8月23日の日経新聞の記事
2023年8月23日の日本経済新聞の記事に非常に興味深いものがありました。
内容を要約すると、証券会社や銀行などを通じて投資信託を保有している顧客のうち、運用益をプラスにできている人の割合が76.9%であるというものです。
この調査は2018年からはじまり、2023年3月末の最新調査で6回目となります。
・大手証券会社 5社
・ネット証券会社 3社
・大手銀行 9行
・直販運用会社 4社
・計21機関
調査対象はこのようになっていることから、印象操作が可能な任意アンケートなどとは異なり、かなり実情に近い数字と捉えてよいですね。
過去6回の調査結果によると、投資信託の運用益がプラスの顧客割合は上の図のようになっています。
・2018年 34.4%
・2019年 33.5%
・2020年 63.5%
・2021年 12.6%
・2022年 15.8%
・2023年 23.1%
逆から考えると、投資信託を保有しているうち、これだけの顧客が運用益をプラスにできていないということです。
投資信託を購入している顧客というのは商品の性質上、基本的に長期投資を前提としているので、調査を重ねるごとに運用益がプラスになる顧客が多くなるのが当然と考えてよいですね。
しかし、調査結果ではそうではないということです。
もちろん、投資信託を定期積立しているからといって、毎年のように運用益がプラスになる顧客が増加するわけではありません。
・投資期間が浅い時に大きくマイナスになる年がある
このようなケースであれば、投資信託を定期積立している顧客でも運用益がマイナスになることは避けられないからですね。
しかし、そのマイナスの期間を抜けてしまえば、運用益がプラスになる顧客は右肩上がりに増加していくことが自然な流れです。
グラフとしてはこのような形になるということです。
しかし、実際の調査結果では、このようにならずに2021年をピークとして2022年、2023年は運用益がプラスの顧客が減少しています。
この理由としては主に2つが挙げられると私は考えています。
・投資信託自体に問題がある
・顧客自身に問題がある
この2点の理由から、運用益をプラスにできない顧客が一定数いるということです。順番に触れていきます。
投資信託自体に問題がある
投資信託を保有していて運用益がプラスにならない原因のひとつ目が「投資信託自体に問題がある」というケースです。
・手数料が高い(購入時、売却時に手数料がかかる)
・原本を切り崩して配当を出している
・対象としているベンチマークがよろしくない
投資信託自体に問題があるケースとは、このような投資信託を保有しているケースですね。
そして、実際にはこのような投資信託というのは非常に多いですね。
日本には約5,800本の投資信託があると言われていますが、この中で誰にとっても優良であると言える投資信託というのは数えるほどしかありません。
私の体感で言えば80~100本ほどですね。割合にして98%ほどは多くの人にとって投資不適格と言われるような投資信託であるということです。
その最も大きな理由が、売り手(証券会社や銀行)に大きなメリットがあるように作られているからですね。
・売り手が利益を出すことが第一
・顧客が利益を出すことは二の次
このような商品設計を成されている投資信託が非常に多いということです。
そして、当然ですが、顧客としてこのような投資信託を購入していれば安定的に利益を出すことは難しいということです。
顧客自身に問題がある
投資信託を保有していて運用益がプラスにならない原因の2つ目が「顧客自身に問題がある」というケースです。
・含み損が出たら積立投資をストップする
・株価を見て投資信託を購入する
・頻繁に利益確定をする
・銘柄を頻繁に乗り換える
顧客に問題があり、運用益がプラスにならないケースとはこのようなケースですね。
投資信託を用いた資産運用というのは、基本的に長期の積立投資が大前提です。
・個別株の短期売買
・高配当株投資
このような投資手法とは利益の出し方が全く異なっているということです。
そして、顧客自身に問題があるケースとは、投資信託を個別株の短期売買や高配当株投資と同様の運用をしているケースであるということです。
・毎月決まった金額を入金する
・株価に関係なく積立投資を継続する
投資信託で利益を出すためには基本的にこの2つを遵守した運用を心がける必要があります。
YOHの考え
今回は投資信託を保有していて運用益をプラスにできない理由について考えてみました。
・投資信託自体に問題がある
・顧客自身に問題がある
投資信託を長期的に保有しているにも関わらず運用益がプラスにならない理由としてはこの2つが挙げられます。
実際のケースではこの2つ両方を満たしていることは少なからずありますね。
・問題のある投資信託を不適切に運用している
このような資産運用方法をしているということです。このような資産運用方法で厄介なところは、単年で見れば運用益を出している年があるということです。
・世界的に景気がよかった
・対象としているベンチマークが好成績であった
このような場合、投資信託や顧客に問題があっても運用益を出すことは珍しくはありません。時には、優良な投資信託以上のパフォーマンスを出すこともあります。
当然ですが、このようなケースで運用益を出しているケースというのは投資信託の商品設計や顧客の運用方法が優れているからということではありません。
時代の流れによって運よく運用益を出せているということです。
投資信託を運用して利益を出すために大切なことは、「手を加えない」ということです。
・はじめに優良な投資信託を選ぶ
・相場に関係なく淡々と積立をする
・一時的な利益や損失に一喜一憂しない
このような運用を心がけることが最も大切であるということです。
そのようにしていれば、短い期間で利益を出すことはできない可能性はありますが、長期的に見れば運用益をプラスにできる可能性が極めて高いのが、投資信託を用いた資産運用です。
そのようにしていれば、誰しもが投資信託で資産形成ができると私は考えています。ご覧いただきありがとうございました。
投資信託の積立ができない理由についてはこちらで記事にしています。これを反面教師として考えればよいですね。
長期のインデックス投資は必勝法ではないですね。誤った方法を選択すればどんなによい投資手法でも利益を出すことはできません。
長期投資とは面白味がない投資手法です。しかし、儲からないというわけではないですね。