息を吹き返しているレバレッジ系ETF
今年のはじめから値下がりを続けていたレバレッジ系ETF(特に米国株式市場をベンチマークとしていたもの)が、8月に入って息を吹き返しつつあります。
SPXL 銘柄 - ディレクション・デイリーS&P500ブル3X 投資信託(ファンド)情報 - Bloomberg Markets
これはS&P500の3倍の成果を出すことを目指しているETFのSPXLの直近1年のチャートです。
・最高値 1月 145ドル
・最安値 6月 60ドル
・現在の価格(8月12日) 89ドル
基準価格はこのように推移しており、半年で約60%値段を下げていたことになります。そして、現在は最安値から約50%値段を戻しています。
指数の○倍を目標とするレバレッジ系の投資信託やETFは一定の人気があり、資産投下対象とされている方も少なくないですが、非常に癖のある金融商品です。そして、誰が資産投下しても安全に資産増加させることができる金融商品ではありません。
・レバレッジ系金融商品とは
・独特の値動きについて
・資産投下する際に注意するポイント
今回はこの3点について考えてみたいと思います。
レバレッジ
レバレッジとは、梃子のことです。梃子は、小さい力で大きいものを持ち上げたする際に使われますね。日常生活でも様々な場面で使用されています。株式投資でのレバレッジとは、倍率と捉えるのがよいですね。
・iFreeレバレッジNASDAQ100
・日本株4.3ブル
・DIREXION DAILY S&P500 BULL 3X SHARES (SPXL)
これらは全てSBI証券で購入することができる投資信託、ETFです。iFreeレバレッジNASDAQ100を例に取ると、NASDAQ100の指数に対して2倍の投資成果を目標としている投資信託です。
・短期間で大きな投資成果を得ることができる
・少ない元本で大きく資産を増やせる
このようなことから、一定の人気があるのが、レバレッジをかけた投資信託、ETFです。
株式投資におけるレバレッジについて
投資信託やETFは基本的に目標となる指数があります。
・日経平均
・TOPIX
・S&P500
・Nasdaq総合指数
・Nasdaq100
このような一定の指数と同じ動きの投資成果を期待しているのが、インデックスファンドです。そこに、先物取引でレバレッジをかけて、指数の倍の動きを目標としているのがレバレッジをかけた投資信託やETFです。
レバレッジ系金融商品の値動き
レバレッジは先物取引をしている性質上、日ごとに指数の倍の動きをするような商品設計です。そのため、指数が上下動をすると、元本毀損が大きくなります。
・1日目 100万円の株が10%下落 → 90万円
・2日目 90万円の株が10%上昇 → 99万円
パフォーマンスが10%で同じでも、元本が減っているのが株式投資です。これにレバレッジをかけていると、元本毀損がより大きくなるのですね。
・1日目 100万円の株が10%下落(レバレッジ2倍) → 80万円
・2日目 80万円の株が20%上昇(レバレッジ2倍) → 96万円
パフォーマンスだけ見ると、元に戻しているのですが、資産が大きく目減りしているのがレバレッジをかけた投資信託やETFの特徴です。
指数のパフォーマンスが1年前から比較して40%上昇しているから、2倍のレバレッジをかけていれば、元本が80%増えている、とはならないのですね。
資産投下する際に注意すること
私は、株式投資で最も大切なことは元本毀損しないことだと考えています。長期、短期、インデックス、アクティブどれでも、元本毀損してしまうと、投資成果に大きな差が出るからですね。
株式投資は利回りよりもスケールで勝負した方が勝ちやすいのです。投下資産が少ないうちは、利回りよりも投下資産を増やした方が、資産形成の速度と安定性は上がります。
利回りをしっかりと考えるのは、ある程度資産規模が大きくなってからでよいのですね。そのような考えから、レバレッジ商品は長期投資に向いていないと考えています。
・元本毀損した際に復帰するのに時間がかかる
・レバレッジをかけていない商品と比較して元本毀損の可能性が高い
・ランニングコストが高め(1%前後)
この3点が主な理由です。また、長期投資の基本であるつみたてNISAにはレバレッジ商品は含まれていません。そのことからも、長期的に安定して資産を増やせると考えられてはいないのですね。
レバレッジ商品は波をつかみにいく商品
レバレッジをかけた投資信託やETFは投資不適格化と言えばそうではありません。
・少ない元本で大きく資産を増やせる
・はっきりとした右肩上がりの相場では大きく資産が増える
このような特徴があるからですね。指数に投資しながら、大きく資産を増やすことができるのは、レバレッジをかけた投資信託やETF最大の強みです。
しかし、S&P500のような長期的に右肩上がりの指数でも、上下動を繰り返しながら上昇していきます。直線のように右肩上がりではないのですね。
そして、レバレッジ商品は上下動では投資成果が下がってしまう特徴があるのです。そのため、長期的に上がっていても、思ったほど投資成果が得られないことがあるのです。
しかし、短期的に右肩上がりであれば、レバレッジをかけていた方が大きな投資成果を得ることができるのは間違いありません。
このグラフを例に取ると、2000年~2010年にNasdaq100にレバレッジをかけていた場合、投資成果は辛酸を舐める結果となっているでしょうが、2020年3月以降にNasdaq100にレバレッジをかけていた場合、驚くべき投資成果を得ていたでしょう。
長期的には投資成果を出しにくいが、短期的に波を掴んだら大きな投資成果を得ることができる。それがレバレッジを用いた株式投資です。
YOHの考え方
レバレッジ系金融商品は仕組み自体はしっかりとしており、投資対象のベンチマークも優良なものを選定している投資信託やETFは少なからずあります。
・長期的に見て右肩上がりの指数に対して3倍で資産形成ができる
・ベンチマークが優良なものであるなら、長期投資前提なら資産増加させることができる
このようにならないのが、レバレッジ系の投資信託やETFです。仕組み上、大きく元本毀損した場合、含み損を取り戻すことが極めて難しいからですね。
私はレバレッジを用いた株式投資は行っていません。先にも述べたように、元本毀損の影響を受けやすいからですね。長期投資で重要なのは利回りではなく、元本を守り抜くことです。
・資産形成の速度
・資産形成の安定性
・日常生活の安定性
元本毀損してしまうと、これらのものが脅かされるからですね。
・短期間で大きく資産を増やす
・若くしてFIRE
元本を守り抜く投資戦略では、このようなことはできません。しかし、それでよいのです。凡人には凡人の資産形成方法があります。
・誰でも資産を増やすことができる
・安定的に資産を増やすことができる
この2つを兼ね備えているのが、インデックス投資なのです。そこにレバレッジをかけて波を取りに行く必要はありません。レバレッジをかけた投資信託やETFを購入するにしても、投資のコアにすることはありません。
レバレッジ系の投資信託やETFは非常に早く資産増加させることができる可能性はありますが、それははっきりとした右肩上がりの相場であることが前提です。
・上下動を繰り返すことなく値を上げていく
・大きな落ち込みを経験することなく上昇し続ける
このような相場でなければ、レバレッジ系の投資信託やETFは力を発揮しないということです。
実際に、息を吹き返しているSPXLの基準価格が買値に戻っても、資産状況は元本を下回っていることになります。
・はっきりした右肩上がり相場
・短期的な上昇局面
レバレッジ系の投資信託やETFで資産増加させるためには、このようなことを予測して資産投下する必要があるということです。
そして、このような投資手法は誰にでもできることではない、というのが私の考えです。ご覧いただきありがとうございました。
レバレッジ系投資信託として有名なのは楽天レバナスですね。
S&P500の4倍の成果を目指すファンドも存在します。その扱いは非常に難しいですね。
株式取引でレバレッジをかけることができる仕組みとしてCFD取引があります。日本で有名なのは「くりっく株365」ですね。