NISA制度の改正
岸田首相の掲げる所得倍増計画の大きな目玉として言われていることは、NISA制度の改正です。
・非課税期間を無期限化
・年間投資額の増加
NISA制度を現在使っている方や使うことを考えている方は、この2つの改正が成されることを強く望んでいます。
・非課税投資期間 5年(運用10年)
・年間投資額 120万円
現行のNISA制度はこのようになっており、政府が掲げている「貯蓄から投資へ」の具体策として、株式を用いての長期・分散・積立による資産形成を促進する制度とは言い難いからですね。
・非課税投資期間20年(運用40年)
・年間投資額40万円
それならば、このような特性を持つつみたてNISAの方が株式による資産形成を促す制度として使いやすいということです。
そのようなことを踏まえて、政府与党は2023年の税制改正でつみたてNISAの非課税期間を無期限とする検討を開始しました。
・つみたてNISAの検討されている変更点について
・つみたてNISAが無期限になることで投資家に与える影響
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
つみたてNISAの検討されている変更点について
政府与党がつみたてNISAの変更点として検討しようとしている点は以下のとおりと言われています。
・つみたて期間の無期限化
・年間投資額の引き上げ
・投資限度額の設定
この3点が現在のつみたてNISAからの大きな変更点ですね。順番に触れていきます。
つみたて期間の無期限化
政府与党がつみたてNISAの変更点として検討しようとしている点のひとつ目は「つみたて期間の無期限化」です。
これは政府与党が実際に検討すべき事項として挙げている改正事項です。現行の非課税投資期間20年間という期間を無期限にするということです。
現在のつみたてNISAをフル活用すると投資総額は800万円になります。
それを平均して年利4%で運用することができれば、1,200万円を作ることができるというのが、つみたてNISAの現実的なシミュレーションです。
つみたてNISAをされている方の多くはこのような感覚を持っているということです。そして、政府与党が不安視しているのは、つみたてNISAだけでは老後生活の資金を作ることが難しいということです。
老後生活に必要な資金として言われるのが2,000万円です。「老後2,000万円問題」というキャッチフレーズはあまりにも有名ですね。
しかし、つみたてNISAで2,000万円を作ることは現実的ではありません。つみたて期間を20年間なら月々3.3万円を積み立てて年利8%で運用しても2,000万円には届きません。
そのための対応策として打ち出されるのが非課税投資期間の無期限化です。
年間投資額の引き上げ
政府与党がつみたてNISAの変更点として検討しようとしている点の2つ目は「年間投資額の引き上げ」です。
これについては、まだ検討事項にも入っていない案ですが、議論として挙げられる可能性は十分にありますね。
現行の年間40万円というのは、投下資金に余裕のある投資家の間では不満が挙がっています。
・NISA制度が年間120万円であるなら半分の年間60万円にして欲しい
・月々積立てをして割り切れる金額にして欲しい
このような要望があるということです。しかし、多くすればするほどよいということでもないですね。
・年間40万円(月々3.3万円)を株式投資に使える世帯がどれほどあるか
・つみたてNISA制度の恩恵を受けにくい方がいる
このような不安材料もあるからですね。そのため、年間投資額の引き上げについては非常に慎重に行う必要があるということです。
日本証券業協会が出しているNISA口座開設数・利用状況調査結果を見てわかるとおり、つみたてNISAは非課税期間が長く取られているので、60歳代以降の方は制度利用している方が少ないということです。
そこの年間投資額を引き上げることについては、慎重にならざるを得ないということです。
投資限度額の設定
政府与党がつみたてNISAの変更点として検討しようとしている点の3つ目は「投資限度額の設定」です。
・非課税投資期間の無期限化
・年間積立額の引き上げ
この2つがなされることになれば、20歳からつみたてNISA制度を利用した方の生涯投資額は非常に大きなものとなります。
・50年間(20歳から70歳まで)
・年間投資額 60万円
このようになると仮定すれば、投資元本は3000万円になります。そして、年利4%で運用をできれば、資産額は9,500万円になります。
非課税期間の無期限化と年間投資額が引き上げられることによって、つみたてNISAを使うことによって、大きな資産を築くことができるということです。
これはフルに制度利用できる方にとってはよいことですが、そうでは無い方にとっては、不満が貯まる可能性があるということです。ずばり言ってしまえば、高所得者優遇になるということですね。
・つみたてNISA制度を利用するだけの経済的余裕が無い
・つみたてNISA口座を持っているが、毎年上限まで使い切れるわけではない
つみたてNISAについては、このような方の方が多数派であることから、格差拡大を防ぐために、一定の上限を設けることを考える必要があるということです。
YOHの考え
今回はつみたてNISAの検討されている変更点について考えてみました。
・つみたて期間の無期限化
・年間投資額の引き上げ
・投資限度額の設定
つみたてNISAで主に改正が検討されるのはこの3点です。そして、岸田総理は自身が掲げる所得倍増計画でNISA制度の恒久化を表明しているため、「つみたて期間の無期限化」は達成される可能性は非常に高いですね。
そして、それに伴って「投資限度額の設定」もされることになる可能性も高いということです。しかし、年間投資額の引き上げについては不透明ですね。
・つみたて期間の無期限化 → 2024年に達成
・年間投資額の引き上げ → 現行のまま(年間40万円)
・投資限度額の設定 → 生涯1,600万円ほどで設定
私はこのようになるのではと考えています。そして、つみたてNISAの無期限化というのは、投資家にとってそれほど意味がないことだと考えています。
・非課税投資 20年間
・非課税運用期間 40年間
このようにつみたてNISAは非課税運用期間を含めると40年間で完結する制度です。
この40年間という期間は多くの投資家にとって十分過ぎる長さだということです。これ以上、運用期間を増やすメリットはそれほどないということです。
そして、つみたてNISAが無期限化されれば、本来の使われ方をされない可能性が出てきます。
・短期売買の非課税枠として使う
・長期の資産形成対象として扱わない
このようになる可能性があるということです。これでは、つみたてNISA本来の目的である長期・分散・積立とはなり得ないということです。
そもそも、岸田首相が掲げているNISA制度の恒久化で投資家が求めていることは、つみたてNISAの無期限化ではありません。一般NISAの恒久化です。
・年間投資可能額120万円
・個別株の売買が可能
この一般NISAの恒久化を求めているということです。運用期間が40年間もあるつみたてNISAの無期限化はそれほど望んではいないということです。
現行でも運用期間の長いつみたてNISAが無期限化されても好意的に感じる投資家というのは非常に少ないというのが私の印象です。
そのため、投資家が望んでいるつみたてNISAは投資可能額の引き上げについては行ってもらいたいが、それについては最も実現の可能性が低そうだということです。
・現在利用している投資家
・これから利用する投資家
この双方にとって、つみたてNISAが無期限化されてもそれほど意味が無い、と私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
つみたてNISAは投資期間20年、運用期間40年という非常に気の長い制度です。その特性から、長期の積立投資による資産形成としては最適ですね。
つみたてNISAと並んで長期の資産形成に適しているのがiDeCoです。iDeCoは年金の3階部分を自分で作ることが目的なので、制約はありますが、老後の資産形成の制度としてはよいですね。
つみたてNISA、iDeCoともに株式商品を選ぶ場合、おすすめなのは米国株式に連動する金融商品です。私はS&P500をおすすめしています。