株主優待制度
日本独自の株主への利益還元制度として株主優待があります。
・一定数量以上の自社の株式を保有している
・権利確定日に株式を保有している
このような条件を満たしている株主は、その株式会社独自の優待品を受け取ることができる制度ですね。投資として大変人気がありますね。
上場企業の内、約4割の1300社近くが株主優待制度を取りいれていることから、多くの企業が大変力を入れていることが分かります。
・自社の製品
・自社の商品券
・QUOカード
・カタログギフト
株主優待品としては、このようなものが多いですね。配当金と同時にもらえることから、お得感があり、株主優待品目的で株式を選定している方も少なからずおられますね。
しかし、インデックス投資をしている投資家の中には、株主優待を快く思われていない方も少なからずおられます。その理由としては、株主優待制度は株主平等原則の観点から見ればよい制度とは言い難いからですね。
・株主優待のデメリット
・株主平等原則
・株主優待投資はよいものなのか
今回はこの3点について考えてみたいと思います。
株主優待制度のデメリット
配当金と同様に商品などがもらえて、利益還元される株主優待制度ですが、投資家にとって不都合な点があります。
・株主平等原則に反している
・株主の意思が入り込む余地がない
主に、投資家が株主優待制度に対して不満に感じているのはこの2点です。順番に触れていきます。
株主平等原則に反している
投資家が株主優待制度に対して不満を感じている1つ目は「株主平等原則に反している」ということです。
株主が株式会社から利益享受できるのは、株主平等原則があるからです。会社法109条で「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に扱わなければならない。」と規定されています。
つまり、同じだけの株式数を保有していれば、同じ権利が与えられなければならないということです。配当金や売買益などは正に株主平等原則に則ったものですね。保有株式数に応じた配当金や売買益が受け取れるからです。
しかし、株主優待制度は株主平等原則から見ると、限りなくグレーですね。
株主優待制度で非常に人気のあるビックカメラの株主優待ですが、保有株式数に応じて平等に扱われているとは言い難いですね。
・100株保有 2,000円の商品券
・300株保有 2,000円の商品券
・500株保有 3,000円の商品券
2月の株主優待で比較すると、100株保有の株主と300株保有の株主は同じ額の商品券をもらうことになります。これは、株式保有数に応じて平等に扱われているとは言い難いですね。
さらに、保有期間に応じてもらえる商品券の額が増額します。株主平等原則は、株式の内容と数によって平等に扱われる必要があるのですが、保有期間については言及されていません。
株主優待制度は株主平等原則から考えると、平等とは言い難いのですね。
株主の意思が入り込む余地がない
投資家が株主優待制度に対して不満を感じている2つ目は「株主の意思が入り込む余地がない」ということです。
株主優待制度は、株主の利益享受という点では配当金と同じなのですが、性質は大きく異なっています。
・配当金 株主総会の決議事項
・株主優待 取締役会の決議事項
配当金と株主優待にはこのような違いがあります。配当金は株主に主導権がありますが、株主優待は株主がどうすることもできないのですね。
今年で言えば、株主優待制度として非常に人気のあったオリックスが株主優待制度の廃止を発表しました。
・今後は配当金という形で株主還元を行っていく
・代わりに2024年3月をもってカタログギフトを廃止する
株主優待に関してはこのように取締役会の決議事項で決まったため、オリックスとしてはこのように一方的に決めてよいということです。そして、このようなことが他の企業でも毎年のように発生しています。
・株主優待をもらえる保有株式数が100株から300株になった
・株主優待の商品が変わった
・株主優待制度をやめた
配当金でも減配はありますが、それは企業業績がベースです。
・業績がよかったから増配する
・業績が悪かったので減配する
・業績が悪かったが配当性向は維持する
このような理由があるからこそ、株主は減配を受け入れることができるのですが、株主優待には一貫性がありません。株主優待は企業の業績が良くとも悪くとも変わる可能性があるということです。
YOHの考え
私はインデックス投資をメインにしていますが、株主優待制度がある株式もいくつか保有しています。
・KDDI
・オリックス
・ビックカメラ
・エディオン
このあたりは株主優待目的で保有していると言ってよい銘柄ですね。毎年、株主優待を楽しみにしています。なので、株主優待制度については、概ね肯定的です。しかし、配当金と比較すると効率の悪さがあると考えています。
・価値の上昇し続けるものに資産投下する
この投資の原則に当てはまっているかと考えれば、そうではないからですね。株主優待制度はいつまでも享受することができる利益還元システムではありません。明らかに先細りすることが目に見えている制度だということです。
さらに、東証再編に伴って、プライムへの上場基準が見直されたことにより、株主優待制度はますます落ち目の制度になりつつあるということです。そういったことを踏まえると、株主優待投資というのは、時代のトレンドからは外れているということです。
株主優待が全ての会社から無くなるとは思いませんが、そこにリソースを割く企業が減っていくことは間違いありません。そして、それは株主には止めることができないということです。
私は株主優待制度にはある程度の魅力は感じていますが、それはお小遣い的要素があるということに対してのみだということです。
・配当金・・・証券口座に振り込まれて利益享受できた実感がない
・株主優待・・・郵送でダイレクトに手にすることができて、利益享受の実感がある
株主優待は、このようなお小遣い的要素があり、純粋な浪費に使うことができるからですね。
株主優待投資をメインにされている投資家も少なからずおられますが、利益を上げておられる方は非常に勉強熱心で知識が豊富です。そのことから考えても、株主優待投資派上級者向けの投資だと私は考えています。
・誰にでも取り組むことができる
・毎年形になる利益を得ることができる
株主優待にはこのようなメリットがありますが、それで長期的に資産形成できるかと考えれば、そうではないということです。
投資の基本はトレンドに乗って価値の上がるものに資産投下することです。そのことからも、株主優待投資は投資の本質からはやや外れたところにあると認識しておいた方がよいということです。
・投資の中の遊びの部分として楽しむ
・あくまでも配当金や値上がり益のオマケ
株主優待については、このようなスタンスがちょうどよいと私は考えています。ご覧いただきありがとうございました。
投資の原則は長期的に価値の上昇するものに資産投下することです。そのことが分かりやすく解説されているのが、敗者のリスクです。
資産形成していくのに株主優待投資よりも適しているのは全世界株式インデックスファンドなどに資産投下する投資手法です。しかし、そのような投資手法にもデメリットは存在します。
投資が趣味の方は株主優待投資などは向いているかもしてません。しかし、そうでは無い人は違った投資手法を取ればよいということです。