金融所得の課税
自民党総裁に岸田文雄氏が選出され、金融所得の増税を発言して投資家の中で話題になりました。
・株式譲渡益や配当所得の税率を上げる
・現行の20%から25%にする
岸田文雄氏は最近になって、金融所得の増税は当面行わないと発言しましたが、岸田文雄氏が格差是正を積極的に打ち出しています。増税については、いずれ行われることは間違いないでしょう。
金融所得の税率の推移
今は金融所得の税率は20.315%ですが、以前からこの税率だったわけではありません。実際に、1989年までは株式譲渡益は総合課税として取り扱われていました。
そこから、税制改革が進み、2003年から2013年までは特例措置として、軽減税率の10%が適応されましたが、2014年から20%に戻された経緯があります。
金融所得の増税は今にはじまったことではないのですね。そして、岸田文雄氏が打ち出したのが25%です。
1億円の壁
岸田文雄氏の金融所得増税の元になっているのが、1億円の壁と呼ばれるものですね。
所得1億円が税率のピークになっている
日本の所得税率は超過累進課税制度を取っており、所得が多ければ多いほど、納税額が多くなる仕組みです。
公務員やサラリーマンのボリュームゾーンである課税所得330万円~695万円なら税率は20%、課税所得が4,000万円以上なら税率は45%です。(これに住民税が10%加算されます)
しかし、所得1億円をピークとして、税率は減っているのですね。これは、金融所得の税率が一様に20.315%であることが原因と言われています。そして、このグラフから考えられることは多々あります。
・お金持ちは等しく株式投資をしている
・株式投資をせずに得られる所得は1億円が限界
株式投資無くしてお金を増やすのは難しいということですね。
税率が上がって困る人
金融所得の税率が20.315%から25%に上がって不利益を被る方は一定数おられます。
・課税所得900万円以上
・売買益メインで株式投資をしている
ここに該当する人にとっては増税は大きな問題です。しかし、ここに該当しない方にとっては、それほど大きな問題ではありません。
課税所得が900万円以下であれば、配当控除後の税率が25%を下回ります。課税所得900万円は年収にすると、個人差はありますが、大体1,200万円ほどになります。一般的な公務員・消防士には縁のない金額ですね。
そして、売買益メインの方にとっては非常に大きな問題ですね。単純に利益の5%が失われることになるからですね。
課税所得900万円以下の長期投資家にとっては痛手ではない
金融所得の税率が20.315%から25%にあがっても大きな痛手を負わないのは、課税所得900万円以下の長期投資家ですね。
・つみたてNISA
・iDeCo
課税所得が少ない(給料が少ない)投資家の長期投資のメインはこの2つです。つみたてNISAとiDeCoは非課税税度なので、税率がいくら上がろうと関係ありません。
・配当所得
そして、配当所得に関しては、配当控除で税率が上がった分は取り戻すことができます。
そのように考えると、税率が5%上がっても長期投資家はそれほど痛手を負うことはないのですね。
個人の属性によって合う合わないが投資にはある。属性を最大限に生かした投資をすることが大切。
公務員・消防士は長期投資をメインに
私は株式の資産運用については、米国株の積み立てと日本株の配当金をメインで行っています。当然ながら、課税所得900万円には遠く及びません。おそらくは到達することがない領域です。
課税所得900万円は多くの公務員・消防士が到達することが極めて難しい領域なのです。公務員・消防士が今回の税率について、不平不満を言うのは本質的ではありません。
税率が上がって不利益を被るのは、課税所得900万円以上、短期売買をメインとする投資家です。自分がこのエリアにいる場合は、何らかの対策を考える必要があります。
・さらに収入を増やす
・課税所得を減らす
すぐ思いつくようなこの対策は、公務員・消防士は取ることができないのですね。収入や税金をコントロールすることは公務員・消防士にできることではないのです。
・つみたてNISA
・iDeCo
これらの制度を国が打ち出していることからも、国が長期投資を推奨していることは明らかです。そして、公務員・消防士は長期投資と極めて相性がよいのです。
・安定した給料
・身分保障
この優位点を使って投資をすべきなのですね。30年間以上、安定したキャッシュフローが保障されている職業は民間営利企業にはありません。生涯で得られる金額は民間営利企業が上回っていても、毎月一定のキャッシュフローがあるのは、公務員・消防士最大の強みです。
そして、安定したキャッシュフローは長期投資の計画を立てやすいのです。入口、途中、出口の戦略がはっきりと決めることができるからですね。
金融所得の税率は遅かれ早かれ訪れます。その時を安心して迎えることができるのが、長期投資なのです。