金融教育に関する意識調査2023
2023年7月6日に野村アセットマネジメント資産運用研究所から「金融教育に関する意識調査2023」が公表されました。
・投資の実態
・金融教育の受講意欲、理由
・金融教育の受講経験、内容等
・家庭での金融教育
内容としては、このような金融教育に関する事項を24項目に分けて調査を行った結果です。
調査はインターネット調査で行われており、20歳~69歳の男女で有効回答数は10,664サンプルと非常に大掛かりな調査です。
この調査の面白いところは、はじめに調査サンプルに対して、金融に関する問題7問に回答してもらい、金融リテラシーの高さを測定しています。
・6~7問正解 金融リテラシー高位置
・3~5問正解 金融リテラシー中位置
・それ以下 金融リテラシー低位置
このように正解数に応じて3つの階層に調査サンプルを分けています。
※金融に関する問題は「金融教育に関する意識調査2023」の最後のシート(調査概要)に記載されています。
この、金融リテラシーを3つに分けた調査内容は非常に興味深く、その中で特に私が気になった項目が「投資をはじめる条件」を集計した内容です。
・投資をはじめる条件の集計結果
・集計結果からわかる投資をはじめることが難しい理由
今回は「金融教育に関する意識調査2023」の内容からこの2点を中心に投資をはじめることについて考えてみたいと思います。
投資をはじめる条件の集計結果
「金融教育に関する意識調査2023」における投資をはじめる条件のアンケートは「投資をはじめていない人」を対象に行われています。
・投資をはじめていない人に伺います。あなたはどのような条件が整ったら投資をはじめたいと思いますか?
このような設問に対して、7,779サンプルが回答を行いました。(複数回答有)
そして、その集計結果は以下のようになっています。
ここから、集計結果として気になるところを抽出すると以下のようになります。
・絶対に損をしなければ・・・29%
・給料・所得が増えたら・・・24%
・まとまったお金ができたら・・・16%
・どんなことがあっても投資をしない・・・31%
このようになっています。そして、この集計結果を金融リテラシーの階層別に分けて確認すると面白いことがわかります。
階層別に分けると上の表のようになりますが、興味深いのは金融リテラシーの高低に関わらず、「絶対に損をしなければ」という割合が30%ほどであるということです。
そして、「どんなことがあっても投資をしない」という割合については、金融リテラシーが高位置であるほど低いことがわかります。
この集計結果から、投資をはじめていない人が投資をはじめることというのは、金融リテラシーの高低に関わらず、非常にハードルが高いということがわかります。
集計結果からわかる投資をはじめることが難しい理由
この集計結果は投資をしていない人が投資をはじめることが如何に難しいのか、ということを表しています。
当然ですが、投資というのはリスクのある行為です。ここで言うリスクというのは、「お金が減る可能性がある」ということです。
・長期投資
・インデックス投資
このような比較的安全で手堅いと言われている投資であっても、少なくないリスクとは存在します。
確実に言えることですが、リスクが全くない投資というのは存在しません。
そして、投資によるリスクを受け入れるからこそ、投資によるリターンを受け取れるということです。
そのため、「絶対に損をしなければ投資をする」と回答している方はいつまで経っても投資をはじめることができないということです。
そして、「どんなことがあっても投資をしない」と回答している方については、投資をはじめるきっかけを作ることすら容易ではないですね。
特に、金融リテラシー低位置では40%がどんなことがあっても投資をしない、と回答しています。
投資をはじめるきっかけというのは人によって異なるでしょうが、「どんなことがあっても投資をしない」と決めている方が投資をはじめるには、考え方を根底から覆す必要があるということです。
YOHの考え
今回は野村アセットマネジメント資産運用研究所から公表されている「金融教育に関する意識調査2023」の集計結果から、投資をはじめることが難しい理由について考えてみました。
投資をはじめる条件の集計結果を一部抜粋するとこのようになり、ここから考えると、投資をしていない人が投資をはじめることは非常にハードルが高いということがわかります。
もちろん、投資が全ての人にとって必要で誰しもがはじめるべきかと言えば、そうではありません。
投資をすることなく、順調に資産形成をしてお金に不自由のない生活を送れている方は存在します。
しかし、そのような世帯というのは非常に限られた属性であるということです。
・十分な貯金をすることができる
・家計管理をしっかりと行うことができている
・教育費や養育費の準備が整っている
・老後の生活についてお金の目途をつけることができている
このようなことを給料のみでやりくりできている世帯であれば、投資というのは必ずしも必要ないということです。
しかし、大多数の世帯というのはこのようにはいかないということです。
私の考えになりますが、このように給料だけで人生における支出を賄い、なおかつ余裕のある生活を送るには、年収で1,500万円は必要です。
厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査によると、労働者の平均所得金額は545万円、中央値は423万円となっています。
そして、所得が1,500万円以上というのは上位3.6%です。ここに属していなければ、給料だけで人生における支出を賄い、余裕のある生活を送ることは難しいということです。
このように考えると、大多数の人は人生における支出を賄い、余裕のある生活を送るためには、給料以外にお金を生み出す必要があるということです。
その選択肢のひとつが投資だということです。
しかし、その投資をはじめるということが非常に難しいものであるということです。
・絶対に損をしなければ
・給料・所得が増えたら
・まとまったお金ができたら
そして、このような考えをもっている間というのは投資をすることはできません。
投資というのは損をするリスクを取り、今ある給料をやりくりして行うものだからですね。
そこには少なくない我慢がともなうということです。
・積立投資をしていても資産が増加しない
・思い描いていたようなリターンを得ることができない
このようなことは投資をしていく以上、避けることができません。
しかし、このようなリスクを受け入れて我慢をするからこそ、少なくないリターンを得ることができるのが投資であると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
野村総合研究所の純金融資産保有額の調査結果についてはこちらで記事にしています。
投資をすることは大切ですが、その前に取り組む必要があるのが貯金ですね。100万円というのがひとつの目安となります。
平均的な収入で平均的なポートフォリオを組むとお金に余裕のないことになるのは避けることができません。