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【実際の税負担増加は0万円~20万円】退職所得控除控除の見直しについて

退職所得控除の見直し

 日本政府の税金への政策として一環しているのはアメとムチの使い分けです。

 ・税制優遇制度を創設する

 ・現在の税制を見直して課税をする

 このような政策を推し進めているということです。税制優遇制度の最たるもののひとつが新しいNISAです。

 一方で税制を見直して課税する中で行われる可能性が極めて高いのが退職所得控除の見直しです。

 現在、退職所得控除の見直しは様々な媒体で触れられて話題になっていますが、実際にどれぐらいの課税額になるのか、といった具体的な事柄に関しては触れられていません。

 ・退職金にまで課税するなんてやりすぎだ

 ・老後生活が立ち行かなくなる

 このような意見もあがりますが、実際に大きく関係するのはごく一部だというのが私の印象です。

 ずばり言ってしまえば、大多数の庶民にとってはそれほど影響がないということです。

 ・退職所得控除とは

 ・検討されている退職所得控除の中身

 ・退職所得控除が見直されればどれぐらいの増税になるのか

 今回は退職所得控除についてこの3点を中心に触れてみたいと思います。

退職所得控除とは

 現行の退職所得控除について軽く触れておきます。退職所得控除を非常にざっくりと説明すれば、退職金にかかる税負担を大きく減らすことができる控除です。

 ・年収800万円

 ・退職金1,200万円

 定年退職時にこのようなケースの場合、合計金額の2000万円がその年の収入となり、課税されることになると、所得税と住民税の税負担は非常に大きなものとなります。

 そのため、退職金のような収入に対しては、特別に大きく控除を使うことができるのが退職控除です。

出典 

No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁

 この表を見てわかる通り、勤続年数が20年を超えると年間の退職所得控除金額が大きくなっていることがわかります。

 ・勤続20年・・・退職所得控除800万円

 ・勤続30年・・・退職所得控除1500万円

 このように、勤続年数が20年以上になると退職所得控除が大きく上がるということです。税制調査会で見直しが行われているのは、この20年を超えた部分の退職所得控除を一律にするということです。

検討されている退職所得控除の中身

 この退職所得控除で見直しが検討されているのは、勤続年数20年以上で控除額が増加するところですね。

 ・現行 → 20年を超えた後からは控除額が年間70万円になる

 ・見直し → 20年を超えた部分に関しても控除額は年間40万円に据え置く

 このような見直しが検討されているということです。

 40年間同じ職場で勤務したケースを例に考えてみます。

 ・現行 20年間×40万円+20年間×70万円=2,200万円

 ・見直し 40年間×40万円=1,600万円

 モデルケースで考えてみると、現行であれば控除額が2,200万円ですが、見直しが行われれば控除額は1,600万円になるということです。

退職所得控除が見直されればどれぐらいの増税になるのか

 退職所得控除の見直しが行われて控除額が少なくなって大きな影響を受けるのは退職金が非常に多い方ですね。

 ・大企業の役員

 ・退職金が3,000万円ある

 このような方は著しく影響を受けることになります。しかし、このように高額な退職金を受給するのはごく一部で多くの会社員や公務員はそれほどの額を受給することはありません。

 上場企業や地方公務員では40年間働き続けて、1,500万円~1,800万円ほどがボリュームゾーンになりますね。最も多いケースである退職金が1,800万円の場合の課税額を確認してみます。

 ・勤続年数40年(22歳~62歳まで就労)

 ・課税所得 400万円(年収700~800万円)

 ・退職金 1,800万円

 このような条件で確認していきます。

 見直し前

 ・1,800万円(退職金)-2,200万円=-400万円(0円)

 ・400万円(課税所得)+0円=400万円(合計課税所得)

 ・400万円×20%(所得税率)=80万円

 見直し後

 ・1,800万円(退職金)-1,600万円(見直された退職所得控除)=200万円

 ・200万円×1/2=100万円

 ・400万円(課税所得)+100万円(退職金課税額)=500万円(合計課税所得)

 ・500万円×20%(所得税率)=100万円(所得税率の控除額は割愛)

 現行の退職所得控除と見直し後を比較するとこのようになります。退職金が1,800万円、所得税率20%のケースで20万円の増税になるということです。

 これぐらいの金額が多くの会社員や公務員に当てはまるということです。

時代の変化によって制度自体を変えていくことは必要ではあるが・・・

YOHの考え

 今回は見直しが行われる退職所得控除について考えてみました。

 ・退職金に課税するなんてとんでもない

 ・退職金への課税額が大きくなると老後生活が立ち行かなくなる

 退職所得控除の見直しについてこのような意見がありますが、実際の負担額の増加具合を確認すると20万円ほどに落ち着く、というのがボリュームゾーンだということです。

 ・数百万円少なくなる

 ・老後生活に影響を与えるほどの金額

 このようなことにはならないということです。もちろん、退職金全てが課税対象になることはあり得ないということです。そうなってしまうと、数百万円は課税されることになるからですね。

 この退職所得控除の見直しについて、多くの批判が出ているのは、課税金額の問題ではなく、政府による説明が的を射ていないことですね。

 ・転職しにくい環境を作っている

 ・労働移動を阻害している

 政府は退職所得控除の見直しについてこのような理由を並べていますが、多くの労働者はこれについて納得がいっていないということです。

 もしこのような理由で退職所得控除の見直しを行いたいのであれば、20年以下の部分を年間70万円にすればよいからですね。

 しかし、実際のところ退職所得控除の見直しは多くの人にとっては影響がないだろうと考えています。その理由は、給与所得者の退職金額というのは下がり続けているからですね。

出典 

なぜ今、資産運用が必要?|ロボアドバイザーならWealthNavi(ウェルスナビ)

 20年前には2,000万円近くあった退職金は現在では1,600万円前後になっています。そして、退職金はさらに下がり続けていくということです。

 ・40年間勤務して1,000万円~1,200万円

 現在の働き盛りの年代が定年退職をする20年以上先には多くてこれぐらいの水準になっているということです。

 退職金が1,200万円であれば、現在検討されている退職所得控除の見直しが行われても、退職所得控除枠内に退職金が納まるため、影響はないということです。

 ・退職金が1,800万円支給されても増税額は20万円(課税所得20%の場合)

 ・退職金1,600万円以下であれば影響を受けることはない

 40年間同じ場所に勤務してこのような影響があるのが現在検討されている退職所得控除の見直しです。

 もちろん、20万円というのは小さな金額ではないですし、退職所得控除のさらなる見直しが可能性はもちろんあります。

 しかし、老後生活に多大な影響を及ぼすのかと考えると、そうではないというのが私の考えです。

 ・退職金に頼ることのない老後設計をしておく

 ・退職金ありきの借金をしない

 このような考えをもって、人生設計をしていくことが大切だと私は考えています。ご覧いただきありがとうございました。

 iDeCoをしている給与所得者にとって退職所得控除は抑えておくべき事柄ですね。受取時に大きな影響があります。

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 iDeCoの最も良い受取り方は退職所得控除を加味して受け取ることです。

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 昨年の税制調査会でも退職所得控除の見直しが議論されていることから、退職所得控除が見直されることは確実と考えておいてよいですね。

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