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【貧乏人の経済学】貧困問題は経済的援助で解決することはない

貧乏人の経済学

 ノーベル経済学賞を受賞したアビジット・バナジーとエスター・デュフロが2012年に出版した書籍に「貧乏人の経済学」があります。

 全10章から構成されており、主な内容は途上国の貧困問題を研究したものです。

 経済的に発展を遂げている先進国は途上国の貧困問題を解決するため、様々な援助を行っています。

 ・資金や物資の援助

 ・経済市場へ参加しやすい環境の整備

 ・インフラ整備などの技術的支援

 援助の例を挙げるとこのようなことですね。

 貧乏人の経済学は、これらの援助が本当に途上国の貧困問題解決に寄与しているのか、ということを実証実験と分析によって明らかにしています。

 書籍自体は2012年に発行されており、経済的に見て現環境下にそぐわない箇所はありますが、内容は非常に興味深く、個人の資産形成においても参考となる部分が多数ありました。

 ・貧困とはどのような状態か

 ・潜在能力を発揮できない状態

 今回はこの2点を中心に貧乏人の経済学について触れてみたいと思います。

貧困とはどのような状態か

 貧困と聞いて誰もが思い浮かべる状況というのは「お金がない」という状態です。

 ・最低限の食事すらできない

 ・生活必需品を購入することができない

 このような状況ですね。そして、途上国においてこのような人々というのは確実に存在します。

 そして、このお金がない状態を解決するために先進国が主に行っている援助のひとつが経済的支援です。

 経済的支援を分かりやすく言えば、お金をばらまく、ということですね。

 ・主食を誰しもが購入することができない

 ・最低限のインフラ整備すらままならない

 このようなことは、お金に余裕のある国が無い国に対してお金をばらまけば解決するように思われていますが、実際はそう単純ではないということです。

 もちろん、お金をばらまくことは一定の効果はあるものの、貧困問題における決定的な解決策にはなっていません。

出典 

第5回 発展途上国と先進国を分ける基準って何ですか?《おしえて!知りたい!途上国と社会》(熊谷 聡) - アジア経済研究所

 この世界地図からわかるとおり、先進国はまだまだ少なく、世界において発展途上の国は非常に多いということです。

 経済的援助によって貧困から立ち直った国もありますが、それが経済的援助によるものなのか、援助を受けた側の自立心から立ち直ったのか判断するのは難しいということです。

 ・途上国に経済的援助をすればするほど貧困は解決する

 このような単純なことではないということです。その原因のひとつが援助されたお金を貧困解決以外に使ってしまうことにあるのですね。

貧困層に食費助成を行うとどうなるか

 貧乏人の経済学の中で触れられていたのが、貧困層への食費の経済的援助がどのようになるのかということです。

 ・貧困層に米や麦などの主食を十分に購入できるだけの食費助成が行われる

 ・貧困世帯が飢えることがなくなる

 ・貧困問題が解決する

 貧困層への食費の経済的援助はこのように考えられていましたが、実際には貧困問題が解決することはありませんでした。

 実際には、食費助成されても主食の購入量が増えることはなかったということです。

 食費助成のおかげで浮いたお金は、主食の購入に使われるのではなく、肉や魚といった高価で美味しいものを購入する費用に充てられていたことが調査でわかりました。

 主食で栄養を摂取することよりも、味覚的に優れたものを購入する資金として使われたということです。

 これは、途上国の例ですが先進国で生活する日本人にとっても同じ事が当てはまります。

 例を挙げると、令和2年4月に新型コロナウイルス感染症緊急経済対策によって行われた1人あたり10万円の特別定額給付金の支給です。

出典 特別定額給付10万円、その使途と効果 宮木由貴子 第一生命経済研究所

 第一生命経済研究所が公表している資料によると、新型コロナウイルス関連の10万円給付は趣味や娯楽に使う方が少なからずいることがわかります。

 もちろん、給付金を趣味や娯楽に使うことは悪いことではありませんが、新型コロナウイルスによって、生活が困窮しているにも関わらず趣味や娯楽に使っている世帯は一定数存在していると考えるのが自然です。

 ・収入に見合わない浪費

 ・収入に見合わない贅沢

 このような貧困層への食費助成と同じような使い方をしているということです。

 むしろ、ものや選択肢が豊富にある先進国の方がこのような傾向が強いのかもしれません。

 そして、このようなことから考えられることは、貧困とはお金の多寡と必ずしも同じではないということです。

 貧乏人の経済学における貧困とはどのような状態か、ということを表すのであれば、福祉の経済学研究によって、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティアセンが定義した「潜在能力を発揮できない状態」が最も当てはまるということです。

潜在能力を発揮できない状態

 個人や世帯の金銭的問題といった非常にミクロな視点からみても、潜在能力を発揮できない状態で資産形成をすることは非常に難しいということは、誰しもが感じることですね。

 ・常に金銭的に不足を感じている

 ・浪費、贅沢費が常に足りない

 このような状態というのは、どれだけお金を持っていようが解決することはありません。年収が5,000万円あろうが、貯金が10億円あろうが満たされることはないということです。

 そして、このような状態というのが正に潜在的能力を発揮することができない状態であるということです。

 思考は判断の多くをお金に関することについて費やしてしまうからですね。

 逆に言えば、このような状態を解決することができるのであれば、潜在能力を発揮する環境を作り出すことができるということです。

 そして、潜在能力を発揮できる状態にするために必要なことは、お金を増やすことばかりではないですね。

 ・収入に見合った金銭感覚を持つ

 ・生活に困らないような貯蓄額を保有しておく

 ・収入の範囲内で贅沢や浪費を楽しむ

 このようなお金を増やすこと以外の気持ちや考え方が非常に大切だということです。そして、このような気持ちや考え方を持つことが貧困を抜け出すために非常に大切であるということです。

貧乏とはお金が多ければ解決するものではない。

YOHの考え

 今回はノーベル経済学賞を受賞したアビジット・バナジーとエスター・デュフロが2012年に出版した書籍に「貧乏人の経済学」の内容を基に、お金がないことについて考えてみました。

 貧困問題というのはお金を与えれば解決すると考えられがちですが、実際にはそのような単純なことではないということです。

 それは、先進国が途上国にしている経済的援助を見ても明らかです。

 お金だけをじゃぶじゃぶと与えたからといって、途上国の貧困問題に関してはそれほどの効果はないということです。

 そして、それは資産形成をしている世帯についても同じであるということです。

 ・親から経済的援助を受ける

 ・相続で多額の遺産を受け取る

 貧困世帯にこのようなことがあったとしても、貧困層から抜け出すための資産形成をすることは難しいということです。

 資産形成をしていくには、お金に対する考え方をしっかりと持つことが大切だということです。

 もちろん、最初からお金があれば資産形成において優位な状況からスタートすることができることは明らかです。

 ・年収が高い

 ・親が資産家である

 金銭的に優位な状況とはこのような状況です。しかし、これらを兼ね備えているから資産形成ができるということではないですね。

 年収が高いにも関わらず貯蓄が全くない世帯というのはありふれているということです。

 その最も大きな要因のひとつがお金に対する考え方をしっかりと持つことができていないということです。

 お金に対する考え方といえばややこしく感じるかもしませんが、大切なことは非常にシンプルです。

 ・収入の範囲内で生活をする

 ・収入に見合った贅沢や浪費をする

 ・一定額の貯蓄を保有しておく

 このようなことでよいということです。ここに余裕があるのであれば、株式投資などの資産運用を付け加えてもよいのでしょうが、万人が取り組む必要があるのかと考えるとそうではないですね。

 基本をしっかりと押さえることが資産形成においては何よりも大切であるということです。

 貧困問題というのはお金が多ければ解決するものではありません。お金が入れば一時的に豊かに生活することはできますが、それが長期的に続くかといえばそうではないということです。

 資産形成をしていくために入ってくるお金を増やすことは非常に大切です。しかし、それよりも大切なことがある、というのが私の考えです。

 ご覧いただきありがとうございました。

 お金に関する書籍で非常に読みやすいのが「敗者のゲーム」ですね。敗者のゲームについてはこちらで記事にしています。

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 私がお金に関する書籍で最もおすすめするのは「となりの億万長者」です。

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 金持ち父さん貧乏父さんは有名すぎるほど有名な書籍ですね。

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