新興国と先進国
株式投資をする地域は大きく2つに分けることができます。先進国と新興国ですね。
この他にも発展途上国があり、発展途上国と新興国は混同されがちですが、これらは区分けされています。新興国は発展途上国の中で急速な経済的発展を遂げつつある国のことです。
・発展途上国 → 新興国 → 先進国
国の経済発展の順序としてはこのようになるということです。
そして、先進国と新興国については、以下のように区分けされています。
・先進国・・・経済発展している国
・新興国・・・経済的に未成熟な国
新興国というと、治安が悪くインフラが整っていないような国を想像しがちですが、日本と生活水準がそれほど変わらないような国も多分に含まれています。
東南アジアを代表する国であるタイの都市部などがそうですね。
この写真はタイのバンコクですが、交通網は先進国と比較しても何ら遜色はなく、街並みも高層ビルが所狭しと建ち並んでいます。
日本を代表する都市である大阪と比較しても、バンコクの方が遥かに都市的です。
そして、このような発展途上国の現状を見ると興味が湧いてくるのが新興国への株式投資です。
・先進国よりも成長性がある
・中国やインドなど次世代の経済大国に先んじてに投資することができる
このような理由から、新興国への投資を検討される方は少なくないですね。
そこには、新興国の成長と合わせて資産投下が上手くいけば、先進国の投資よりも資産増加させることができるという考えがあるということです。
そして、資産投下するには新興国への理解は欠かすことができません。
・先進国や新興国の考え方について
・GDPについて
・新興国株式をポートフォリオに組み込むべきか
今回は、この3点を中心に新興国株式への投資について考えてみたいと思います。
先進国について
先進国とは経済的に発展しており、国民の生活水準が高い国のことですが捉え方は様々です。
どの国が先進国に属している、という明確な基準が無いのですね。
内閣府は、OECD(経済協力開発機構)に属しており、国民一人当たりGDPの高い国が先進国と考えています。
・OECDに加入している=他国を経済援助する力があり、国として経済発展している
ザックリと言えばこのように考えられているということですね。
経済産業省のホームページを確認すると、この38か国がOECDに加入しています。
しかし、他国を経済的に援助していても、メキシコやイスラエルは先進国と捉えるかどうかは人によって異なるところですね。
次に、GDPについて触れていきます。
GDPについて
国の経済指標として用いられるのに最もポピュラーなのはGDPです。
GDPとは、その国で物を買ったり、消費したりして使われたお金の統計です。
GDPが増えていれば、国が経済発展していると考えることができます。
・名目GDP
・一人当たりGDP
GDPには主にこの2つがあります。順番に触れていきます。
名目GDPとは、比較したい年の価格を基準に物価変動の調整をせず国内総生産(GDP)を評価したものを言います。
国際統計を専門的に行っているGLOBALNoteによると、2021年のGDPランキングはこのようになっています。
GDPの高い国は世界でも存在感のある国々ですが、内閣府はGDPが高い=経済発展している国と考えているわけではありません。
GDPは一般的に国の人口が多ければ多いほど大きくなるからですね。人口が多ければ、それだけ消費が多くなるということですね。
そして、その名目GDPを人口で割ったものが一人当たりGDPです。
一人当たりGDP
実際に、経済発展の指標として重要なのは1人あたりGDPです。
名目GDPでは人口が多ければ数字が大きくなりますが、一人当たりGDPはそうはならず、国民一人当たりの本当の豊かさを表すことができるからですね。
2021年の一人当たりGDPの上位10か国はこのようになっています。
一人当たりGDPで見ると、ODCEにも加入しておらず、GDPランキングの上位にも入っていなかったシンガポールやカタールなどが入っています。
日本は名目GDPは世界3位なのですが、一人当たりGDPで見ると28位にランクインしています。1位の中国は1人当たりGDPで見ると65位まで下がります。
1位のルクセンブルクは人口50万人ほどの国土の小さい国ですが、他国からの労働者が多いため、1人あたりGDPが高くなっているのですね。(一人当たりGDPは他国からの労働者の経済的寄与を含めているからです)
そのように考えると、一人当たりGDPの高いスイスやカタールの国民は日本よりも豊かな暮らしをしている一方で、中国やインドの国民は日本人よりも貧しい生活を送っているということになります。
これは、多くの人が想像することと乖離していないですね。そのように考えると、一人当たりGDPは国の豊かさを正確に表した指標ということです。
新興国投資で抑えておくポイント
名目GDP、一人当たりGDPから考えると、新興国投資には抑えておくべきポイントが2つあります。
・GDPが高くなっている=株価が上昇するとは限らない
・為替リスク
私は新興国投資については、この2つを抑えておくべきだと考えています。
例を挙げながら、順番に触れていきます。
GDPが高くなっている=株価が上昇するとは限らない
新興国でGDPが上位にある国として、GDP世界第2位の中国が挙げられます。中国はGDPが高く、GDP成長率もプラスで推移しています。
近年20年の伸びは凄まじいものがありますね。2022年上半期のGDP成長率は12.7%と現在も高水準を維持しています。しかし、株式相場はそうではありません。
中国の上海総合指数で確認して見ると、2015年のチャイナショック(政府主導で株式の買い煽りをして、結果的にバブル崩壊した経済事故)を除くと、典型的なボックス相場で20年間で大きな動きはありません。
このように、GDP成長率と株式指数は連動していないことがあるのです。
もちろん、GDP成長率と株価指数の伸びが一致している国があることも事実です。(戦後の日本などが正にそうですね)
しかし、GDP成長率が高い=株式指数も高くなる、というほど単純ではないということです。
為替リスク
新興国株式投資には為替リスクが伴います。急速な経済発展を遂げている国には高いインフレが伴い、通貨安の原因になります。
それは、日本から投資している投資家にとって悪いことではありません。通貨安で新興国通貨ベースで株価が上昇するからです。
しかし、通貨安には為替の問題が付きまといます。株価が上昇しても、為替差益で結局損をしてしまう可能性があるのですね。
新興国株価が上昇する=新興国投資をしていれば利益が出る、とはならないということです。
急速なインフレによる為替差益と、株式の上昇を考える必要があるということです。
YOHの考え
成長する国へ投資する新興国株式投資ですが、安定して利益を出すのが難しいというのが私の考えです。
・経済発展=株価上昇とならない
・為替リスク
この2つがあるからですね。そのため、よほどの理由が無い限り、新興国株式への積極的な投資は必要性を感じません。
そのため、私はポートフォリオ内に新興国株式を組み込む必要は無いと考えています。
新興国の成長を取り逃がしたくないのならば、VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)への投資で十分だというのが率直な感想です。
全世界株式に資産投下していれば、先進国、新興国、発展途上国の成長を享受することができることを考えると、新興国株式投資の比率を増やした株式投資は、長期投資には向いていないということです。
GDPというのは株式投資の対象地域を選ぶうえでの大切な要素であることは確かですが、逆に言えば、要素のひとつに過ぎないということです。
・GDPが右肩上がりだから投資対象として適切
・GDPの伸びが顕著だから株式市場も伸びていく
このような単純なものではないということですね。
実際には様々な数字や状況を考えて総合的に判断する必要があるということです。
ご覧いただきありがとうございました。
資産運用で大切なのは投資対象の規模感を把握することですね。基本的に規模の小さいものはポートフォリオ内の比率を低くした方がよいですね。
投資の基本は米国株式への投資だと考えています。それについては、こちらです。
長期投資の為替ヘッジの考え方については、こちらをご覧ください。