楽天グループの株主優待の変更
2023年12月26日に楽天グループから株主優待制度の変更に関する発表がありました。
2022年までは持株数と保有期間によって楽天キャッシュ(電子マネー)を株主優待として配布していたのを、2023年12月末からは楽天モバイルのデータ通信を無料提供するものに変更するというものです。
提供される楽天モバイルの通信については、上の表のとおりとなっており、持株数と保有期間によって、月30GBのデータ通信が3ヶ月から6ヶ月まで配布されることになります。
そして、いくつかの注意点があります。
・電話による通話はできない(楽天リンクも不可)
・配布される通信はeSIM(物理SIMは非対応)
このような注意点があるということです。
今回発表された楽天グループの株主優待の変更は株主や投資家からは概ね良好に捉えられています。
・改悪ではない
・100株で3ヶ月のデータ通信が30GBはお得
・楽天グループの株式を保有してもよい
概ねこのように好印象に捉えている方が多いというのが私の印象です。
その大きな理由はこの株主優待が配布される条件が比較的容易だからです。
楽天グループの2023年12月末の株価は628円です。株主優待が配布される最低条件を満たすには100株保有する必要がありますが、62,800円で満たすことができます。
これは、株式投資で考えると比較的容易な金額です。
そして、30GBのデータ通信が3ヶ月分というのは、6,000円~9,000円ほどの価値があると考えてよいですね。(これは人によって評価がわかれるところですが)
そのため、優待利回りで考えると9.5%~14%ほどであるということです。これは非常に高利回りです。
そして、データ通信というのは非常に実用性が高く、使い勝手がよいということも好意的に捉えられている要因のひとつです。
しかし、私がこの株主優待があるから楽天グループの株式を購入するかと考えると、することはない、ということになります。
それは、楽天グループの株主優待の商品自体に魅力がないわけではなく、株主優待制度の不安定さによるところが非常に大きいですね。
・株主優待制度について
・株主優待制度のデメリット
今回は、楽天グループの株主優待制度の変更から株主優待制度についてこの2点を中心に触れてみたいと思います。
株主優待制度
株主優待制度は日本独自の制度といってよいほど、他国の株式会社では行われていません。
・一定数量以上の自社の株式を保有している
・権利確定日に株式を保有している
このような条件を満たしている株主は、その株式会社独自の優待品を受け取ることができる制度ですね。投資として大変人気がありますね。
旧東証上場企業の内、約4割の1300社近くが株主優待制度を取りいれていることから、多くの企業が大変力を入れていることが分かります。
・自社の製品
・自社の商品券
・QUOカード
・カタログギフト
株主優待品としては、このようなものが多いですね。
配当金と同時にもらえることから、お得感があり、株主優待品目的で株式を選定している方も少なからずおられますね。
しかし、インデックス投資をしている投資家の中には、株主優待を快く思われていない方も少なからずおられます。
株主優待制度のデメリット
配当金と同様に商品などがもらえて、利益還元される株主優待制度ですが、投資家にとっては不都合な点があります。
・株主平等原則に反している
・株主の意思が入り込む余地がない
主に、投資家が株主優待制度に対して不満に感じているのはこの2点です。
株主平等原則に反している
株主が株式会社から利益享受できるのは、株主平等原則があるからです。
会社法109条で「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に扱わなければならない。」と規定されています。
つまり、同じだけの株式数を保有していれば、同じ権利が与えられなければならないということです。
配当金や売買益などは正に株主平等原則に則ったものですね。保有株式数に応じた配当金や売買益が受け取れるからです。
しかし、株主優待制度は株主平等原則から見ると、限りなくグレーですね。
今回取り上げている楽天グループの株主優待制度にしても、平等とは言い難い制度設計がされています。
・100株保有の株主
・900株保有の株主
このケースで受け取ることができる株主優待の商品が同じであることは、平等ではないですね。
これが配当金であれば、保有株式数に応じて金額が増えるにも関わらず、株主優待では保有株式数が異なっていても同じであるということです。
さらに、保有期間に応じて配布されるデータ通信の期間が増加していきます。
株主平等原則は、株式の内容と数によって平等に扱われる必要があるのですが、保有期間については言及されていません。
このようなことからも、株主優待制度は株主平等原則から考えると、平等とは言い難いのですね。
株主の意思が入り込む余地がない
株主優待制度は、株主の利益享受という点では配当金と同じなのですが、性質は大きく異なっています。
・配当金・・・株主総会の決議事項
・株主優待・・・取締役会の決議事項
配当金と株主優待にはこのような違いがあります。配当金は株主に主導権がありますが、株主優待は株主がどうすることもできないのですね。
株主優待制度の廃止や変更は他の企業でも毎年のように発生しています。
・株主優待をもらえる保有株式数が100株から300株になった
・株主優待の商品が変わった
・株主優待制度をやめた
配当金でも減配はありますが、それは企業業績がベースです。
・業績がよかったから増配する
・業績が悪かったので減配する
・業績が悪かったが配当性向は維持する
このような理由があるからこそ、株主は減配を受け入れることができるのですが、株主優待には一貫性がありません。
株主優待は企業の業績が良くとも悪くとも変わる可能性があるということです。
YOHの考え
株主優待制度は非常に魅力的で、優待投資というような株主優待目的で投資をされている方もおられます。
しかし、株主優待制度は株主平等原則から見ると、限りなくグレーだということです。
・外国の投資家
・機関投資家
・もらえる基準を満たしていない株主
このような投資家にとっては株主優待制度は全く旨みのない制度であるということです。
株主優待制度に力を入れるなら増配して欲しいと考えているということです。
そして、今回の楽天グループの株主優待は現在のところ、配当利回りが10%以上と捉えると、旨みを感じる方もおられますが、今後はどのようになるのかはわかりません。
・データ通信量が少なくなる
・利用期間が短くなる
このようなことは十分に考えられるということです。
楽天グループは短期間に楽天ポイントの付与の変更を中心に数多くの制度変更を行っています。
そして、その多くの制度変更は利用者にとってメリットが少なくなる変更です。
このようなことを考えると、楽天グループのサービスの見直し方は起こる可能性が高く、この株主優待は長くはもたないだろう、というのが私の印象です。
・短期間で終了する
・優待利回りが著しく下がる
今回の株主優待であるデータ通信に魅力を感じているのであれば、このようなことを考えた上で楽天グループの株式を保有する必要があるということです。
そして、これは楽天グループに限ったことではありません。
今後はこのように株主優待制度を変更する企業が増加してくることは想定しておく必要があるということです。
株主優待制度は魅力的ですが、取締役会で一方的に決められる性質上、非常に不安定なものということです。
・配当金
・成長性
株式を購入する際に重視すべきはこの2点です。株主優待制度はあくまでもおまけのように考えて資産投下することが大切だと、私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
株主優待投資は難しい投資手法です。成功させるためにはある程度の前提条件を満たしておく必要があります。
株主優待投資と同様に人気があるのが高配当株投資です。こちらも難易度が高いですね。
株式投資はシンプルな方が成功しやすいと考えています。