YOH消防士の資産運用・株式投資

消防士の資産運用、株式投資、仕事について紹介しています。

【ヤフーニュース】救急車の経路誤りによる病院到着の遅れについて

2月24日のヤフーニュース記事

 2月24日のヤフーニュースにこのような記事が掲載されていました。

news.yahoo.co.jp

 CPA(心肺停止)傷病者を病院搬送中に有料道路の降り口を間違えて病院到着が本来かかる時間よりも10分以上遅れたという内容です。傷病者は病院で亡くなっており、死亡と遅延の因果関係は不明とのことです。

 ・救急車を要請した家を間違えて到着が遅れた

 ・A病院に搬送しなければならないが、B病院に搬送した

 救急隊の経路誤りは度々ニュースになりますね。今回は、このような経路誤りによる遅延について、救急隊目線から考えてみたいと思います。

救急車の到着時間

 救急車は全国平均で要請から8分42秒で現場等到着すると言われています。これはあくまでも平均なので、実際には地域差によるところが大きいですね。

 ・東京都心

 ・地方の過疎地域

 この2つを比較した場合、東京都心で救急要請したならば、8分42秒かからずに救急車は来るでしょうが、地方の過疎地域であれば、要請から30分以上かかることも考えられます。

 しかし、平均で8分42秒というのは、私の感覚から言ってもそれぐらいだろう、という時間です。

 ・119番通報を入電 → 予備指令が流れるので出動準備

 ・まずはザックリとした要請内容と住所を確認 → 指令で住所を放送

 ・詳細な情報を確認 → 現場に向かっている救急隊に無線で詳細を送る

 8分42秒で到着する流れはこのような形ですね。市民が119番通報をした場合、管制課員と受け答えをしている段階で、すでに救急車は現場に向かっているということです。

 ヤフーニュースの記事では、現場到着までは問題なく、病院到着までの課程で遅延が発生したということです。

 出動から病院到着までの時間は全国平均で39分30秒となっています。これも地域によって差があります。都市部の方が病院が近くにあり、搬送時間が短くなることが一般的ですね。

f:id:fire-money:20220226081041p:plain

出典 総務省消防庁

なぜ経路誤りが発生するのか

 現役の救急隊員からすれば、出動から現場到着までの経路誤りはごく少数の頻度で発生することがあります。

 ・救急要請した方が住所を正確に伝えきれていない(交通事故などで土地勘が無い)

 ・経路確認して現場に向かったが、玄関が逆側だった

 ・道路に停車車両があり、道が塞がれており迂回を余儀なくされた

 ・運転手が不慣れで狭隘道路をスムーズに走行できずに切り返しなどをして遅れた

 このような理由で119番要請をした場所に到着が遅れることがあります。しかし、今回のヤフーニュースのケースは現場から病院搬送の課程で有料道路の分岐点を誤ったということです。このようなケースは99.9%無いといってよいですね。

通常時は助手席に隊員が乗って確認をする

 救急車は病院搬送する際に、よほどのことが無い限り、助手席に隊員を乗せて走行します。緊急走行時、運転手だけでは安全確認が行きわたらないので、運転手と助手席の隊員2人で安全確認しながら走行することが普通です。

 しかし、状況によっては運転手だけで病院まで運転することがあります。

 ・傷病者の処置に人手が足りない

 ・複数人で傷病者の容態を把握する必要がある

 ・CPA傷病者の場合

 このような傷病者の緊急度、重症度が共に著しく高い場合は人手不足から運転手だけで病院まで走行する必要があります。今回のヤフーニュースのケースは傷病者がCPAだったため、運転手だけで病院搬送していたことは十分に考えられます。

 ・助手席に隊員が乗っていれば、降り口などを事前に知らせることができる

 ・搬送病院を再度確認することができる

 ・左側の安全確認を助手席の隊員に任せておけるので、安全確認が楽になる

 助手席に隊員が乗っていれば、このようなメリットがあるということです。

f:id:fire-money:20220226083456p:plain

イレギュラーが発生した時にミスは重なるということ。

YOHの考え

 私が今回のケースの事案に出動した場合、病院搬送する際は運転手だけで走行させるという選択をします。

 ・胸骨圧迫

 ・人工呼吸

 ・特定行為

 このようなことを1人ですることは不可能だからですね。(救急車は3人で活動しているので、助手席に1人隊員を配置すると処置は1人で行う必要があります。)

 しかし、運転手には搬送病院をしっかりと伝えて、間違いなく行くことができるかどうかの確認は必ず行います。

 ・搬送頻度が低い病院

 ・運転手が救急に不慣れな隊員

 このような場合があるからですね。救急車は3人1組で構成されていますが、全ての隊員が救急隊でない場合があります。

 ・救急隊2名+消火隊員1名

 ・救急隊2名+レスキュー隊1名

 このようなケースは少なからずあります。休みの関係でどうしても救急隊員が3名確保できないケースがあるのですね。このような乗り組みの場合、消火隊員やレスキュー隊員には運転をしてもらうことが多いということです。

 それほど緊急度や重症度が高くない事案では救急隊員が3名でなくても問題ないのですが、緊急度や重症度が著しく高い現場では、救急に不慣れな隊員がいると後手に回ってしまうことがあるということです。

 ※これは消火隊員やレスキュー隊員が悪いということではなく、救急隊としての私のスキルが低いことが大きな原因です。

 そして、このような経路誤りによる遅延は消防活動として最もやってはいけない失敗のひとつです。消防組織の活動は119番通報した方の元にいち早く駆け付けることが求められます。そして、数秒を短縮するために、多くの予算を割いているということを忘れてはいけません。

 ・数秒の違いで傷病者の予後が大きく変わる

 ・数秒の違いで呼吸停止になる

 このようなことは十分に考えられるということです。数秒を短縮するためにお金を使い、スキルを高めるために訓練をしているということを忘れてはいけない、というのが私の考えです。

 ご覧いただきありがとうございました。

救急関連のことはこちらで記事にしています。

fire-money.hatenablog.com

 サイレンの苦情は少なからずありますね。

fire-money.hatenablog.com

 現代で問題になっているのは老々介護です。

fire-money.hatenablog.com