ソフィアホールディングスの株主優待新設
新NISAがはじまって1ヶ月が経過しますが、よく目にするのが上場企業による株主優待制度の新設や拡充の発表です。
ここ最近で大きな話題となったのが、2024年1月31日に調剤薬局企業やインターネット事業を主体としている株式会社ソフィアフォールディングスが発表した株主優待制度の新設です。
新設された株主優待制度は静岡県にある洋菓子を製造販売をするキルフェボンのギフトカードなどを贈呈するという内容です。
保有株式数によって株主優待制度の差はありますが、100株保有していれば、キルフェボンのギフト券を年間6,000円分(3,000円分を年2回)贈呈されることとなっています。
この株主優待が非常に魅力的な理由は2つあります。
・キルフェボンの洋菓子が高級で人気であること
・ソフィアホールディングスの株価が比較的低価格(1株800円ほど)であること
この2つを考えると、ソフィアホールディングスが2024年1月に新設した株主優待制度は贈呈される商品、優待利回りの面から見てお得であるということです。
実際に、この株主優待の影響力は非常に大きく、ソフィアホールディングスの株価は短期間に大きく上昇することになりました。
株主優待制度の発表前には1株800円付近だった株価が発表後には一時取引中止になるなどストップ高となるほど大きく上昇し、2024年2月8日時点では1株2,000円近くとなっています。
私は、この株価上昇については新NISAの影響があると考えています。
・新NISAで株式投資を開始した
・株式投資初心者
このような方がソフィアホールディングスの新設された株主優待を魅力的に感じて購入した影響が少なからずあると考えています。
しかし、新NISAをこのような使い方をしてしまうと資産形成は難しいものになってしまうというのが私の考えです。
・株主優待制度について
・新NISAと株主優待投資について
今回はこの2点を中心に株主優待制度について考えてみたいと思います。
株主優待制度について
株主優待制度は日本独自の制度といってよいほど、他国の株式会社では行われていません。
・一定数量以上の自社の株式を保有している
・権利確定日に株式を保有している
このような条件を満たしている株主は、その株式会社独自の優待品を受け取ることができる制度です。投資として大変人気がありますね。
旧東証上場企業の内、約4割の1300社近くが株主優待制度を取りいれていることから、多くの企業が大変力を入れていることが分かります。
・自社の製品
・自社の商品券
・QUOカード
・カタログギフト
株主優待品としては、このようなものが多いですね。配当金と同時にもらえることから、お得感があり、株主優待品目的で株式を選定している方も少なからずおられます。
しかし、株主優待制度にはお得なことばかりではなくデメリットも少なからずあります。
株主優待制度のデメリット
配当金と同様に商品などがもらえて、利益還元される株主優待制度ですが、投資家にとっては不都合な点があります。
・株主平等原則に反している
・株主の意思が入り込む余地がない
主に、投資家が株主優待制度に対して不満に感じているのはこの2点です。
株主平等原則に反している
株主が株式会社から利益享受できるのは、株主平等原則があるからです。
会社法109条で「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に扱わなければならない。」と規定されています。
つまり、同じだけの株式数を保有していれば、同じ権利が与えられなければならないということです。
配当金や売買益などは正に株主平等原則に則ったものですね。保有株式数に応じた配当金や売買益が受け取れるからです。
しかし、株主優待制度は株主平等原則から見ると、限りなくグレーです。
冒頭で例に挙げたソフィアホールディングスから新設された株主優待の内容を見てもそれは明らかです。
株主平等原則に則れば、保有株式数が多ければそれだけ多くの利益を受ける必要がありますが、ソフィアホールディングスの株主優待制度はそうとは言い難いですね。
・100株と499株保有の株主が同様の優待内容
このようなことは株主平等原則から見ればグレーだということです。
配当金であれば、株式保有数に応じて還元される金額が増えていきますが、株主優待は必ずしもそうではないということです。
このようなことからも、株主優待制度は株主平等原則から考えると、平等とは言い難いということです。
そして、株主優待のデメリットとして挙げられるのが制度の廃止や変更は企業に一任されており、簡単にすることができるということです。
制度の廃止や変更は簡単に行うことができる
株主優待制度は、株主の利益享受という点では配当金と同じなのですが、性質は大きく異なっています。
・配当金 株主総会の決議事項
・株主優待 取締役会の決議事項
配当金と株主優待にはこのような違いがあります。配当金は株主に主導権がありますが、株主優待は株主がどうすることもできないのですね。
株主優待制度の廃止や変更は他の企業でも毎年のように発生しています。
・株主優待をもらえる保有株式数が100株から300株になった
・株主優待の商品が変わった
・株主優待制度をやめた
配当金でも減配はありますが、それは企業業績がベースです。
・業績がよかったから増配する
・業績が悪かったので減配する
・業績が悪かったが配当性向は維持する
このような理由があるからこそ、株主は減配を受け入れることができるのですが、株主優待には一貫性がありません。株主優待は企業の業績が良くとも悪くとも変わる可能性があるということです。
YOHの考え
今回は2024年1月31日に株式会社ソフィアホールディングスに新設された株主優待を例に株主優待制度について触れてみました。
ソフィアホールディングスが新設した株主優待制度の影響は非常に大きく、株価は1週間ほどで2倍以上上昇することとなりました。
それほど、新設された株主優待制度が魅力的であったということです。
しかし、ソフィアホールディングスが新設した株主優待制度が今後も長期的に継続されるかを考えると、難しいというのが私の印象です。
その理由はソフィアホールディングスは調剤薬局や通信事業といった本業で利益を出せておらず、企業の状態が芳しいものではないからですね。
・2024年3月期の当期純利益が赤字
・長期間配当を出せていない(今後も無配当が予想されている)
・自己資本比率が低い(28.6%)
決算書をザックリと見ただけでもこのようなことが分かります。
投資家によって投資方法や考え方は様々ですが、株主優待制度が魅力的であっても自分のお金を預けるには心もとないですね。
さらに、ソフィアホールディングスと株主優待制度のキルフェボンには事業内容を含めてそれほど関連性が見られません。
ソフィアホールディングスはキルフェボン株式会社やその他企業の力添えによって株主優待制度を新設できたとしていますが、自社の事業と関連性が低い株主優待制度は企業にとってもそれほど意味が無い取り組みです。
・株主優待制度の内容が大盤振る舞い(100株で年間6,000円分の商品券)
・企業業績が芳しいものではない
・株主優待の贈呈品と本業に関連性がない
このようなことから考えても、ソフィアホールディングスの株主優待制度は長く続くものとは考えにくいということです。
そして、ソフィアホールディングスが株主優待制度を縮小させたり、制度自体を廃止してしまえば、魅力というのは大きく減少することになります。
・無配当
・業績自体は芳しくなく、大きな成長性も期待できない
このようなことは過去のチャートを見ると容易に想像ができるということです。
冒頭でも触れたように、このソフィアホールディングスの株価上昇には新NISAの影響が少なからずあると私は考えています。
新NISAをどのように使うかは考え方や目標によって異なりますが、新NISAは株主優待投資とは相性が悪い制度設計がされています。
・利益(値上がり益や配当金)に課税されない
・損益通算できない
このようなことから、新NISAは配当金や長期保有の値上がり益で利益を出していく投資手法と相性がよく、株主優待投資とは相性が悪いということです。
無配当で株主還元を優待に特化したソフィアホールディングスの株式を新NISAで購入しても新NISAの旨みを活かすことはできないということです。
しかし、ソフィアホールディングスの株式を購入すること自体が株式投資として不適切かどうかはわかりません。
・業績が右肩上がりに上昇していく
・株主優待制度長期間継続して拡充されていく
このように考えるのであれば、投資対象としてもよいということです。しかし、株主優待制度に魅力を感じて投資をするのであれば、新NISAではなく、特定口座で購入する必要がある株式です。
・新NISAの年間投資限度額360万円を使い切っている
・さらに株式投資をしたい
このような方で、ソフィアホールディングスの成長性と株主優待制度の長期的な継続を信じるのであれば、投資対象となる、そんな株式であると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
楽天グループも株主優待制度を変更して大きな話題となりましたね。それについてはこちらで記事にしています。
株主優待投資は非常に難しい投資手法です。成功させるためには4つの前提条件をクリアする必要があります。
私自身は株主優待投資はおすすめしないですね。少ない資金では自己の利益を最大化しにくいことがその理由です。