株主優待投資
投資手法は様々なものがありますが、非常に人気のある投資手法のひとつが株主優待投資です。
株主優待とは、企業が株主に対して配当金とは別に行う還元のひとつで、自社製品や自社サービスの優待券、食料品やクオカードを配布しています。
その企業の株式を保有していれば誰でも受け取れるというものではありません。
・100株以上保有
・1年以上保有
このように、株主優待を受け取るためには企業ごとに設けている一定の条件を満たしておく必要があります。
株主優待が人気の理由のひとつが「現物支給」であることです。
・商品券
・カタログギフト
・食料品
このような普段であれば購入しないようなものを株式を保有しているだけで郵送で送られてくるため、得をしているという実感を直に感じることができるということです。
株主優待制度は日本独自の制度といってよく、現在は1,500社ほどが株主優待制度を取り入れています。その株主優待がある銘柄に積極的に買い集めるのが株主優待投資です。
・株主優待銘柄を100以上保有している
・株主優待を受け取るために権利確定日の直前に購入する
株主優待投資をされている方は、個人差はあるでしょうがこのような投資手法を取っているということです。
株主優待は企業の優待券や食料品などを現物でもらえる非常に魅力的な投資手法ですが、私自身は非常に難しい投資手法だと考えています。
・株主優待投資が難しい理由
・株主優待を成功させる4つの前提条件
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
株主優待投資が難しい理由
私が株主優待投資を難しい理由は株主優待投資はいくつかの前提条件を満たしておく必要があるからです。
株主優待投資とは、「企業の株式を保有して株主優待をもらい続ける」という簡単な投資手法ではありません。
・企業が長期的に見て成長していく必要がある
・株主優待品が自分にとって魅力的である
・株主優待が今後も継続される企業を見極める
この3つの条件を満たした企業に資産投下することが株主優待投資の前提条件です。そして、この3つを満たす企業を選ぶということはハードルが高いということです。
この3つの条件に関して順番に触れていきます。
企業が長期的に見て成長していく必要がある
株主優待投資が難しい理由のひとつが「企業が長期的に見て成長していく必要がある」ということです。
株式投資をする一番の目的は資産を増加させることです。資産を築いて自分の暮らしを豊かにすることを目的としているということです。
そして、株主優待というのは、自分の暮らしを豊かにしてくれるものです。
・年間3000円分の商品券
・年間5000年相当の食料品
このような株主優待品は生活だけではなく、心も豊かにしてくれます。しかし、投資している企業の業績が長期に渡って不振では意味がありません。
・年間3000円の商品券をもらえるが、無配当になる
・年間5000円相当の食料品をもらえるが、株価は100円以上下げている
このようなことでは株主優待の意味がないということです。そのため、株主優待投資を行うためには、長期的に見て成長していく企業を選ぶ必要があるということです。
株主優待品が自分にとって魅力的である
株主優待投資が難しい理由の2つが「株主優待品が自分にとって魅力的である」ということです。
株主優待投資でよく用いられているのが、優待利回りという指標です。
このような株主優待品の利回りをランキングしているものを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
配当金の利回りが4%で高配当と言われることを考えると、10%を超えるような配当利回りは非常に魅力的に感じます。そして、株主優待投資はこの優待利回りと配当利回りを合わせて考えるということです。
・株価500円(1単元5万円)
・配当金 1,000円(年利2%)
・株主優待 2500円相当の自社製品
このような企業の株式を保有していた場合、優待利回りは株主優待品の価値を勘案して5%、配当金と合わせて7%と表現されます。
利回りが7%と言えば非常に高配当で非常に魅力的な資産投下先に感じます。
・株価が5万円で2500円相当の自社製品がもらえるなら非常にお得
・配当金と自社製品合わせて7%の利回りなら得だ
このように考えられるということです。しかし、その株主優待品が自分にとって本当に有益なものであるかを考える必要があります。
・自分が使わないアパレルメーカーの割引券
・女性用のアクセサリー
私であれば、このような株主優待品を受け取っても意味がないということです。それが5,000円相当であっても、自分にとってそれだけの価値を引き出すことができないからですね。
そのため、株主優待品を利回りに当て込んで考える際には、自分自身にとって、〇〇円相当の価値を感じることができるかを考える必要があります。
そして、自分にとって価値がある株主優待品を提供している企業を選ぶ必要があるということです。
株主優待が今後も継続される企業を見極める
株主優待投資が難しい理由の3つが「株主優待が今後も継続される企業を見極める」ということです。
株主優待制度は、株主の利益享受という点では配当金と同じなのですが、性質は大きく異なっています。
・配当金 株主総会の決議事項
・株主優待 取締役会の決議事項
配当金と株主優待にはこのような違いがあります。配当金は株主に主導権がありますが、株主優待は株主がどうすることもできないのですね。
今年で言えば、株主優待制度として非常に人気のあったオリックスが株主優待制度の廃止を発表しました。
・今後は配当金という形で株主還元を行っていく
・代わりに2024年3月をもってカタログギフトを廃止する
株主優待に関してはこのように取締役会の決議事項で決まったため、オリックスとしてはこのように一方的に決めてよいということです。そして、このようなことが他の企業でも毎年のように発生しています。
・株主優待をもらえる保有株式数が100株から300株になった
・株主優待の商品が変わった
・株主優待制度をやめた
配当金でも減配はありますが、それは企業業績がベースです。
・業績がよかったから増配する
・業績が悪かったので減配する
・業績が悪かったが配当性向は維持する
このような理由があるからこそ、株主は減配を受け入れることができるのですが、株主優待には一貫性がありません。株主優待は企業の業績が良くとも悪くとも変わる可能性があるということです。
そのため、株主優待投資をするためには株主優待が今後も継続される企業を見極める必要があるということです。
YOHの考え
今回は、株主優待投資が難しい理由について解説しました。
・企業が長期的に見て成長していく必要がある
・株主優待品が自分にとって魅力的である
・株主優待が今後も継続される企業を見極める
私が株主優待投資を難しいと感じる理由は、この3つの条件を全て満たした企業を選んで資産投下する必要があると感じるからですね。
そして、この3つの条件に加えて、株価が割安である時に購入する必要もあります。株価が割安である時に仕込んでおかなければ、投資のパフォーマンスが低下することになるからですね。
そのため、株主優待投資を成功させるためには、紹介した3つの条件と株価が割安な時に仕込むという合計4つの前提条件を全て満たす必要があるということです。
これが株主優待投資を成功させるための4つの前提条件です。
実際には、最後に紹介した株価が割安な時に仕込んでおく、というのが一番ハードルが高いのかもしれません。
そのため、難しい4つの条件を満たして行う必要がある株主優待投資というのは非常に難しいということです。
・優待利回り20%越え
・優待品が魅力的
このような表面的な理由だけで企業に資産投下して、株主優待品を受け取るような投資は本質的な株主優待投資ではないということです。資産運用ではなく、株主優待品をもらっているだけだということです。
私は株主優待投資というのは、資金力に余裕のある投資家がサテライト的に行うものだと考えています。
・利回りはそれほど気にせず、受け取ると嬉しい
・自分のお金では買わないものを受け取ることができて嬉しい
このような付き合い方をして、数字をそれほど気にせずに感情の部分を楽しむ投資手法だということです。
私もいくつか株主優待銘柄は保有していますが、メインのインデックス投資と比較すると運用成績自体はよいものではないですね。
しかし、優待券やカタログギフトなどを受け取ると非常に嬉しいですね。そのため、サテライト的には継続していこうとは考えています。
しかし、投資のコアになることはないということです。銘柄選定に時間がかかり、株価を定期的に追う必要がある投資手法は万人におすすめできる投資手法ではないからです。
株主優待投資自体は魅力的な投資手法であることに間違いはありませんが、成功させるのは非常に難しい人を選ぶ投資手法である、と私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
今年は株主優待で有名はオリックスの優待廃止が発表されました。株主優待は取締役会の決議だけで決まるため、株主がどうしようもないことが配当金と異なるところです。
私は株主優待投資に関しては否定的ですね。その理由についてはこちらで記事にしています。
東証市場が再編されて、株主優待はさらに少なくなっていくことが予想されます。時代のトレンドに逆らった投資手法であることを押さえておく必要はありますね。