レバレッジ系金融商品
ここ数年の投資環境で人気のある金融商品のひとつにレバレッジ系の投資信託やETFがあります。
・iFreeレバレッジNasdaq100
・SPXL
具体的に言えばこのような金融商品です。これらの金融商品に人気がある理由としては、その利回りの大きさです。
・保有していれば資産が大きく増加する
・売買差益によって利益を生み出すことができる
このような特徴から非常に人気があるということです。そして、ベンチマークとしている指数がメジャーなものであることも人気を押し上げている理由ですね。
・Nasdaq100
・S&P500
このような長期的に見て右肩上がりの優良な指数に連動していることから、安心感があるということです。そして、このようなレバレッジ系の金融商品で人気があるもののひとつがNasdaq100にレバレッジをかけた金融商品、通称レバナスです。
このレバナスについては、短期的に見て突出したパフォーマンスを出すことがあります。
・月で30%上昇
・年間20%増し
このようなことから、レバナスに大きな期待を持つ方というのが少なくありません。
・レバナスだけに資産投下しておけばよい
・レバナスがこのままのパフォーマンスを続ければ5年でFIREできる
SNSなどではこのような極端な意見も見受けられます。
しかし、このようなことが確かかどうかは、数字と要因をしっかりと確認する必要があります。
・レバナスのパフォーマンス
・レバナスで年利20%を上げ続けること
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
レバナスのパフォーマンス
レバナスのパフォーマンスを確認するために、レバナスとして非常に有名なiFreeレバレッジNasdaq100のパフォーマンスを見ていきます。
iFreeレバレッジNasdaq100は比較的新しい金融商品で設定開始日は2018年10月18日となっています。そこから2022年4月までのパフォーマンスを確認すると以下のようになっています。
注目すべきは2019年~2021年の運用パフォーマンスですね。年間収益率が最も高い2020年は91.4%という驚異的なパフォーマンスを出しています。単純に見れば、資産が倍近くになっているということです。
そして、パフォーマンスが最も低調な2022年を見ても、年間収益率はマイナス39.9%であることを考えると、上昇している年の方が大きく資産を増やしていることから、トータルでは大きく含み益を出しているように感じます。
こちらはNasdaq100にレバレッジをかけていない「 iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」の運用パフォーマンスですが、その差は一目瞭然ですね。レバレッジをかけていた方が年間収益得率の動きの幅が大きくなっているということです。
そして、その動きの幅は2倍以上になっていることがわかります。これはレバレッジをかけた金融商品の宿命と言えるものですね。
レバレッジ系の金融商品の指数が一方的に上昇した場合、上の図のように上昇幅以上のパフォーマンスを出すことになります。これは、日ごとに基準価格が更新されていくため、上昇局面においては日ごとに元本が大きくなるからです。
そのため、指数が一方的に上昇すればとんでもない運用パフォーマンスを出すということです。しかし、下落局面においては注意が必要です。
このように一方的に下落していく場合は、指数の下落率以上に価値が落ちていくということです。そして、いったん下落してしまうと、元の基準価格に戻すには下落率以上の上昇率を出す必要があるということです。
そのため、一旦大きく下落してしまうと、その後によいパフォーマンスを出していても元本復帰することが難しいという特徴があるということです。
レバナスで年利20%を上げ続けること
このようなレバナスのパフォーマンスや特性を踏まえて、年利20%以上の高いパフォーマンスを出し続けることができるかと考えると、非常に難しいというのが私の印象です。
Nasdaq100自体は非常に優れた株式指数で、長期的に見れば右肩上がりで上昇を続けていくことは明らかと言ってよいでしょう。しかし、Nasdaq100が長期的に上昇していくことと、レバナスで資産が増加していくことはイコールでは無いということです。
・Nasdaq100の価値が5年で2倍になった
・レバナスの基準価格も5年で4倍になった
これはイコールではないということです。ずばり言ってしまえば、レバナスは2倍になっていることは非常に考えにくいということです。その大きな理由は株式指数は上下動を繰り返して上昇していくという性質があるからです。
実際にNasdaq100は5年で基準価格が2倍になっており、年間パフォーマンスだけを見ると、年々20%増しだと考えても問題ありません。
しかし、細かな上下動を繰り返しているということは、金融商品の視点から見れば含み益を吐き出して場合によっては元本毀損しているということです。
そのため、Nasdaq100が長期的に見て価値が上昇しているからと言って、レバナスが長期的に価値を上昇させていくとは限らないということです。
YOHの考え
私はレバレッジを用いた資産運用は行っていませんし、これから先の行うことは無いと考えています。しかし、レバレッジを用いた金融商品が投資不適格だとは考えていません。
・短期的に大きく資産を増やす可能性がある
・一方的な上昇局面においては非常に有能
レバレッジ系の金融商品にはこのような特徴があり、これは投資対象として極めて真っ当なものだと言えるからですね。しかし、長期投資には向かない金融商品であることは明らかです。
先にも述べましたが、株式指数というのは、どのような優れた指数であっても一方的に右肩上がりで上昇し続けていくわけではありません。細かな上下動を繰り返しつつ、時には大暴落と言ってよい動きをしながら上昇していくということです。
そして、レバレッジ系の金融商品は大暴落が起こればそれまで蓄えていた含み益を一気に吐き出して含み損の転落してしまうほどの下がり幅を生み出してしまう可能性があるということです。
・レバナスで年利20%を継続する
・Nasdaq100は年利10%を出しているからレバナスならその倍
このように考えてレバナスに資産投下するのは極めて危険であるということです。実際に、レバナスで長期的に年利20%が確保されるのであれば、その利回りは消費者金融の金利よりも高いことになります。
・消費者金融で借金してでもレバナスに資産投下した方がよい
このように考えても問題ないということですが、このような投資手法は割に合わないということは、誰しもが肌感覚で持ち合わせています。
しかし、レバナスを長期投資の対象として選ぶということは、このような投資手法を受け入れてもよいということと本質的には同じだということです。
繰り返しになりますが、レバナス自体は真っ当な金融商品でリスクとリターンが同程度です。しかし、その使い方を間違えると資産形成の道具にはなり得ないということです。
レバナスは短期的に資産を増やすために資産投下する金融商品であって、長期投資のコアにすることとはもちろんのこと、長期投資の一角としてサテライト的に積立投資するものでのありません。
・レバナスで積立投資
・レバナスで長期投資
このような投資手法には全く向いていないのが、レバナスだと私は考えています。ご覧いただきありがとうございました。
レバレッジを用いた資産形成自体は行ってみるのもよいですね。万人にはおすすめできませんが、合っていれば短期間で大きく資産を増やすことも可能です。
日本株などにレバレッジをかける投資手法としてはCFD取引がありますね。くりっく株365が非常にメジャーですね。
レバレッジは下落局面において非常に弱いことが大きな特徴です。指数が10%下落すれば弱気相場入りした時と同じ状態になるということです。