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公務員が自治体から損害賠償請求されるリスクと対処法について

自治体からの損害賠償請求

 12月14日のヤフーニュースにこのような記事が掲載されていました。

news.yahoo.co.jp

 業務上のミスで生じた損害に対して、自治体が職員個人に対して損害賠償をするケースが増えてきているという記事です。

 実際に公務員として働いていて感じるのは、このような事例が増えているということです。

 今回は、公務員が自治体から損害賠償されるリスクとその対処法について触れてみたいと思います。

多いのは公用車の事故

 地方自治法では、役所の物品などの破損などで損害が生じた場合、故意か重過失と判断されれば、職員に損害賠償請求することができるとなっています。重過失かどうかの判断は、自治体の裁量に委ねられています。

 物品を破損する例として最も多いのは、公用車の事故ですね。

 ・運転中にバンパーをこすった

 ・電柱にミラーをぶつけた

 このような事故は消防車や救急車でも年間数件は必ず発生しています。

 ・年間5万キロ以上走行

 ・救急出動5000件以上

 救急出動の多い部署では、このような頻度で救急車は走行します。これが市内で10台稼働していたとすると、1年間無事故で運行するというのは、統計的に考えても非常に難しいですね。

 公用車で事故を起こした場合、膨大な量の書類を作成しますが、修理費用を個人に請求されることはまずありません。故意や重過失と判断されることがないからですね。

重過失と判断されるケース

 ヤフーニュースの記事では、プールの水を止め忘れて116万円の損害が自治体に生じたケースで、関係した教職員が自治体から半額を負担するように損害賠償請求されています。

 関係した教職員は請求どおりに納付しましたが、後日、全額負担を求める住民訴訟を起こされています。結果的には、東京地裁は住民訴訟を棄却しています。

 業務上のミスによって、関係した教職員は2つの事例に対応することとなっています。

 ・自治体からの損害賠償請求

 ・住民からの損害賠償訴訟

 この場合、損害に対する金銭的負担よりも、精神的な負担が非常に大きいですね。損害賠償請求と損害賠償訴訟がどのくらいの期間が解決したのかは分かりませんが、このようなことは、本来の業務に多分に影響を及ぼします。

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出典 讀賣新聞オンライン

救急隊での事例

 消防の救急隊が自治体から重過失と判断されたケースでは、誤挿管が挙げられます。救急救命士は一定の条件下にある心肺停止傷病者に対して、気管挿管(気管にチューブを入れて気道確保する行為)をすることができます。しかし、この気管挿管は医療事故が起こる可能性がある手技と言えます。

 ・食道にチューブが入ってしまう

 ・既往症によって、気道を傷つけてしまう

 このようなことが起こり得るからですね。多いのは、食道にチューブを入れてしまう誤挿管です。誤挿管してしまうと、肺に酸素が行かず、容態を悪化させてしまうことになりかねません。聴診器やCO2モニターで肺に酸素が送られているか確認をしますが、それでも、見落としてしまう可能性があるのです。

公務員損害賠償責任保険

 このような公務上のリスクに対して備えるのが、公務員損害賠償責任保険です。

 ・損害賠償金を補償

 ・住民訴訟、民事訴訟の費用を補償

 ・退職後の一定期間を補償

 ・弁護士費用を補償

 ・掛金は年間3,000円~4,000円

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出典 消防職員損害賠償責任保険

 この保険に入っていれば、自治体からの損害賠償請求、住民からの損害賠償訴訟に対応することができます。掛金は年間3,000円~4,000円と大きな負担ではないですね。

 自治体によっては、組織で損害賠償保険に加入しているケースもあります。その場合は、内容確認をする必要があります。

 ・住民から自治体への損害賠償請求には対応

 ・住民から職員個人への損害賠償訴訟には未対応

 このようなケースがあるからですね。訴えを起こす相手が同じでも、訴えを起こされた側が異なれば、保険適応外というケースがあるからですね。

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働いているとミスは必ず起こるもの。しかし、プロとしてしてはいけないミスはある。

YOHの考え

 私は、救急隊として働いている時は、個人的に公務員損害賠償責任保険に加入していました。

 ・医療行為のミス

 ・救急活動のミス

 誤挿管などはプロとしてあってはならないミスですが、100%起こり得ないミスではありません。

 ・確率は低いが、起こった場合のリスクが大きい

 このように考えていたからですね。公務員は給料が安定しており、身分保障もありますが、個人が訴えられた場合などは、組織としての対応は驚くほどドライです。

 ・個人的に訴えられているのだから、組織は関係ない

 ・組織として対応する必要はない

 組織としてはこのスタンスを貫きます。個人が訴えられた場合、全てを自分で解決する必要があるのです。

 一番の予防策はミスを起こさないことです。しかし、人である以上、ミスは必ず起こしてしまいます。

 そして、公務員のミスは自治体と住民の両方から訴えられることが十分に考えられます。その際のセーフティーネットになるのが、公務員損害賠償責任保険だと、私は考えています。

 ご覧いただきありがとうございました。

仕事でミスはつきものです。ミスに対する考え方はこちらで記事にしています。

fire-money.hatenablog.com

 公務員でも安泰ということはありません。財政破綻という大きなリスクがあります。

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