資家というのはさらに限られてきます。
しかし、特定口座保有している投資信託などの金融商品があれば話は変わってきます。
特定口座にまとまった金額の投資信託があれば、それを売却して新しいNISAの枠を埋めるために使うことができるからですね。
しかし、特定口座の投資信託を売却すれば含み益に対して約20%が課税されることになります。
・特定口座の投資信託を売却してでも新しいNISAの枠を使うのがよいのか
・特定口座の投資信託はそのまま保有しておいた方がよいのか
このようなことを考えると新しいNISAの枠を埋めることは非常に悩ましいということです。
そこで、今回は新しいNISA枠を埋めるために特定口座の投資信託を売却した方がよいのかどうかについて考えてみたいと思います。
結論
まずはじめに結論を言えば、「運用期間によって人それぞれ答えは異なる」となります。
しかし、数字だけで考えるのであれば「売却して新しいNISAの枠を埋めた方がよい」ということになります。
その理由というのは以下のようになるからですね。
・新しいNISAを使って運用期間中に含み益を出せれば得
・新しいNISAを使って運用期間中に含み損を出せば損
このようになるからですね。これらのことについて順番に触れていきます。
新しいNISAを使ってトータルで含み益を出せれば得
新しいNISA枠で運用期間中に含み益を出せれば、保有中の投資信託を売却して枠を埋めるために使った方が得、ということになります。
・特定口座の投資信託・評価額240万円(元本200万円・運用益40万円)
・これを売却して新しいNISAの成長投資枠を埋めるために使う
・年間利回りは4%で推移
このようなケースで運用すると、以下のような資産推移になります。
※課税額は20%としています。
数字が並んでいますが、大切なのは6年目(運用期間5年目)のそれぞれの税引後評価額です。
・特定口座のまま・・・273万円
・特定口座から新NISA口座・・・282万円
特定口座の評価額240万円の投資信託の評価額は6年目にはこのようになり、売却して含み益(40万円)に約20%の8万円が課税されたとしても、新しいNISAに移した方が評価額が9万円多くなるということです。
30年間の資産推移をグラフにするとこのようになります。
青色が特定口座のまま、オレンジが売却して新しいNISA口座に移したケースです。
・特定口座のまま・・・638万円
・特定口座から新NISA口座・・・723万円
30年間運用すればこれだけの差になるということです。
この差は新しいNISAのパフォーマンスが大きくなるほど開いていくことになります。
そのため、数字だけを見れば保有中の投資信託を売却して枠を埋めるために使った方が得、ということになります。
新しいNISAを使って運用期間中に含み損を出せば損
一方で、 新しいNISA枠で運用期間中に含み損を出すことになれば、保有中の投資信託を売却して枠を埋めるために使った方が損、ということになります。
上と同様の条件で年間利回りをマイナス4%にしてシミュレーションした場合の状況は以下のようになります。
・特定口座のまま・・・196万円
・特定口座から新NISA口座・・・189万円
このようになり、特定口座の投資信託を売却して、NISA口座で買い直しをするのが損、ということになります。
そして、この条件で30年間運用した場合の資産推移は以下のようになります。
青色が特定口座のまま、オレンジが売却して新しいNISA口座に移したケースです。
・特定口座のまま・・・98万円
・特定口座から新NISA口座・・・71万円
このようになり、運用期間中に含み損が出るのであれば数字だけを見れば保有中の投資信託を売却して枠を埋めるために使った方が損、ということになります。
YOHの考え
今回は、新しいNISA枠を埋めるために特定口座の投資信託を売却した方がよいのかどうか、ということについて考えてみました。
・特定口座の投資信託・評価額240万円(元本200万円・運用益40万円)
・これを売却して新しいNISAの成長投資枠を埋めるために使う
・年間利回りは4%、マイナス4%で推移
このようなケースでシミュレーションした場合の30年後の評価額は以下のようになります。
・運用期間終了後に含み益出ているケース
・特定口座のまま・・・638万円
・特定口座から新NISA口座・・・723万円
・運用期間終了後に含み益が出ているケース
・特定口座のまま・・・98万円
・特定口座から新NISA口座・・・71万円
シミュレーションの結果はこのようになります。
その結果を考えると、新しいNISAの運用期間が終了した時に含み益が出るのであれば、特定口座の投資信託を売却して新しいNISA口座に移した方がよいということです。
これは期間中の利回りがどのように変化しようと同じです。
最終的に含み益を出すことができれば、新しいNISAでは特定口座の投資信託を売却して新しいNISA口座に移した方が得になるということです。
しかし、数字的に正しいことが誰にとっても正解かと言えばそうではないですね。
実際のところ、「新しいNISA枠を埋めるために特定口座の投資信託を売却した方がよいのかどうか」ということについては、様々な意見がありますが、私としては、「人によって異なる」という答えがしっくりときます。
まず、新しいNISAを使うのであれば、損をしたいと考えて使う方はいません。
・資産額を増やしたい
・少しでも効率よく資産を増加させたい
このように考えて新しいNISAを使うということです。そのように考えると、運用期間終了後に損をするケースは考える必要はなくなります。
そのため、特定口座の投資信託は売却して新しいNISA口座に移した方がよい、ということになります。
しかし、現実問題として、新しいNISAで含み益を出すことができるかどうかは未知数です。
・最速で非課税保有限度額を使い切ったが、運用期間終了後に含み損が出る
・優良な投資信託をコツコツと積立していたが、運用期間終了後に含み損が出る
このような可能性もあるということです。
そして、このようなケースというのは運用期間が短かければ短いほど発生する可能性が高くなります。
しかし、設けることのできる運用期間というのは人によって異なります。
・年齢によっては含み益が出せるまでの運用期間を取ることが難しい
・急な出費によって、新しいNISA口座のお金を使わないといけない
このようなケースも考えておく必要があるということです。
そして、このようなことで、運用期間終了時に含み損が出ているのであれば、特定口座の投資信託は売却して新しいNISA口座に移したことによって、損をした、ということになります。
このように考えると、特定口座の投資信託は売却して新しいNISA口座に移すことは、人によって答えが異なるということです。
最も考える必要があるのが運用期間をどれだけ取ることができるのか、ということです。
・確実に運用期間を30年以上取ることができる
・運用期間終了時に新しいNISAで含み益が出ていると確信している
・少しでも損をすることなく新しいNISAを運用したい
・最速、少なくとも5年ほどで新しいNISAを使い切りたい
私自身の考えになりますが、この4つ条件を満たしているのであれば、特定口座の投資信託を売却して新しいNISA口座の枠を埋めるために使ってもよいと考えています。
それ以外の方であれば、個々の考えに応じて使い分けるのがよいと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
新しいNISAについて金融庁としては、このように使って欲しいという意図があります。それについては、こちらで記事にしています。
運用期間が長く取れない場合の新しいNISAの使い方については、こちらで記事にしています。
新しいNISAは金融商品や銘柄選定に目がいきがちですが、それよりも大切なことがありますね。