児童手当の拡充と扶養控除の縮小
12月と言えば、来年度の税制改正大綱が閣議決定され公表される時期です。
その内容の一部がマスメディアによって、先行報道されており、先日報道されたのが、「児童手当の拡充と扶養控除の縮小」です。
岸田内閣は政権発足当初から、異次元の少子化対策というキャッチフレーズを掲げて、子育て支援と少子対策を主要政策のひとつとしています。
・子育ての経済的支援
・全てのこども、子育て世帯を対象とする支援の拡充
・共働き、共育ての推進
・安定財源確保と予算倍増
岸田内閣は子育て支援と少子化対策においては、この4つを政策の柱として掲げており、今回の児童手当の拡充というのは、子育ての経済的支援に当たるものですね。
・所得制限の撤廃
・支援期間を高校生にまで拡大
この2つを実行することが、来年度の税制改正大綱に盛り込まれる児童手当の拡充となります。
しかし、この児童手当の拡充に関しては、どちらかと言えばマイナスの印象を受けるような報道がなされています。
その理由は、扶養控除の縮小をセットに行うからです。
扶養控除の縮小額はこのようになっています。
合計で34万円とかなり大きな金額ですね。
・児童手当で支給する金額は増加させる
・扶養控除の縮小によって、納税額が増える
これでは、しっかりとして子育て支援と少子化対策になっていないと考えられるからです。
・児童手当の拡充によって増加する金額
・扶養控除縮小によって増加する納税額
・実際の子育て世帯が感じること
今回は、児童手当の拡充と扶養控除の縮小について、この3点を中心に触れてみたいと思います。
児童手当の拡充によって増加する金額
まず、今回の児童手当拡充でどれだけ支給金額が増加するかを確認するため、現行の児童手当について軽く触れておきます。
・中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)支給
・3歳未満が1.5万円/月、3歳~中学校卒業までが1万円/月
・第3子以降は小学校卒業までが1.5万円/月、それ以降は1万円/月(2024年10月からは3万円/月)
・高所得者の場合は0.5万円/月
児童手当の大まかな概要はこのようになっています。支給は年間3回(6月、10月、2月)に4カ月分が銀行口座に振り込まれることになります。
児童手当の総額は1人あたり198万円になります。(第3子以降は252万円)
子育ては非常にお金がかかるので、国がそれを支援してくれる制度ということです。しかし、一定の所得水準以上の方は支給額が減額されてしまいます。
収入額はあくまでも目安ですが、課税所得が622万円以上ならば児童手当は月0.5万円に減額される可能性があるということです。さらに、2022年10月からは夫婦いずれかの年収が1,200万円以上であれば、児童手当は支給対象外となります。
・夫 年収1,200万円 妻 専業主婦 → 児童手当給付対象外
・夫 年収800万円 妻 年収600万円 → 児童手当給付対象
世帯年収ではなく、収入が多い方が1,200万円を超えている場合なので、共働きで世帯年収が1,200万円以上でも支給対象となる場合があります。
現在の児童手当というのは、このようになっています。これを来年度の税制改正によって変更するということです。
・所得制限の撤廃
・支援期間を高校生にまで拡大
変更点はこの2つですね。
2つの変更点
まず、ひとつ目の所得制限が撤廃されることによって、課税所得によって段階的に児童手当が減額されることや、年収1,200万円以上であれば、支給対象外となることがなくなるということになります。
そして、2つ目に、支援期間が高校生にまで拡大されることによって、単純な総支給額が増加します。
・月1万円(年間12万円)
・総額36万円
※第3子は2024年10月から月3万円のため総額108万円の増加
こども一人当たりこれだけの金額が増加することになります。
・第1子、第2子・・・234万円
※第3子・・・360万円(単純に高校生期間の増額分108万円を加算しています)
児童手当の総支給額はこれだけの金額になるということです。
こどもの人数別に分けると以下のようになります。
・こども1人世帯・・・総額36万円
・こども2人世帯・・・総額72万円
・こども3人世帯・・・総額180万円
※以下、こどもが1人増えるごとに108万円の加算
ざっくりとですが、児童手当の拡充についてはこのように考えておけばよいですね。
これだけであれば、大きな子育て支援になるのですが、問題なのが、セットで行われる扶養控除の縮小です。
扶養控除縮小によって増加する納税額
扶養控除が縮小されるということは、課税所得が増加するため、所得税と住民税が増加することになります。
そして、所得税と住民税は超過累進課税のため、課税所得が多ければ多いほど、納める税金が多くなるということです。
そして、今回の扶養控除が縮小される金額は以下のようになります。
現行であれば、高校生のこども1人につき、所得税年間38万円、住民税年間33万円の控除を受けることができていたのが、所得税で年間13万円、住民税で年間21万円控除が減ることになります。
私の感覚としては、これは絶妙なラインであるという印象です。
・どのような年収(課税所得)であっても児童手当増加分を上回ることはない
・年収(課税所得)が低いほど、扶養控除縮小の影響が小さく、児童手当拡充の恩恵が大きい
このように調整されているということです。
YOHの考え
今回は、来年度の税制改正大綱に盛り込まれる、「児童手当の拡充と扶養控除の縮小」について触れてみました。
この「児童手当の拡充と扶養控除の縮小」というのは、扶養控除の縮小というワードが目を引くため、ネガティブな印象を受けますが、全ての子育て世帯にとっては、金銭的に追い風となる税制改正であるということです。
・扶養控除の縮小によって納税額は増加する
・納税額を上回るだけの児童手当が支給される
このような結果となるからですね。
しかし、岸田内閣が掲げている異次元の少子化対策となっているかと言えばそうとは言い難いですね。
・子育ての経済的支援
・全てのこども、子育て世帯を対象とする支援の拡充
・共働き、共育ての推進
・安定財源確保と予算倍増
岸田内閣は子育て支援と少子化対策においては、この4つを政策の柱として掲げていますが、扶養控除の縮小というのは、この政策の逆を行くものであるからです。
実際のところ、一般的な世帯で児童手当が年間12万円(総額36万円)増加しても、扶養控除の縮小によって、納税額が増えれば、実質的な増加額は年間数万円となります。
・年収600万円(課税所得330万円)
・13万円(所得控除の差)×20%=2.6万円
・21万円(住民税の差)×10%=2.1万円
・合計4.7万円
課税所得が330万円の世帯であれば、扶養控除が縮小されることによって、現行よりも、年間4.7万円納税額が増加することになります。
・児童手当 年間12万円支給
・納税額 年間4.7万円増加
・実質増加金額 年間7.3万円
平均的な年収の世帯でこのように、年間7.3万円ほどの増加になるということです。
※非常にざっくりとした計算です。
この年間7.3万円の増加というのをどのように考えるのかは世帯によって異なるでしょうが、これで子育ての支出が劇的に楽になるとは考えにくいですね。
私の世帯はこどもが3人いるため、今回の「児童手当の拡充と扶養控除の縮小」では、平均的な世帯よりも大きな影響を受けますが、そうではない世帯からすれば、望んでいる子育て支援とは言い難いということです。
日本全体に言えることですが、子育てや老後生活などを全て国の支援によって完結させることができる時代というのは終わりを迎えています。
・こどもを作って、平均的な教育を受けさせる
・仕事を頑張って、労働収入だけで豊かな生活を送る
このようなことが難しくなってきているということです。
普通に働いて普通の暮らしができなくなっている世の中になってきているのですね。
普通の生活を送るためには、自助努力が求められる時代になっているのだと私は考えています。
ご覧くいただきありがとうございました。
児童手当をインデックス投資に充てるとどれぐらいの金額になるのかについてはこちらで記事にしています。
奨学金返済と金利の考え方についてはこちらで記事にしています。
教育費は年々増加していますね。勉強とは非常に贅沢なものですね。