年末調整
会社員や公務員であれば、この時期になると年末調整をしなければなりません。
以前は紙媒体で提出をしていましたが、現在では電子による提出が主流となっています。
未だに紙信仰が根強い私の職場においても、昨年からは電子による提出をすることになりました。
電子申請が可能になったことは、便利になった一方で弊害も少なからずありますね。
それは、我々のような給与所得は税に対しての知識が不足しているため、何をどのようにすればよいのかがわからないことが多々あるということです。
・お金が返ってくる可能性がある
・きちんと申告しないと損をするかもしれない
このようなザックリとした認識で毎年やり過ごしているということです。
そこで、今回は会社員や公務員のような給与所得者に関係しそうな事柄についてまとめてみました。
・年末調整とは
・多くの会社員や公務員が関係しそうな控除まとめ
今回は年末調整についてこの2点を中心に触れてみたいと思います。
※今回の記事は一般的な公務員や会社員にのみ該当するケースを記載しています。特別なケースについては、該当しない場合があります。
年末調整とは
年末調整とは、月々の給料やボーナスから源泉徴収で天引きされている所得税の過不足を調整する手続きのことです。
対象となるのは、所得税のみで住民税は対象ではありません。
この年末調整を行う理由は、会社員や公務員は所得税を納め過ぎているケースが多いからですね。
所得税は毎月徴収されていますが、この徴収金額というのは概算によって求められています。
そして、多くのケースで多く徴収しているということです。
そのため、年末になり、きっちりと所得が確定した時点で改めて正しい所得税額を計算して申告するというのが年末調整です。
所得税の計算方法
所得税でよく言われるのが、年収が高くなるにつれて所得税で納める金額も増加する、ということです。
これは概ね正しいのですが、必ずしもそうではありません。
というのは、所得税は課税所得によって納付する金額が決まるからですね。
そして、課税所得は「額面年収 - 控除額」によって計算することができます。
・額面年収 400万円
・控除額 100万円
このようなケースであれば、課税所得は300万円になります。この300万円に対して所得税がかかるということです。
課税所得が300万円であれば、所得税率は10%となります。
以下の図も同様のサイトから引用
しかし、控除額というのは世帯の状況によって異なります。
・額面年収 400万円
・控除額 250万円
このようなケースであれば、課税所得は150万円になります。そして、課税所得が150万円であれば、所得税率は5%となります。
このように、額面年収が同じ400万円であっても控除が大きければ、それだけ課税所得が少なくなり、納付する所得税も少なくなるということです。
会社員や公務員がこの控除を申告するのが、年末調整であるということです。
会社員や公務員が申告する控除
控除には全部で15種類あります。
この中で、多くの会社員や公務員の年末調整で関係する控除は限られています。
・基礎控除
・生命保険料控除
・配偶者控除
・扶養控除
この4つが年末調整をしていく中で頭を悩ますポイントです。
それぞれについて順番に触れていきます。
基礎控除
基礎控除とは、確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、額面年収から差し引くことのできる控除です。
基本的に年末調整をするような方であれば、全ての方が対象となり、額面年収が2,400万円以下であれば、48万円の控除が受けられることになります。
いちおう、額面年収が上がるにつれて、段階的に控除額が下がっていきますが、99%の会社員や公務員は48万円です。
そのため、年末調整で基礎控除を入力する欄があれば、「48万円」と記載しておけばよいですね。
生命保険料控除
次は生命保険料控除です。これが多くの人が最もややこしいと感じるところですね。
・生命保険
・介護医療保険
・個人年金保険
これらに加入している場合、年末調整で申告することによって、掛金が控除対象となります。
生命保険料控除は平成24年1月1日以降に終結した保険と、平成23年12月31日以前に終結した保険によって、扱い方が異なります。
少々複雑なので例を出して考えてみます。
・平成22年に加入した生命保険料の年間支払額が10万円(旧生命保険)
・平成25年に加入した生命保険料の年間支払額が4万円(新生命保険)
・計14万円
この場合の保険料控除額はいくらになるか考えてみます。
旧生命保険は10万円なので、計算式は「支払保険料等×1/4+25,000円」となります。
・10万円×1/4+2.5万円=5万円
新生命保険料は4万円なので、計算式は「支払い保険料等×1/2+10,000円」となります。
・4万円×1/2+1万円=3万円
両方を合わせると8万円となりますが、8万円分控除を受けるわけではありません。控除額の限度額は4万円なので、4万円までしか控除を受けることができないことになります。
これらは、介護医療保険、個人年金保険についても同様です。新生命保険料については、それぞれについて、4万円までの控除を受けることができます。
年末調整の提出書類に記載する場合には、自身の加入している保険がどの保険に該当するのかを確認して、分けて記載する必要があるということです。
配偶者控除
配偶者控除は結婚している方で、基本的に配偶者がフルタイムで働いていない場合、年末調整において申告が必要になります。
配偶者がフルタイムで働いており、それなりに収入がある場合は年末調整による申告は非該当となります。
そして、配偶者控除が適応される配偶者とは、以下の要件を満たしておく必要があります。
・民法の規定による配偶者であること(内縁関係などは非該当)
・生計を共にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
・青色申告の事業専従者として今年度に給与の支払いを受けていない、または白色申告事業者でない
この4つのケース全てに妻(夫)が該当しているのであれば、配偶者控除の対象となります。
・専業主婦
・収入を調整して月8万円ほどのパート収入を得ている
配偶者がこのような状況であれば、年末調整の書類に記載する必要があるということです。
額面年収が900万円を超えるのであれば、控除額は減額されますが、多くの会社員や公務員であれば、38万円の控除を受けることができると考えておいてよいですね。
扶養控除
扶養控除は年末調整をする方に控除対象の扶養親族がいる場合に所得控除が受けることができます。
・こども
・親
・障害者
このような人を養っているのであれば、扶養控除の対象となります。
控除額については、扶養親族の属性によって、38万円から63万円に分かれています。
扶養控除の最も多いケースはこどもがいる場合ですね。
しかし、注意点としては、15歳未満のこどもは含まれません。
・その年の12月31日の年齢が16歳から30歳未満
・その年の12月31日現在の年齢が70歳以上
・その年の12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満で障害者である
※他にも該当する要件はあります。
主にこのような人で次のケースに該当するのであれば、扶養控除の対象となります。
・配偶者以外の親族(6親等血族および3親等以内の姻族)
・年間所得が48万円以下(給与所得が103万円)
・生計をともにしている
・青色申告の事業専従者として今年度に給与の支払いを受けていない、または白色申告事業者でない
これら全てに該当している人を養っているのであれば、扶養控除の対象となります。
・同居している大学生のこどもがおり、アルバイト収入が月6万円程度
・別居している80歳の親に生活費を仕送りしている
このようなケースであれば、扶養親族に該当するということです。逆に似たようなケースでも扶養親族に該当しないケースもあります。
・同居している16歳のこどもが年収200万円を得ている
・同居している80歳の親がいるが、家計は別々にしている
このようなケースであれば、扶養親族には該当しないことになります。
要件については、複雑なケースがあるので、よく確認した方がよいですね。
YOHの考え
今回は一般的な会社員や公務員の年末調整についてまとめてみました。
・基礎控除
・生命保険料控除
・配偶者控除
・扶養控除
職場の年末調整において、どのように記載すればよいかわからないケースとしては、この4つが挙げられます。
・基礎控除 48万円
・生命保険料控除 加入している保険の種類によって書き分ける
・配偶者控除 専業主婦やアルバイトであれば38万円
・扶養控除 高校生以上のこどもや70歳以上の親を養っていれば対象
一般的な年収の会社員や公務員であれば、概ねこのような認識を持って、年末調整の書類を作成すればよいということです。
しかし、今回紹介したのは、あくまでもよくあるケースなので、これらに該当しないやや複雑なケースであれば、しっかりと確認をして書類作成を行う必要があります。
・給与所得者控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoを職場の天引きでしている)
このようなものは職場で計算してくれるので、個人の年末調整で気にする必要はありません。
また、年末調整時によくあるのが、ふるさと納税についてはどのようにすればよいのか、という質問です。
・寄付控除
・医療費控除
これらについては、確定申告や特例措置(ワンストップ特例)を利用して、別に申告する必要があります。
職場の年末調整においては申告の対象外ということです。
私の職場では、新人職員などに税金や社会保障についてしっかりと教えるような環境が整っていないため、年末調整などは非常に煩雑になります。
・私のを参考にして適当に入力しておけばいいよ
・よくわからないけど、同じ数字を入れておけばいいよ
このような指導とも言えないような教え方をしている場面に出くわすことが少なからずあります。
正に、よくわかっていない人がさらにわかっていない人に教えている、といった状況です。
当然ですが、このような状況は双方にとって好ましいものではないですね。
会社員や公務員として働くというのは、その仕事について知識やスキルを習得するのはもちろんのこと、税や社会保障といった生活していく上で欠かすことのできない知識も同様に習得する必要があります。
仕事の知識やスキルだけを磨いているだけでは、社会人として一人前になることはできないということです。
年末調整は会社員や公務員として働いているのであれば、何十年と付き合っていく必要があるものです。
そして、その知識は資産形成において必ず役に立つものであるということです。
その意識を持って、年末調整などを自分自身で理解することが大切であると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
生命保険料控除で非常に有名なのが明治安田生命の「じぶんの積立」という生命保険です。控除だけを目的として作られた保険で、実質的な利回りは2%を超えます。
生命保険料控除を用いた保険加入の考え方についてはこちらで記事にしています。
年末調整では関係ありませんが、医療費控除について抑えておきたいポイントについてはこちらで記事にしています。