4月5日のヤフーニュースの記事
4月5日のヤフーニュースにこのような記事が掲載されていました。
大阪市の救急隊員が救急患者搬送後にアイスクリームを購入していたことを通行人から注意されると、赤色灯を付けて走り去ったという内容です。救急隊は信用失墜行為を行ったとして訓告処分されるようです。
コメント欄を見ると様々なコメントが寄せられていますが、多くのコメントが救急隊に対して同情的です。
・アイスクリームぐらい問題はない
・患者搬送後であれば問題ない
・救急隊にも休憩は必要
このようなコメントが並んでいるというのが私の印象です。今回は、救急隊目線からこの記事の内容ついて考えてみたいと思います。
救急車で買い物をしてもよいのか
救急車で買い物をしてもよいのか、ということは法律などで明記されているわけではありません。その対応は各自治体によって様々です。
・絶対に認めていない
・正式な文書は出していないが容認している
・正式に文書を出して認めている
主にこの3つの内のどれかに当たります。ひと昔前までは「絶対に認めていない」というのが主流でしたが、ここ数年でその様子は変化してきています。「正式な文書は出していないが容認している」と「正式に文書を出して認めている」という自治体が増加しています。
愛知県名古屋市では公式Twitterで「救急車がコンビニに立ち寄ることがあるので、ご理解をお願いします」と広報を行っています。
その主な理由は救急件数の増加と救急活動時間の増加です。
令和2年の救急件数は約593万件、件数は20年前と比較して約1.5倍になっています。日本の人口比率で考えると、約24人に1人が救急車を利用しており、救急出動は5.3秒に1回の割合で発生していることになります。
増加している主な理由は高齢化によるとこところが非常に大きいですね。救急要請で最も多いのは急病(お腹が痛い、息苦しいなど)で、年齢を重ねるにつれて身体の不調が出るのは当たり前といってよいからです。
そして、救急件数と同様に数字を大きくしているのが救急活動時間です。
オレンジのグラフを見ると、令和2年の病院収容所要時間は40.6分となっています。119番通報から傷病者を病院へ搬送するまでに全国平均で40分36秒かかっているということで、これも20年前と比較して大きく増加しています。
・救急件数増加による病院の受入限界
・傷病の多様化
・高層マンションなどの増加による現場滞在時間の増加
このような要因によって、救急事案1回にかける時間も増加しているということです。
今回のケースでは何が問題なのか
今回のヤフーニュースの内容では、救急隊が帰署途上にアイスクリームを購入しているところを市民から注意され、赤色灯とサイレンを鳴らして走り去ったということです。
・帰署途上にアイスクリームを購入していた
・赤色灯とサイレンを鳴らして走り去った
問題とされているのがこの2点ですね。大阪市が救急車での買い物についてどのようなスタンスを取っているかはわかりませんが、問題として非常に大きいのは「赤色灯とサイレンを鳴らして走り去った」ということです。
はっきりと言ってしまえば、組織として公に認めていなくても、救急隊が傷病者搬送後に自動販売機や病院の売店で飲料水や食べ物を購入するということは、非常によくあるということです。そうしなければ身体がもたないからですね。
しかし、赤色灯とサイレンを鳴らして走り去るということはしてはいけない行為ですね。赤色灯とサイレンを使って走行することは緊急要件での走行以外では認められていないからです。
今回のケースでは、アイスクリームを購入していた救急隊にやましい気持ちがあったからこそ、そのようなことをした可能性があるということです。
YOHの考え
今回のケースで大切なことは、「アイスクリームを購入していた理由を市民に対してしっかりと説明することができるか」ということです。
言い換えれば、市民に注意された時や、上司に問いただされた時に、救急隊長がアイスクリームを購入していた合理的な理由をしっかりと説明する必要があるということです。
・何となく甘いものが食べたかった
・お腹がすいていた
このような曖昧な理由ではなく、隊員や周囲の状況から説明ができるのであれば、今回の行為は何の問題も無いと私は考えています。(すぐに救急出動ができる体制が取れていることが大前提ですが)
しかし、今回の大阪市の救急隊はアイスクリームを購入したことにやましい気持ちがあったのではないかというのが私の印象です。もし、そうであるならば救急車で買い物をしてはいけないということです。
市民の方にとっては救急車が停まっている、というのは少なからず不安感を与えてしまうものです。そのような不安感を抱かせることは必要最低限にしなければならないというのが私の考えです。しかし、度を越してまで休憩をせずに、水分や食事を補給しないことは、救急活動の質を低下させてしまいます。
・10時間以上休憩する暇なく救急出動している
・朝から何時間も消防署に帰れていない
このようなことは救急隊にとってはよくあることで、大阪市のような人口の多い消防組織であればなおさらです。少しの休憩を取っているかどうかで、救急活動のパフォーマンスは大きく異なってきます。そのため、出動に支障のない範囲で休憩をとることは必要不可欠ということです。
しかし、それを消防組織から大々的に言うことは違うということです。
・救急隊は忙しいから買い物ぐらいさせて欲しい
・休みなく働いているからアイスクリームを購入するぐらいいいだろう
救急隊がこのように考えてしまってはいけないということです。あくまでも、例外的に認められており、救急活動のパフォーマンスを最大限にするために休憩させてもらっている。このようなスタンスでいることが大切だと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
救急隊に関することはこちらで記事にしています。