金融庁の令和5年度税制改正要望
8月22日に金融庁が8月末に提出する来年度(令和5年度)の税制要望にNISAについての要望が盛り込まれたことが大きな話題となっています。
・NISA枠の拡充
・NISA枠の非課税期間の無期限化
金融庁はこの2つを来年度の税制要望の目玉として要望を提出し、年内に税制調査会の審議を受けることになります。
・要望を出したということはNISA枠が拡充されることは間違いない
・やっと非課税期間が無期限化される
このような考える方もおられるでしょうが、実際にはそうではありません。過去の要望を確認すると、NISA枠の恒久化については、令和2年度の税制要望(令和元年度に提出)でも盛り込まれています。しかし、12月に発表された税制改正大綱では恒久化についてはキックアウトされて、期間を一部見直す形として発表されました。
それを受けて作られたのが、2024年(令和6年)からはじまるとされている新NISA制度です。そのため、今回も現時点では金融庁の要望提出の段階なので、どのようになるかは分からないということです。
・税制改正の流れ
・NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は達成されるのか
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
税制改正の流れ
法律などは基本的にすぐに出来てそのまま現行制度に適応されるわけはありません。各省庁が要望を取りまとめて、調査会の審議を経て、そこから様々な議論がされて国会に提出されることになります。
そして、国会の審議を経て施行されるというのが一般的な流れです。
流れを大まかな図にするとこのようになります。NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は、まだ一番最初の税制改正要望の段階だということです。
難関は9月~11月に行われる税制調査会での検討と12月中旬に行われる税制改正大綱の発表です。ずばり言ってしまえば、税制改正大綱にNISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化が明記されれば、要望が叶えられることはほぼ間違いないと言ってよいですね。
しかし、12月に発表される税制改正大綱はあくまでも来年度(令和5年度)の改正に焦点を当てたことが中心となるので、再来年以降のことは触れられない可能性があるということです。
NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は達成されるのか
前述したように、NISA枠の恒久化についてここまで具体的に税制要望に盛り込まれるのは、令和2年度に続いて2度目となります。
そして、令和2年度の税制改正大綱では新NISA制度が明記されていることからも、NISA制度については、今年の税制改正大綱でも何らかの形で触れられるのでは、というのが私の印象です。
しかし、来年の4月1日から、NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化がスタートすることは無いと私は考えています。新NISA制度が2024年からはじまることを考えると、どれだけ早くとも、NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は2024年以降になると考えるのが自然だということです。
(2022年3月31日現在)について
・NISA口座 725万口座
・つみたてNISA口座 396万口座
NISA制度は株式投資をしている方には非常に人気がありますが、両方を合わせても1121万口座しかありません。日本の15歳~65歳以上の人口が1億1000万人ほどなので、口座開設できる方の10人に1人しかNISA口座を利用していないことになります。一般的な認知度はそれほど高くはないということです。
そのように考えると、NISA制度を使っている方というのはマイノリティで、NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は、それほど早急に手を打つ法案では無いということです。
YOHの考え
私はNISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化が今年の税制改正大綱に明記される可能性は高くない、と考えています。
・それほど急ぐ法案ではない(優先度が高くない)
・2024年から新NISA制度がスタートする
・税制改正大綱は来年度の改正について触れるのが一般的
税制改正大綱に明記される可能性が低いと考えるのには、このような理由があるからです。しかし、一方で、今年の税制改正大綱に明記される可能性が全くないとも考えていません。
・新しい資本主義
・貯蓄から投資へ
・インベスト・イン・キシダ発言
岸田総理はこのような経済政策を掲げており、一億総株主というような言葉も使うことがあります。このNISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化を経済政策の中でどれほど重要視しているか、というのがポイントだということです。
・とにかく急いで貯蓄から投資への形を作りたい
・一億総株主を実現させたい
国としてこのように強く考えているのであれば、NISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は早期に実現する可能性があるということです。しかし、岸田政権は夏の参院選大勝を受けたことから、よほどのトラブルが無ければ3年間は続くことになります。
・2022~2025年の間に何らかの形でNISA枠の恒久化と非課税期間の無期限化は法案として成立する
私自身はこのように考えています。ご覧いただきありがとうございました。
岸田総理が外遊先のイギリスで発言したインベスト・イン・キシダについては、こちらで記事にしています。
NISAの恒久化についてはこちらでも記事にしています。
金融所得課税の議論は先送りされましたが、段階的に引き上げられていくことは避けられないと考えておいてよいですね。