インデックス型投資信託の信託報酬引き下げ
2024年からはじまる新しいNISA開始を意識して、インデックス型投資信託の信託報酬引き下げ合戦が続いています。
・eMAXIS slim全世界株式 0.05775%
・Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス 0.05775%
・はじめてのNISA・全世界株式インデックス 0.05775%
このように、全世界株式型の投資信託の信託報酬を確認しても、0.05775%と非常に低水準で横並びであることがわかります。
この横並びの背景にあるのが、各社の信託報酬の引き下げ合戦です。
・日興アセットマネジメントが「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス」の信託報酬を0.05775%にする
・野村アセットマネジメントが「はじめてのNISA・全世界株式インデックス」で追従
・「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス」の信託報酬を0.05775%
・三菱UFJ投信の「eMAXIS slim全世界株式」が同水準に引き下げ
3つの全世界株式型投資信託の信託報酬が0.05775%となった背景にはこのような経緯があります。
そして、この信託報酬引き下げは驚くべき早さで行われています。
日興アセットマネジメントが「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス」の信託報酬を0.05775%にしたのが2023年の4月、三菱UFJ投信の「eMAXIS slim全世界株式」が同水準に引き下げたのが2023年の8月と、この間はわずか4カ月です。
これだけの短期間に激しい競争が行われていたということです。
そして、この各社の動きは新しいNISAを強く意識しているということです。
新しいNISAのつみたて投資枠
2024年からはじまる新しいNISAに証券会社、運用会社をはじめとする金融機関は非常に力を入れています。
・年間投資枠 360万円
・生涯投資可能額 1,800万円
一人あたりこれだけの金額を投資する可能性があるからですね。そのため、金融機関としてはひとりでも多くの顧客を獲得したいということです。
新しいNISAがはじまれば多くの投資家はインデックス型投資信託を積み立てることになります。
その理由は成長投資枠には制限があるからですね。
・年間240万円
・生涯1,200万円(枠の再利用は可能)
選択できる金融商品に一部の制限しかない成長投資枠はこのようになっているため、アクティブア型の金融商品を好む投資家であっても、新しいNISAの非課税保有限度額を最大限活用するためには、インデックス型投資信託を保有する必要があります。
その時に、よりよい金融商品を選択するというのは当然と言ってよいですね。
・商品コンセプト
・運用成績
このようなものが似通っているのであれば、ランニングコストの安いものを選ぶということです。
その顧客獲得に各金融機関は非常に力を入れているということです。
割を食う投資家
このインデックス型投資信託のランニングコスト引き下げは新しいNISAを使う人全てにとってよいことになるのかと言えば、そうではないですね。
金融機関としては、インデックス型投資信託を引き下げた分をどこかで回収する必要があります。
その回収先として候補となるのが「アクティブ型投資信託」です。
・短期的に見れば、インデックス型投資信託の成績を大きく上回ることがある
・目新しいコンセプトによって短期間に資金を集めやすい
全てではありませんが、アクティブ型投資信託にはこのような特徴があるからです。
そして、金融機関としてはインデックス型投資信託のランニングコストを引き下げた分を、アクティブ型投資信託などによって回収する必要があるということです。
新しいNISAでは、あまりにも商品設計が顧客向きでないもの(毎月分配型・レバレッジ型等の金融商品等)は成長投資枠でも除外していますが、全てを排除できるのかと言えばそうではないですね。
2023年10月時点で投資信託協会が公表している資料によると、新しいNISAの成長投資枠で選択することができる投資信託は1,682本となっています。
しかし、その全てが誰にとっても投資適格な金融商品であるかと考えると、そうではないということです。
・償還日が設定されている
・1つの新興国株式のみを対象としている
このような投資信託も含まれているからですね。
しかし、金融機関としてはインデックス型投資信託のランニングコストを引き下げた分、このような金融商品を積極的に売り出していく必要があるということです。
そして、そのような金融機関が売りたい金融商品を購入する投資家が割を食うことになるということです。
YOHの考え
今回はインデックス型投資信託の信託報酬引き下げについて考えてみました。
実際のところ、全世界株式型のインデックス型投資信託の信託報酬は現時点で限界ギリギリの地点まできていると私は感じています。
金融機関としてはeMAXIS slim全世界株式などは、売ってもそれほど利益が出ることがない金融商品であるということです。
ずばり言ってしまえば、選んでもらってもそれほど旨みがないということですね。
しかし、他社に負けないようにするためには信託報酬の引き下げ合戦をせざるを得ないということです。
それによって、新しいNISAのつみたて投資枠で選んでもらう必要があるということです。
・つみたて投資枠では「低コストのインデックス型投資信託」
・成長投資枠では「コストが高いアクティブ型投資信託」
金融機関としてはこのように販売していきたいということです。
しかし、実際に万人にとっておすすめの新しいNISAの使い方というのは、成長投資枠を含めた非課税保有限度額の1,800万円全てを低コストのインデックス型投資信託で使い切ることです。
・長期的に含み益を出す可能性が極めて高い
・積立投資をするだけでよい
非課税保有限度額の1,800万円全てを低コストのインデックス型投資信託で使い切ることにはこのようなメリットがあるからですね。
しかし、このような使い方をするためには、自分自身でしっかりと考えて行動する必要があります。
・金融機関の担当者にお任せしている
・よくわからないから短期的に利益の出している金融商品を選ぶ
このようなことをしては、せっかく金融機関がインデックス型投資信託の信託報酬を下げている恩恵を受けることは難しいものになってしまうということです。
インデックス型投資信託の信託報酬が引き下げられていることは、投資家にとっては非常にありがたいことです。
そして、金融機関がそのようなことをしてくれているのであれば、その恩恵を最大限利用する必要があるということです。
それができるからこそ、資産形成は順調なものになるのだと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
分散、低コストを意識するならeMAXIS slim全世界株式だけでよい、という考え方は正しいのか、ということについてはこちらで記事にしています。
資産形成において新しいNISAを使うよりも大切なことはありますね。それについてはこちらで記事にしています。
インデックス投資ははじめることは容易いですが、続けることは簡単ではない、そのような投資手法です。