60歳を超えても働く消防職員
7月3日にヤフーニュースに掲載されている讀賣新聞オンラインの記事が非常に興味を惹かれるものでした。
内容をザックリと要約すると、新潟県の消防本部が定年退職後に働く消防職員が活躍できるように50歳以上の職員を対象に、組織として体力づくりに乗り出しているという内容です。
地方公務員法では地方公務員の定年退職年齢を現在の60歳から段階的に引き上げていき、2031年度には65歳にするように改正されました。
ややこしい点は、定年退職年齢が65歳になったからといって、65歳まで同じ役職で働くのではないということです。
管理職に就いている職員は60歳に達すると役職定年となり、原則として管理職から外れて係長職、もしくは一般職員として働くことになるということです。
・59歳で課長
・60歳で役職定年
・翌年からは係長職、もしくは一般職員
このような働き方をするということです。
これは、デスクワーク中心の行政職でも扱いが難しいものになりそうですが、消防職員として働く場合はさらに勝手が違ってきます。
・消防職員の管理職と一般職員の違い
・管理職が一般職員として働くこと
・定年を超えても働き続ける必要があるのか
今回はこの3点を中心に定年後も働くことについて考えてみたいと思います。
消防職員の管理職と一般職員の違い
消防職員として働いているとややこしいと感じるのは階級と役職の2つがあることです。
消防職員の階級は以下のように10段階に分かれています。
この階級と役職でややこしいのは、自治体の規模によって階級と役職が異なっているということです。
・A市では消防司令補は係長だが、B市では主任
このようなことが往々にしてあるということです。そのため、消防司令だから管理職である、とは一概に言えないということです。
私の自治体で言えば、管理職というのは階級で言えば消防司令長、役職であれば課長ということになります。
そして、課長職(消防司令長)以上というのは基本的に災害現場であくせくと動く立場ではありません。
・デスクワーク中心の仕事
・災害現場に行くなら、指揮者として隊員に指示を出す
・部隊を指揮する無線交信
このような役割をしているということです。そして、係長職や一般職員であれば災害時には現場活動をすることになります。
・火災の時に重たい防火衣を着てホースを伸ばす
・救急活動時に機関員として救急車を運転する
・事務仕事では日誌など雑用業務をこなす
このようなことをしているということです。
しかし、60歳で役職定年して係長職、もしくは一般職になると階級は消防司令、もしくは消防司令補あたりになるということです。
そのため、60歳で役職定年をしてさらに働く場合、課長職の時とは全く違った現場活動を行う必要があるということです。
管理職が一般職員として働くこと
役職定年をして管理職が一般職員として働く場合、消防職員として求められるのは現場で活動できるだけの能力です。
・災害時に長時間動くことができる体力
・夜中に出動が続いても対応できるだけの精神力
このようなものが求められるということです。ずばり言ってしまえば、これは非常に難しいことですね。
60歳という年齢は高齢者に足を踏み入れている年齢です。日々ストイックに体力作りをしていたとしても、20代、30代の職員とは比較にならないほど肉体的ハンディキャップがあるのですね。
そんな中で若い職員と同様に現場活動をこなすというのは非常に難しいということです。
そして、昨年まで管理職として現場を指揮していた立場にあったにも関わらず、役職定年したからといって、いきなり指示される立場になる、ということをすんなりと受け入れることは誰にでもできことではありません。
・今までの部下に指示される
・親子ほど年の離れた若手職員と災害従事活動をする
・それまで歯牙にもかけなかった雑用事務をこなす
管理職が役職定年をして60歳以降も働くというのはこのようなことを受け入れる必要があるということです。
YOHの考え
今回は消防職員が定年後も働くことについて考えてみました。
私の自治体でも60歳で定年退職をして再雇用として働いておられる方は何人もおられます。しかし、実際に評判を聞く限り、芳しいものではないですね。
・管理職気分が抜けていない
・事務仕事は一切しない
・災害現場でも気を使う必要がある
もちろん、全ての方がそうではないですが、このような感情を持っている職員が多いということです。
私自身、60歳以降も消防職員として働くことを選択するか、と考えると「非常に難しい」と感じています。
・体力面
・知識面
・精神面
このようなあらゆる面において現場活動を行うのには力不足だと感じるからですね。私はもうすぐ40歳を迎えますが、現時点でも救急車に乗って日々救急出動することに衰えを感じることが多々あります。
・夜中に出動は本当にキツイ
・新しい知識の習得に時間がかかる
・モチベーションを保つのが難しい
このように感じているということです。私自身、救急隊長という役職はあと数年で引退して、もう少し体力的の負担の少ない部署に行きたいと考えています。
このように考えると、60歳以降も消防職員として働くということについては難しいということです。
定年退職後も働くことで大切なことは、選択することができる立場でいることです。そして、その選択できる立場にいるために必要なもののひとつがお金です。
・住宅ローンが残っており働く必要がある
・年金受給まで働く必要がある
このような働かざるをえない状況にいることは好ましいものではないということです。
・60歳になったが体力的に消防職員として働ける
・階級や役職の低下を受け入れて一から頑張ることができる
お金に余裕があり、このような状況であれば60歳以降も働くという選択を取ってもよいのでしょうが、それができる方というのは非常に非常に少ないということです。
老後を豊かに暮らすためには現役時から金銭的な準備をしておく必要があります。
・退職金ありき
・再雇用ありき
・年金ありき
このような人生設計をしないように現役時から準備をしておくことが大切だと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
消防職員の働き方の一部についてはこちらで記事にしています。
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