資産循環統計
日本銀行の調査統計局は国内の金融資産と負債の推移を記録して統計データとしてまとめています。四半期ごとに作成して、3カ月後に速報、6カ月後に確定報告を公表しています。それを、資産循環調査と言います。
2022年に公表された資産循環調査は2021年第4四半期(9月~12月)の速報ということですね。
・金融取引表
・金融資産、負債残高表
・調整表
この3つで構成されており、調査対象は大きく分けて企業、家計、政府に分かれています。公務員や会社員にとって、最も確認するべきは家計についてです。
・世帯の金融資産保有状況
・世帯の金融資産内訳
このようなことが実際の金額やパーセンテージで確認できるということです。ここから、平均的な世帯ではどのような金融資産をどのくらいの割合で保有しているかを推し量ることができるということです。
今回は、2021年第4四半期の資産循環統計から各世帯の平均的な金融資産保有状況について見て行きたいと思います。
個人金融資産2,000兆円突破
3月17日に日本銀行が資産循環調査を公表した際に、個人金融資産保有額が2,000兆円を突破したとして大きなニュースになりました。我らがパーミニスター、ミスターキシダも注目している2,000兆円です。
2005年度から見ても、個人金融資産は5~20兆円ずつ増え続けていましたが、2019~2020年度にかけてプラス50.1兆円と過去に例を見ないほど急激な増加をしています。主な原因はコロナ禍によるところが大きいですね。
・コロナ禍による消費の低迷
・コロナ禍による給付金
このような理由から、消費にお金が回らずに各世帯でお金がダブついている状況になっているということです。
2,000兆円を突破した個人金融資産の内訳を見るとこのようになっています。
・預金、現金 1092兆円(3.3%増)
・債券 26兆円(2.7%減)
・投資信託 94兆円(20.4%増)
・株式 212兆円(15.5%増)
・保険、年金、定期保証 540兆円(保険379兆円)(1%増)
・その他 60兆円(5.3%増)
各世帯で金融資産を保有している割合が増えているということです。次に構成比を確認していきます。
・預金、現金 54%
・債券 1.3%
・投資信託 4.7%
・株式 10.5%
・保険、年金、定期保証 26.7%
・その他 3%
各金融資産の内訳はこのようになっています。現預金が非常に大きなウエイトを占めていることが分かりますね。
2019年家計構造調査
2019年家計構造調査によると、1世帯あたりの金融資産保有額は1279.7万円となっています。この金額は現役労働者からするとかなり高い金額と言えます。
平均値1279万円というのはかなり多いというのが私の印象です。しかし、グラフの内訳を見ると、2極化していることがわかります。
・金融資産150万円未満 27.4%
・金融資産150万円~300万円 9.8%
・金融資産300万円~450万円 8.8%
このように、金融資産450万円以下の世帯が46%と約半数を占めています。一方で金融資産2,000万円以上を保有している世帯は約20%存在しているということです。その世帯が平均額を大きく押し上げているということです。
年齢や年収、家族構成などにもよりますが、公務員や会社員の金融資産保有額は中央値の650万円ほどあれば、資産形成で遅れを取っているということは無いということです。
資産循環統計と全国家計構造調査から見る平均的な世帯の金融資産保有額
資産循環統計と全国家計構造調査のデータから、平均的な世帯の金融資産保有額650万円をすると、平均的な世帯の金融資産保有額を確認することができます。
これが、平均的な世帯の金融資産保有額となるということです。これは、全体の数値を強引に各世帯の状況に当てはめて考えたものなので、実際の金融資産保有状況とは異なることもありますが、おおよその目安として頭に入れて置く必要がある数字ですね。
・預金、債券、保険年金(無リスク資産) 609万円 82%
・投資信託、株式、その他(リスク資産) 41万円 18%
リスク資産と無リスク資産の内訳を確認するとこのようになるということですね。
YOHの考え
日銀の2021年第4四半期の資産循環統計と家計構造調査から平均的な世帯の金融資産割合について考えてみました。
・リスク資産 20%
・無リスク資産 80%
大きく分けるとこのような資産配分が平均的な世帯のポートフォリオと考えてよいですね。具体的な金額で大切なのは預金額です。
金融資産合計が中央値の650万円である場合、預金額は351万円が平均的だということです。これは、極めて妥当な金額であると言えますね。
・生活費の1年分
・何かあった時の当座を凌ぐお金
このようなことを考えても、預金が300万円以上あるというのは生活していく上で非常に安心感があるということです。
・リスク資産 20%
・無リスク資産 80%
資産運用をする際は、この資産配分をベースにして考えるのがよいですね。リスク耐性が高い場合はリスク資産の割合を上げてもよいですし、耐性が低い場合はこの割合をキープしてポートフォリオを組むのがよいということです。
・リスク資産 0%
・無リスク資産 100%
公務員や会社員の中には、預金だけで資産形成している世帯も少なからずありますが、平均的なデータから見ても、それはよいポートフォリオとは言えないということです。
リスク耐性が極端に低い場合でもリスク資産を10~20%ほど組み込むことが健全なポートフォリオと言えるのですね。それ以上は自分の状況や考え方によるというのが私の考えです。
日銀の資産循環統計から見ても、現金100%のポートフォリオは逆にリスクになり得るということです。無リスク資産で安全を確保しつつ、リスク資産で資産増加を加速させていく。このようなポートフォリオを組みことが、平均的な世帯でも求められているということです。
ご覧いただきありがとうございました。
リスク資産として優れているのは、つみたてNISAですね。
iDeCoも無リスク資産としては非常に優れています。
リスク資産の積立は9.5万円が理想ですね。