新しい資本主義に向けた改革
内閣総理大臣の岸田文雄首相は「新しい資本主義に向けた改革」の中で経済政策のひとつとして、「貯蓄から投資」を掲げています。
その大きなアピールは外遊先のイギリスで行った「インベスト・イン・キシダ」のスピーチですね。
インベスト・イン・キシダの内容としては、自らの経済政策である「新しい資本主義」を訴えて、日本市場に資金流入を促すためのメッセージです。
・人への投資
・科学技術、イノベーションへの投資
・スタートアップ投資
・グリーン、デジタルへの投資
新しい資本主義はこの4つを柱として掲げています。その中で欠かせないのが、貯金から投資へのシフトです。
・日本の個人金融資産は2,000兆円
・このうち半分は貯蓄や現金で保有されている
・個人資産を流動させるために資産運用するための仕組みを作る
岸田総理はスピーチの中で新しい資本主義として所得倍増計画を掲げて、このような発言をしました。そして、日本に安心して投資をして欲しいとの思いを込めて「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」というフレーズを使いました。
そして、現在検討されているのが、以下の2つです。
・NISA制度の抜本的拡充
・iDeCoの制度改革
この2つの税制優遇制度を使いやすいくして、個人金融資産を貯蓄から投資へ促すことを経済政策の柱のひとつと考えているということです。そして、NISAについてはかなり具体的に触れられています。
・NISAの恒久化
・つみたてNISAの非課税枠拡大、非課税保有期間の拡大
この2つのついては行うことを前提に話が進んでいるということです。特に画期的なのは「つみたてNISAの変更」ですね。
・iDeCoは年々制度変更されている
・NISA制度は恒久化されたイギリスのISA制度をモデルとしている
このため、特に目新しい感じはないのですが、つみたてNISAはそうではないということです。
・つみたてNISAの非課税保有期間拡大
・つみたてNISAの年間非課税枠拡大
今回は、この2つが投資家にどのような影響を及ぼすかについて考えてみたいと思います。
どの程度の拡大になるのか(非課税保有期間)
現在のつみたてNISAは非課税保有期間が20年、年間非課税枠は40万円に設定されています。これがどの程度の拡充されるかはおおよそ見当が付きますね。
・非課税保有期間 20年 → 30年
・年間非課税枠 40万円 → 60万円
拡充されるとすれば、最大限でこのぐらいになるということです。現在のつみたてNISAは非課税保有期間が20年ですが、最大限利用するなら、40年間を見ておく必要があります。
つみたてNISAの積立金のNISA口座移管は非課税期間が終了したものから順番に移管することになります。
・2022年に積み立てた40万円 → 2041年に課税口座へ移管
・2042年に積み立てた40万円 → 2061年に課税口座へ移管
このように、順番に課税口座へ移管できるということです。そのため、つみたてNISAの非課税期間が完全終了するのは、積み立てを開始してから40年後と考えておいた方がよいということです。
つみたてNISAの投資可能期間(つみたて期間)は20年ですが、非課税期間(運用期間)は40年ということです。
そのため、非課税保有期間を40年以上にすると、平均寿命から考えてても運用期間を終えることなく亡くなる可能性が高くなります。
そのため、20代からつみたてNISAをはじめると考えても、非課税保有期間は長くても30年が限界となるということです。
・30年間積立をして、そのあと30年かけて取り崩していく
このような制度を想定して運用されていくということです。
どの程度の拡大になるのか(非課税枠)
次に、非課税枠の拡大について考えてみます。非課税枠は現在年間40万円ですが、これは最大で60万円になると考えられます。
・月割で中途半端になる
・一般NISAと比較すると枠が少ない
現在のつみたてNISA制度にはこのような不満点が挙がっています。多くの人は年間40万円の非課税枠を使うために、月割で投資をしています。そのため、40万円ではキリの悪い金額となっているのですね。
そして、つみたてNISAは一般NISAと比較すると年間投資額が80万円少なく設定されています。
・一般NISA 5年間で600万円
・つみたてNISA 20年間で800万円
このように考えると、投資額を増やした方が投資にとって使いやすくなるということです。しかし、増やせば増やすほどよいということはありません。
YOHの考え
つみたてNISAの制度拡充は長期投資をしている投資家にとっては朗報です。
・非課税保有期間が伸びる
・非課税投資金額が拡充される
このようなことが長期投資のリターンに与える影響は非常に大きいものになるからですね。しかし、有効な景気刺激対策になるかと考えると、必ずしもそうだとは言い切れません。
2020年末時点でつみたてNISA口座は約304万口座開設されていますが、そのほとんどが年間上限額の40万円を積み立てることができていないのが現状です。
金融庁が公表しているNISA口座の利用状況調査によると有効に利用できている方はそこまで多くないことがわかります。
・0円 98万口座(32%)
・0~20万円以下 121万口座(39%)
・20~40万円以下 84万口座(29%)
各積立額の口座数を確認するとこのようになっています。20~40万円以下が29%ですが、この中の全ての人が年間40万円を積み立てているということは考えにくく、実際には年間40万円を積み立てることができている投資家は10%ほどと考えてよいですね。
単年で見てもこれだけ少ないということは、複数年継続して満額積立ができる投資家は非常に少ないということです。
・毎年40万円を20年間積立
これをできる投資家は、つみたてNISA口座開設者の3%ほどではないかということです。
・口座開設はしたけどつみたてNISAに投資するお金がない
・年によっては満額40万円を積み立てることができない年がある
・思ったリターンが得られないから辞める
このような方が少なくないということですね。そして、岸田総理が策定を進める貯蓄から投資への政策ではこのような方にとって使いやすい制度を打ち出す必要があるということです。
実際には、NISA制度がどのように変更されるかはわかりませんが、現在検討されていることをベースに進めていく以上、非課税保有期間の延長と非課税投資枠の拡充はされることになります。
その際に、しっかりと恩恵を受けるためにも、投資可能金額を確保しておくことが投資家に求められていると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
つみたてNISAとiDeCoの前提条件はこちらで記事にしています。
NISAの恒久化についてはこちらで記事にしています。
貯蓄から投資への「インベスト・イン・キシダ」についてはこちらで記事にしています。