話題のツイート
千代田区議候補の梅田なつき氏がツイートした内容が大きな話題となっています。
内容としては、年収300万円で4人の子育てをしているが余裕でできているというものです。
【波紋】区議候補の女性「千代田区在住4人子育て、年収300万で余裕」→『家計を開示しろ』と紛糾 #年収300万 #千代田区 https://t.co/Uef0XKvbGu
— 【最新まとめ】まとめまとめ (@matomame3) 2023年2月22日
私自身は地方都市で働いており、こどもを3人育てていますが、東京都内在住で年収300万円でこども4人を育てて余裕がある、というのはにわかには信じがたい内容です。
そして、梅田なつき氏のツイートを読み進めていくとわかるのですが、ミスリードを生みやすい形になっています。
そして、実際に年収300万円でこども4人を育てるというのは非常に難しいことがわかります。
年収300万円といっても、実際に手にすることができるお金というのはそれよりも少なくなるからです。
・年収300万円の手取りについて
・梅田なつき氏の実際の年収水準
・年収300万円でこども4人を育てることができるのか
今回はこの3点について考えてみたいと思います。
年収300万円の手取りについて
年収300万円といってもその全てを支給されるわけではありません。
・社会保険料
・所得税
・住民税
給与所得者である以上、これらを納める必要があるからですね。これらの金額を順番に確認していきます。
※今回は年収300万円の給与所得者のケースです。自営業やフリーランスでは若干異なります。
社会保険料
社会保険料は標準報酬月額と社会保険料率をかけ合わせることによって計算することができます。
年収300万円なら、標準報酬月額は6等級の24万円になります。そこに社会保険料率の18.3%をかけます。
・24万円 × 18.3% = 43,920円(約4.4万円)
給与所得者の場合、労使折半によって雇い主が半分を負担することになるので、この半分が社会保険料となります。
・4.4万円 ÷ 2 = 2.2万円
月に2.2万円の社会保険料を納めていることになるので、年間にすれば26.4万円となります。
所得税
次に所得税を確認していきます。所得税を計算するには課税所得を使う必要があります。
今回のケースであれば、こどもの配偶者控除は考えなくてもよいので、控除として使えるのは基礎控除と給与所得者控除です。(今回は医療費控除や小規模事業控除などは含まないものとします。)
・基礎控除 48万円
・給与所得者控除 300万円 × 30% + 8万円 = 98万円
・控除合計 146万円
・300万円 - 146万円 = 154万円
年収300万円の場合、基礎控除と給与所得者控除を引くとこのようになります。ここから、社会保険料控除を引いたものが課税所得となります。
・154万円 - 52.8万円(4.4万円×12カ月) = 101.2万円
101.2万円が課税所得となります。
所得税率は5%となるので、年収300万円の給与所得者の所得税は以下のようになります。
・101.2万円 × 5% + 0円 = 5.06万円
5.06万円が年間の所得税納税額となります。
住民税
住民税についても計算方法は所得税と同様です。所得税と異なる点は控除額と税率が異なっていることですね。
・基礎控除 43万円 ← 所得税では48万円
・給与所得者控除 98万円
・社会保険料控除 52.8万円
・控除額合計 193.8万円
・課税所得 300万円 - 193.8万円 = 106.2万円
年収300万円の場合、住民税の課税所得は106.2万円となります。住民税の税率は一律10%なので、住民税納税額は以下のようになります。
・106.2万円 × 10% = 10.6万円(均等割と調整控除は割愛しています)
年収300万円の手取り額
年収300万円の控除額が全て計算できたので、それぞれを確認してみます。
・社会保険料 26.4万円
・所得税 5.06万円
・住民税 10.6万円
・合計 42.06万円(約42万円)
これを300万円から引いた金額が年収300万円の給与所得者の手取り金額となります。
・300万円 - 42万円 = 258万円(年間手取)
・258万円 ÷ 12カ月 = 21.5万円
年収300万円の場合、月々に使える金額は21.5万円となります。
しかし、梅田なつき氏の月の支出額は28万円となっており、年収300万円で月に使える21.5万円とは大きく異なっています。
その理由としては、こどもの児童手当などを含めると使えるお金が増えるからですね。
児童手当について
児童手当について軽く触れておきます。
・中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)支給
・3歳未満が1.5万円/月、3歳~中学校卒業までが1万円/月
・第3子以降は小学校卒業までが1.5万円/月、それ以降は1万円/月
・高所得者の場合は0.5万円/月
児童手当の大まかな概要はこのようになっています。支給は年間3回(6月、10月、2月)に4カ月分が銀行口座に振り込まれることになります。
今回の梅田なつき氏のケースであれば、児童手当は4人分支給されていることになります。
東京都千代田区の児童手当を確認すると下の表のようになっています。多くの自治体と同水準ですね。
こどもの年齢はわからないので、1歳、3歳、5歳、7歳と仮定します。
・1歳 月1.5万円
・3歳 月1.5万円
・5歳 月1万円
・7歳 月1万円
・合計 5万円
こども4人であれば、月に5万円、年間で60万円の児童手当を受給できるということです。
梅田なつき氏の実際の年収水準
年収300万円の実際の手取りは258万円、これに児童手当60万円を足すと合計で318万円になります。
しかし、梅田なつき氏の年間支出は336万円となっているので、18万円が不足しています。
これについては、前述しているようにコロナ関連の給付金などでまかなっているということです。
・収入 376万円
・支出 358万円
・年間18万円の黒字
ツイッターで公開されている家計簿を見ると、2020年はこのようになっています。(2021年は収入が309万円、支出が349万円と40万円ほどの赤字となっています。)
このような状況を考えると、実際には年間手取り350万円ほどで生活をしているということですね。
手取り350万円というのは、控除額によって変わりますが、年収にすれば概ね450万円~460万円ほどと考えておいてよいですね。
・社会保険料 67万円
・所得税 11万円
・住民税 22万円
・合計 100万円
ザックリ計算ですが、年収450万円であれば、引かれるので手取りが350万円ほどになります。
・手取り収入 350万円
・年間支出 336万円
このような梅田なつき氏の生活というのは、年収450万円の世帯と同水準であるということです。
※今回は給与所得者であるケースで計算しています。自営業者などのケースでは異なります。
YOHの考え
今回は話題になっている千代田区議候補の梅田なつき氏のツイートについて考えてみました。
・東京都在住
・こども4人を育てている
・家賃は月13.5万円
このような世帯状況で年収300万円で余裕で生活ができているということですが、実際の年収300万円と比較すると大きく乖離していることがわかります。
年収300万円であれば、給与所得者の場合、年間の手取りは258万円になりますが、梅田なつき氏は手取りで350万円ほどを手にしています。
・児童手当
・コロナ関連給付金
このような形で年間100万円ほどを受給しており、実際には手取りが350万円ほどになります。
そして、手取り350万円というのは、年収で考えると450万円ほどと同水準であるということです。
実際に年収450万円(手取り350万円)で東京都内でこども4人を育てて生活するというのは、節約や我慢をしなければならないことに間違いはありません。
しかし、「年収300万円で子育て(4人)余裕でできてます。」というツイートは、あまりにもミスリードを生みやすい内容だということです。
・年収400万円でこども1人を育てるのにカツカツ
・年収500万円だがこどもをつくるか検討している
このような世帯というのはありふれています。
そして、このような梅田なつき氏のツイートが広がってしまえば、「年収400万円でこども1人を育てるのにカツカツ」と考えている世帯は複雑な気持ちになってしまうということです。
・自分の節約に対する努力が足りないのではないか
・自分の世帯は贅沢し過ぎなのではないか
梅田なつき氏のツイートを見れば、このような気持ちを持ってしまいかねないということです。
しかし、実際のキャッシュフローを確認すると、梅田なつき氏の世帯は節約世帯であることに間違いはありませんが、年収300万円のキャッシュフローとは大きく異なっているということです。
これをしっかりと認識しておく必要があるということです。
私自身は年収300万円でこども4人を育てることができるのかを考えると、非常に難しいと感じます。
私の世帯は妻と共働きでこども3人を育てていますが、生活に余裕があるとは言い難いですね。
・月々の生活費に困ることはない
・こどもの学費などを考えるともっとお金が必要
このような形で生活をしているということです。
先述していますが、手取り350万円ほどでこども4人を育てている梅田なつき氏は非常に家計管理を徹底しており、堅実な節約生活をしていることは明らかです。
しかし、年収300万円のキャッシュフローではないですし、余裕で生活できているとは言い難いというのが私の印象です。
実際には年収300万円で余裕で生活できているのではなく、年収450万円のキャッシュフローで堅実な節約生活をしている、というのが私の考えです。
ご覧いただきありがとうございました。
年収200万円での生活についてはこちらで記事にしています。私の独身時代の家計簿も公開しています。
社会保険料というのは非常に高額です。高所得者であれば生涯で1億円以上を納めることになります。
年収が低ければ住民税非課税世帯に該当します。どれくらいの年収であれば住民税非課税世帯に該当するのかはこちらで記事にしています。