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【3,700万円の損害賠償請求に対応可能】公務員損害賠償責任保険について

自治体からの損害賠償請求

 公務員として働いている立場として非常に気になる事例が報道されていました。

news.yahoo.co.jp

 概要としては、東京都練馬区の職員に支給されるボーナスの源泉徴収税の納付漏れが発覚し、3,700万円の追徴課税が生じ、自治体として、その賠償を担当職員に求める方針であるという内容です。

 私も公務員として働いており、このような事態というのは他人ごとではないと感じます。

 それほど、業務上のミスで生じた損害に対して、自治体が職員個人に対して損害賠償をするケースが増えてきているということです。

 ・損害賠償に至るケース

 ・公務員損害賠償責任保険とは

 今回は、この2点を中心に公務員が自治体から損害賠償されるリスクとその対処法について触れてみたいと思います。

損害賠償に至るケースとは

 地方自治法では、役所の物品などの破損などで損害が生じた場合、故意か重過失と判断されれば、職員に損害賠償請求することができるとなっています。

 重過失かどうかの判断は、自治体の裁量に委ねられています。

 物品を破損する例として最も多いのは、公用車の事故ですね。

 ・運転中にバンパーをこすった

 ・電柱にミラーをぶつけた

 このような事故は消防車や救急車でも年間数件は必ず発生しています。

 ・年間5万キロ以上走行

 ・救急出動5000件以上

 救急出動の多い部署では、このような頻度で救急車は走行します。これが市内で10台稼働していたとすると、1年間無事故で運行するというのは、統計的に考えても非常に難しいですね。

 公用車で事故を起こした場合、膨大な量の書類を作成します。

 しかし、修理費用を個人に請求されることはまずありません。故意や重過失と判断されることがないからですね。

重過失と判断されるケース

 今回の練馬区のケースは故意というのは考えにくく、重過失と判断されたため、担当職員が損害賠償請求されたと考えてよいですね。

 現在のところ、練馬区の担当職員は損害賠償請求が実際にされたわけではありません。調査の段階であるということです。

 しかし、されなかったとしても、状況が変わるわけではありません。後日、全額負担を求める住民訴訟が起こる可能性が高いからですね。

 そのため、業務上のミスによって、自治体に大きな被害をもたらした場合、2つの事例に対応する必要があるということです。

 ・自治体からの損害賠償請求

 ・住民からの損害賠償訴訟

 この場合、損害に対する金銭的負担よりも、精神的な負担が非常に大きいですね。

 損害賠償請求と損害賠償訴訟がどのくらいの期間が解決したのかは分かりませんが、このようなことは、本来の業務に多分に影響を及ぼします。

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出典 讀賣新聞オンライン

救急隊での事例

 消防の救急隊が自治体から重過失と判断されたケースでは、誤挿管が挙げられます。

 救急救命士は一定の条件下にある心肺停止傷病者に対して、気管挿管(気管にチューブを入れて気道確保する行為)をすることができます。しかし、この気管挿管は医療事故が起こる可能性がある手技と言えます。

 ・食道にチューブが入ってしまう

 ・既往症によって、気道を傷つけてしまう

 このようなことが起こり得るからですね。多いのは、食道にチューブを入れてしまう誤挿管です。

 誤挿管してしまうと、肺に酸素が行かず、容態を悪化させてしまうことになりかねません。聴診器やCO2モニターで肺に酸素が送られているか確認をしますが、それでも、見落としてしまう可能性があるのです。

公務員損害賠償責任保険

 今回の練馬区のケースでは、担当職員は公務員がミスで生じる損害が補償される保険に自分自身で加入していたとなっています。

 このような公務上のリスクに対して備えるのが、公務員損害賠償責任保険です。

 ・損害賠償金を補償

 ・住民訴訟、民事訴訟の費用を補償

 ・退職後の一定期間を補償

 ・弁護士費用を補償

 ・掛金は年間3,000円~4,000円

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出典 消防職員損害賠償責任保険

 この保険に入っていれば、自治体からの損害賠償請求、住民からの損害賠償訴訟に対応することができます。掛金は年間3,000円~4,000円と大きな負担ではないですね。

 自治体によっては、組織で損害賠償保険に加入しているケースもあります。その場合は、内容確認をする必要があります。

 ・住民から自治体への損害賠償請求には対応

 ・住民から職員個人への損害賠償訴訟には未対応

 このようなケースがあるからですね。訴えを起こす相手が同じでも、訴えを起こされた側が異なれば、保険適応外というケースがあるからですね。

どんなに気を付けていてもミスが生じることはある。

YOHの考え

 今回は公務員が損害賠償請求されることと、公務員損害賠償責任保険について府触れてみました。

 紹介した練馬区のケースでは、源泉徴収税の納付漏れによって担当職員2人が自治体から3,700万円の損害賠償請求される方針であるということです。

 このようなミスというのは、普通は起こることは無いのでしょうが、それでも絶対に起こらないと言い切ることはできません。

 私自身も救急隊員として働いており、個人で公務員損害賠償責任保険には加入しています。

 ・医療行為のミス

 ・救急活動のミス

 誤挿管などはプロとしてあってはならないミスですが、100%起こり得ないミスではありません。

 ・確率は低いが、起こった場合のリスクが大きい

 このようなことに対しては保険で備えておく必要があるということです。

 公務員は給料が安定しており、身分保障もありますが、個人が訴えられた場合などは、組織としての対応は驚くほどドライです。

 ・個人的に訴えられているのだから、組織は関係ない

 ・組織として対応する必要はない

 組織としてはこのスタンスを貫きます。

 個人が訴えられた場合、全てを自分で解決する必要があるということです。

 一番の予防策はミスを起こさないことです。しかし、人である以上、ミスは必ず起こしてしまいます。

 そして、公務員のミスは自治体と住民の両方から訴えられることが十分に考えられます。

 その際のセーフティーネットになるのが、公務員損害賠償責任保険だと、私は考えています。

 ご覧いただきありがとうございました。

 公務員の働き方がブラックなのか、ということについてはこちらで記事にしています。

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 仕事でミスはつきものです。ミスに対する考え方はこちらで記事にしています。

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