iDeCoの受取り
iDeCoで最も優れている点は2つの税制優遇措置がある点です。
・運用益が非課税になる
・掛金が控除対象となる
iDeCoの税制優遇措置には、ザックリと言ってこの2つがありますが、効果が大きいのは「掛金が控除対象となる」という方ですね。
運用益が非課税になる、というのは非常にありがたい税制優遇措置なのですが、公務員や会社員など、月々の拠出額がそれほど多くない場合、効果を感じるほどの金額ではないということです。
・年間14.4万円
・10年間満額拠出し続けて144万円
公務員の場合、月々の拠出限度額は1.2万円です。10年間の拠出合計額である144万円というのは大金に間違いないですが、10年間を費やして形成したこの金額の運用益の非課税分というのは、効果を実感するほどの金額ではないということです。
・掛金が控除対象となる
しかし、運用益が非課税になるという税制優遇措置は毎年のように効果を実感することができます。そして、その効果も少ないものではないですね。
・毎年14.4万円が控除される
この効果というのは非常に大きいということです。所得にかかる税率によって優遇される税額は異なりますが、所得税率が20%だとすると、所得税が毎年2.8万円安くなるということです。
特に、会社員や公務員は使うことのできる控除が極めて限定されているので、iDeCoの税制優遇は資産形成上、非常に大きなものだということです。
しかし、このようなiDeCoの掛金が控除の対象となる、ということについてよく言われるのが、税を先送りにしているに過ぎないということです。
・何故iDeCoは納税を先送りにしているに過ぎないと言われるのか
・iDeCoで納税を先送りにすることが資産形成上有利になる理由
今回はiDeCoについてこの2点を中心に触れてみたいと思います。
何故iDeCoは納税を先送りにしているに過ぎないと言われるのか
iDeCoが納税を先送りにしていると言われる理由は、受取り時に課税されることになるからですね。
・掛金を拠出
・積立金を運用
このような期間は非課税となる税制優遇措置を受けることができるのですが、拠出して積み立てて運用した資産を受け取る時に課税されるということです。
・一時金(一括)
・年金(分散)
・一時金と年金
iDeCoで積み立てて運用した資産はこの3つの方法で受け取ることができますが、いずれの場合も課税されることになります。
特に注意が必要なのは、自身の退職金と合わせてiDeCoの資産を一時金として受け取るケースです。
退職所得控除
公務員や会社員が自身の退職金を受け取る場合、所得控除のひとつである退職所得控除を使うことができます。
・退職金を受け取る年だけ所得が大きくなる
・所得が大きくなれば、翌年の納税額が大きくなる
このようなことに対して、退職金などの一時的に得た所得を控除の対象とするために設けられたのが退職所得控除です。
退職金を受け取るまでの勤務年数が長ければ長いほど、退職所得控除の金額は増えることになります。
大卒の公務員が定年退職まで働いた場合、退職所得控除の金額は約2,000万円になります。
・22歳から60歳まで38年間
・800万円+(70万円×18年)=2,060万円
これぐらいの金額になるということです。
退職金とiDeCoの積立金がこの金額を超えるのであれば、超えた金額に応じて課税されることになります。例を挙げて確認していきます。
退職金とiDeCo合わせて3,000万円のケース
・退職金 1,500万円
・iDeCo 1,500万円
・合計 3,000万円
このようなケースを例として一時金の支給にかかる納税額を確認していきます。
・3,000万円-2,060万円(退職所得控除額)=940万円
・940万円÷2=470万円
このように合計3,000万円の退職所得がある場合、470万円が課税対象となります。
そして、この470万円に対して所得税と住民税がかかります。
上の表を基に470万円に対する課税額を計算すると以下のようになります。
・(470万円-42.75万円)×20%=52.3万円
そして、住民税は一律10%として470万円とすると課税合計額は以下のようになります。
・所得税 52.3万円
・住民税 47万円
・合計 約100万円
このように、38年間勤務して退職金とiDeCoの積立金を合計で3,000万円受け取った場合、100万円を納税する必要があるということです。
これが、退職金1,500万円のみを受け取った場合であれば、課税されることはありません。退職所得控除額の2,060万円を下回っているからですね。
これにiDeCoの積立金1,500万円を加えることによって、100万円余計に課税されることになるということです。
そして、この100万円の課税がiDeCoが納税を先送りにしているに過ぎないと言われる理由だということです。
YOHの考え
今回はiDeCoが納税を先送りにしているに過ぎないと言われることについて考えてみました。
iDeCoというのは、はじめるのは比較的容易いのですが、考えなければならないのは受け取る方法やタイミングだということです。
・一時金(一括)
・年金(分散)
・一時金と年金
納税額を最も少なく受け取るためには、これらの受取り方法と自身の退職金額や退職所得控除を加味して受け取る必要があるということです。
そして、自分自身に最も適した受取り方法やタイミングを選択することができれば、納税額を少なくすることができるということです。
しかし、実際に納税額がどれほどになるかは直前にならないとわからないケースが非常に多いですね。
・退職金の額
・iDeCoの運用益
・退職所得控除の額
この辺りがはっきりするのは、早くとも退職する数年前だからです。退職まであと10年以上ある、というケースでは退職金とiDeCoを加味した最もよい受取り方法はわからないということです。
そして、私自身は退職前になれば最もよい受取り方法を考えるでしょうが、それについては最適解でなくともよいと考えています。
・課税額が大きくなる
・iDeCoで税制優遇されていた金額分を納税する
このようになってもよいと考えているということです。
・現在、掛金が控除対象となっている
・今の手取り金額が増えている
これだけでiDeCoの恩恵を十分に受けることができていると考えているからですね。
退職する時の100万円と現役世代の時に税制優遇される100万円、どちらの価値が大きいかと考えると、現役世代の時に税制優遇される100万円の方が価値が大きいと考えているということです。
・iDeCoは納税を先送りにしているだけだから使わない
このような考えというのは、個人の価値観によるところが大きいですが、私自身は会社員や公務員であれば、iDeCoは最も先に取り組み資産運用だと考えています。
NISAよりも優先順位は高いということです。
その理由は「掛金が控除の対象となる」ということが非常に大きいですね。
・上手に受け取ることができれば納税の先送りにはならない
・上手に受け取れなくとも、拠出している間は掛金が所得控除となる
この2点から、iDeCoは資産運用において最も優先順位が高い制度であると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
iDeCoの受取り方についてはこちらで記事にしています。
iDeCoをしたからといって老後の金銭的不安が解消されるわけではないですね。
iDeCoは年々制度変更がなされています。昨年の制度改正についてはこちらで記事にしています。