211万円の壁
年金受給に関して言われるのが211万円の壁です。
この211万円の壁というのは住民税非課税世帯となる年金受給額です。住民税非課税世帯というのは、文字通り、住民税がかからない世帯です。
年金受給で知っておく必要があるのが、年金は額面の金額をそのまま受給できるわけではないということです。
・住民税
・所得税
・社会保険料
このようなものが引かれた金額を受給することになるのですね。そのため、額面の金額よりもいくらか少なくなるということです。
その中で住民税が天引きされない年金収入の目安が211万円とされており、「211万円の壁」と言われています。
そして、この住民税非課税世帯には住民税が天引きされないということ以外にも様々な優遇措置があります。
・高額療養費の減額
・後期高齢者の医療窓口負担が1割(一定の収入がある場合は2割)
・介護保険料の減額
・政府の特別給付金を受給できる
・公共交通機関利用額の軽減(自治体による)
他にも多々ありますが、ザックリと挙げるだけで、このような優遇措置があるということです。
このような優遇措置を考えると、211万円の壁というのは意識しておく必要があるということです。
・年金収入が200万円
・年金収入が250万円
このような場合、「年金受給額が200万円」の世帯の方が優遇措置や給付金を受け取ることによって、金銭的な面から安定した老後生活を送ることができる可能性があるということです。
そして、211万円の壁で抑えておきたいのは、211万円というのは目安の金額に過ぎないということです。
年金収入の金額以外に年齢や世帯の状況によって壁となる金額が変わってくるということです。
211万円の壁は5つの前提条件を満たしておく必要があります。
・収入は公的年金のみ
・65歳以上
・夫婦2人暮らし
・配偶者が控除対象(合計所得金額が概ね48万円以下)
・1級地(大都市)に住んでいる
このような条件を満たしている場合、住民税非課税世帯となる目安が211万円の壁だということです。
当然ながら、全ての世帯がこのような条件を満たすことはできないですね。
・ひとり暮らし
・年金以外の収入がある
・現役労働者
・都市圏以外に住んでいる
このような世帯であれば、211万円の壁というのは変わってくるということです。そして、このような世帯というのは少なくないですね。
そのため、211万円の壁というのはあくまでもひとつの目安に過ぎず、住民税非課税世帯のラインは世帯の状況によって変わってくるということです。
・給与所得者(単身者)
・給与所得者(妻、こども1人を扶養)
・公的年金受給者(単身者・夫婦)
今回はこの3つのケースを例に挙げて、住民税非課税世帯に該当しない場合の収入金額の目安について触れてみたいと思います。
給与所得者(単身者)
給与所得者とは、公務員や会社員、パートタイムジョブなどで生計を立てている方のことを指します。
住民税非課税世帯となるには控除額が収入を上回っている必要があるので、控除額から逆算して収入を求めるのがわかりやすいですね。
給与所得者で住民税非課税世帯に該当する場合、収入が180万円以上になることは無いので、給与所得控除は55万円になります。
そして、居住している地域によって、級地区分による控除があります。級地区分とは、生活保護法によって、地域による生活水準の差を解消するために設けられた控除です。
・1級地・・・大都市(大阪市)
・2級地・・・中核市(泉佐野市)
・3級地・・・地方都市(能勢町)
大阪府で言えばこのように分けられています。都会であるほど生活費が多くなると考えられるということです。
・1級地・・・45万円
・2級地・・・41.5万円
・3級地・・・38万円
それぞれの控除額はこのようになります。今回は2級地(泉佐野市)に住んでいるケースで計算してみます。
・給与所得控除 55万円
・級地区分による控除 41.5万円
・計96.5万円
控除額は96.5万円となるので、泉佐野市に住んでいる給与所得者は収入が96.5万円以下であれば住民税非課税世帯となります。
非課税計算には社会保険料控除、寄付控除(ふるさと納税)、iDeCo、医療費控除などは含まれません。そして、給与収入に失業手当や通勤費は含まないため、実際には収入が96.5万円以上でも住民税非課税世帯に該当する場合があります。
給与所得者(妻、こども1人を扶養)
このケースの場合、まずは級地区分による控除を確認します。扶養家族がいる場合は級地区分による控除額が大きくなります。
この計算式で級地区分の控除を計算した場合、3人世帯の控除額は136万円になります。
・35万円 × 3人 +10万円 + 21万円 =136万円(級地区分控除)
控除額が136万円となることを考えると、収入が180万円の給与所得控除55万円で所得が0円を超えてることは無さそうですね。
・収入 180万円
・給与所得控除 55万円
・級地区分控除 136万円
・180万円 - (55万円 + 136万円) = -11万円
このように考えると、3人世帯で収入が180万円であれば、住民税非課税世帯に該当することになります。そして、ギリギリで考えると、収入が206万円までは住民税非課税世帯に該当します。
・給与所得控除 69.8万円
・級地区分控除 136万円
・合計 205.8万円
これならば、所得はマイナス0.2万円となるため、ギリギリで控除が収入を上回ることになるということです。
公的年金受給者(単身者・夫婦の場合)
公的年金受給者(単身者)の場合、収入が155万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当することになります。
・公的年金等控除 110万円
・級地区分控除 45万円
・控除合計 155万円
このように計算することができるからですね。
※遺族年金や障害年金は収入にカウントされないので、含みません
夫婦で年金受給をしている場合は、年金収入が211万円以下の場合、住民税非課税世帯に該当することになります。
・公的年金等控除 110万円
・級地区分控除 101万円
・控除額合計 211万円
夫婦の場合はこのようになるということです。これが211万円の壁の基になっているということです。
YOHの考え
住民税非課税世帯に該当する収入について触れてみました。
・給与所得者(単身者) 100万円
・給与所得者(3人世帯) 206万円
・年金受給者(単身者) 155万円
・年金受給者(夫婦) 211万円
ザックリと分けるとこのようになりますね。
収入がある世帯で住民税非課税世帯に該当する世帯とは、このような収入の世帯であることがわかります。
年金受給者で言えば、国民年金受給のみの世帯はほとんどが該当することになります。
その他には、生活保護世帯や障碍者世帯で収入が少ない場合などが当てはまるということです。
211万円の壁で必ず押さえておきたいのは、世帯の状況によって、壁となる金額が異なってくるということです。
・収入は公的年金のみ
・65歳以上
・夫婦2人暮らし
・配偶者が控除対象(合計所得金額が概ね48万円以下)
・1級地(大都市)に住んでいる
これらの前提条件を全て満たしていれば、211万円の壁を意識すればよいのでしょうが、ひとつでも条件が異なれば、壁となる金額が異なってくるということです。
・年金収入が200万円
・妻がアルバイトをしている
このようなケースであれば、世帯の壁がどの金額であるのかをきっちりと把握しておく必要があるということです。
・ギリギリで住民税非課税世帯に該当する
・ギリギリで住民税非課税世帯に該当しない
このようなケースでは、ギリギリで住民税非課税世帯に該当しない世帯は社会保障制度や税金面で最も恩恵を受けることができない世帯になってしまうということです。
もちろん、住民税非課税世帯に該当せずに決まった社会保険料や税金を支払うことは国民の義務であることは確かです。
しかし、自身の世帯が住民税非課税世帯の壁となる金額を把握しておくことは非常に大切です。
その上で、自身の世帯が住民税非課税世帯として生活を送るのかどうかを選択できることが大切だいうことです。
・決まった条件をそのまま受け入れて住民税非課税世帯とならない
・世帯の収入を調整して住民税非課税世帯として生活する
自分の世帯がボーダーライン付近の収入である場合、知識があれば、この2つのどちらかを自分で選択できるということです。
そして、この2つを選択できるだけの知識を保有しておくことが大切だと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
年金生活については、不安感がつきまといますね。現在老後生活を送られている方の中には預貯金が3000万円でも不安感がある方も存在します。
金融所得課税における1億円の壁についてはこちらで記事にしています。
公務員や会社員といって給与所得者においても節税の知識は欠かすことはできませんね。