所得倍増計画の目玉
現在の日本政府が取り組んでいる経済政策のキャッチフレーズが「新しい資本主義」です。
・人への投資
・科学技術、イノベーションへの投資
・スタートアップ投資
・グリーン、デジタルへの投資
新しい資本主義はこの4つを柱として掲げています。その中で大きく力を入れているのが、貯蓄から投資へのシフトです。
・日本の個人金融資産は2,000兆円
・このうち半分は貯蓄や現金で保有されている
・個人資産を流動させるために資産運用するための仕組みを作る
2024年からはじまる新しいNISAは正に、このような貯蓄から投資へお金の流れを変えるための大きな仕組みのひとつだということです。
実際に新しいNISAはその制度を上手に使うことができれば、老後のお金の問題を吹き飛ばしてしまうだけの力をもっています。
しかし、いくら新しいNISAが優れていたとしても、それを使うだけのお金が用意できなければ意味がありません。
そして、新しいNISAを使う資金を用立てるために貯蓄を使うというのは違和感がありますね。
・貯蓄を取り崩して株式投資をする
・本来貯蓄する金額を減らして株式投資をする
このようなことは、資産形成を難しいものにしてしまう可能性があるからです。
そのため、新しいNISAのような制度を使うのであれば、貯蓄ではなく別のところからお金を用立てる必要があります。
・個人金融資産の状況について
・貯蓄から投資へではなく、節約から投資へ
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
個人金融資産2,000兆円突破
昨年の3月17日に日本銀行が資産循環調査を公表した際に、個人金融資産保有額が2,000兆円を突破したとして大きなニュースになりました。
我らがパーミニスター、ミスターキシダも注目している2,000兆円です。
2005年度から見ても、個人金融資産は5~20兆円ずつ増え続けていましたが、2019~2020年度にかけてプラス50.1兆円と過去に例を見ないほど急激な増加をしています。主な原因はコロナ禍によるところが大きいですね。
・コロナ禍による消費の低迷
・コロナ禍による給付金
このような理由から、消費にお金が回らずに各世帯でお金がダブついている状況になっているということで
2,000兆円を突破した個人金融資産の内訳を見るとこのようになっています。
・預金、現金 1,100兆円
・債券 26兆円
・投資信託 86兆円
・株式 196兆円
・保険、年金、定期保証 539兆円(保険382兆円)
・その他 59兆円
・合計 2,005兆円
2022年9月時点での各金融資産の内訳はこのようになっています。2020年から比較して、各世帯で金融資産を保有している割合が増えているということです。次に構成比を確認していきます。
・預金、現金 54.8%
・債券 1.3%
・投資信託 4.3%
・株式 9.8%
・保険、年金、定期保証 26.9%
・その他 2.9%
各金融資産の内訳はこのようになっています。現預金が非常に大きなウエイトを占めていることが分かります。
次に、世帯における支出の確認をしていきます。
平均的な世帯の支出
総務省の家計調査によると、2022年(令和4年)3月の2人以上世帯における消費支出は月28.5万円となっています。
一方で国税庁による民間給与実態調査統計では令和2年度の平均給与は年間433万円となっています。正規雇用者が496万円、非正規雇用者が176万円ですね。
正規雇用者で考えると、手取りは400万円(月33.3万円)ほどが一般的です。
・月々の手取り 33.3万円
・月々の生活支出 28.5万円
・残金 4.8万円
非常にザックリとした計算になりますが、一般的な労働者世帯では月々4.8万円が世帯で捻出できる金額になるということです。
これを株式投資などの資産運用に回すことは非常に難しいですね。優先度としては貯蓄に回す必要があるからですね。
そして、月々4.8万円ずつ貯蓄したお金がある程度の金額になったから、株式投資に充てることができるかと言えばそうではないですね。
・急な支出
・将来の貯え
このような安全資産として、そのまま預貯金として持っておくのが一般的だということです。
貯蓄から投資へ、ではなく節約から投資へ
このように考えると、所得がいくらか上がり、新しいNISAが開始されたとしても、貯蓄から投資へと考えることは難しいですね。
そのため、株式投資などの資産形成をするには貯蓄からお金を用立てるのではなく、別のところから用立てる必要があります。
・貯蓄を減らしたくない
・株式投資などの資産運用で資産形成をしたい
このような要望を満たす必要があるということです。そして、この要望を満たすために必要なことは、「節約から投資へ」のお金の流れを作ることです。
一般的な会社員や公務員世帯はいきなり収入を増やすことはできません。
平均的な年収であれば、月々30万円~35万円の収入の中で、生活費、貯蓄、投資への資金を捻出する必要があります。
そして、最も捻出しやすいのは、生活費を削減すること、ずばり節約だということです。
総務省統計局の2022年11月の家計調査報告書によると、2人以上世帯の平均的な支出の内訳はこのようになっています。
居住地域や属性によって感じ方は異なるでしょうが、多すぎると感じる支出はありますね。
この中で、無駄な支出を最小限にするようにすれば、月に4万円~5万円を作り出すことは不可能ではありません。
・交通・通信 4.1万円
・その他の支出 4.5万円
私であれば、このあたりの支出は見直して節約を検討する必要があると考えます。
そのように、節約をして捻出したお金を株式投資をはじめとする資産運用に充てるのが、「節約から投資へ」の流れだということです。
YOHの考え
今回は新しい資本主義が掲げている「貯蓄から投資へ」について考えてみました。
個人金融資産が2,000兆円を超えて、その中で預貯金が1,000兆円以上を占めていますが、政府がどれだけ金融政策をしても「貯蓄から投資へ」という流れを作ることは難しいというのが私の印象です。
今の日本政府による政策の基本方針はばらまきと増税です。
・所得の多い世帯や支出のかからない世帯に税負担を増やす
・所得の低い世帯や支出が多くなる世帯にばらまく
このような形で富の再分配をしているということです。
しかし、政策によるばらまきで手取りが増えたからといって、投資にお金が流れるかと言えばそうではないということです。
・政府の後押しによって、手取りが20万円増加した
・増加した20万円を株式投資に使おう
このように考える人は少数だということです。やはり、大多数の人は貯蓄をするということですね。
株式投資をはじめとする資産運用の資金を捻出するためには、「資産運用をする」という強い動機が必要です。
・株式投資をして資産を増やしたい
・預貯金だけで資産形成をするのは不安
お金の有無ではなく、このような強い動機が必要だということです。そして、その動機を持って、お金を捻出しようとすれば、最も確実で簡単なのが「節約」だということです。
・株式投資をするために無駄な支出を減らす
・資産運用のために贅沢費を減らす
どれだけ個人金融資産が多くとも、預貯金を取り崩して資産運用をするのではなく、このように考えて節約によって捻出したお金で資産運用に取り組むのがよいということです。
「貯蓄から投資へ」ではなく、「節約から投資へ」というのが安全確実に資産形成できる手段のひとつであると私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
新しいNISAが話題になっていますが、資産形成では積極的な運用の前に抑えておくべきポイントがありますね。
資産形成において必要なことは、まずは100万円の貯金をすることです。それまではNISA、iDeCoなどは不要というのが私の考えです。
節約といっても、その方法は世帯によって千差万別です。大切なのは、生活の満足度を下げることなく無駄な支出を削減することです。