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【追納しない方が得?】学生納付特例制度の年金未納分と株式投資どちらを優先するか

国民年金

 国民年金について覚えておくべきことはそれほど多くはありません。

 ・満額受給するには40年間保険料を納付する必要がある

 ・加入期間は20歳~60歳まで

 ・掛金は年間19.2万円(月1.6万円)、満額受給で年間78万円(月6.5万円)

 ・10年間納付で受給資格を得るが、60歳以降に追納することができる

 基本的な知識としてはこれだけ抑えておけばよいですね。

 詳しくはこの記事で触れていますが、国民年金を金融商品として見た場合、収益性はそれほど悪いものではありません。

fire-money.hatenablog.com

 そして、国民年金は国民皆保険制度の根幹であることから、大きく掛金が上がったり、受給額が大きく下がるということは考えにくいということです。

 ずばり言ってしまえば、ある程度得をするような商品設計は維持されると考えておいてよいということです。

 そんな国民年金ですが、納付でネックとなるのが、20歳~22歳の時の納付です。

 ・大学や短大に進学している

 ・専門学校に進学している

 このような場合、収入が無いので年間19.2万円納付することは非常に難しく、多くの学生にとって国民年金を納付することができません。

 そのため、学生は納付の猶予期間が与えられる学生納付特例制度を利用します。

 猶予された国民年金は10年間の納付期間を設けられていますが、追納するかは個人の選択に任されています。そして、20歳からはiDeCoやつみたてNISAなど株式投資をはじめることができます。

 ・学生納付特例制度の国民年金を追納する

 ・株式投資をする

 お金に余裕があれば両方をすればよいのでしょうが、そうではない場合、どちらかを選択するということになります。

 そして、どちらを選択するか判断する際に大切なのは数字で確認を行うことです。

 ・学生納付特例制度について

 ・学生納付特例制度猶予期間の追納

 ・追納分を株式投資に充てた場合

 今回は、国民年金の未納分を追納することと、株式投資どちらを優先したらよいかについて、この3点を中心に考えてみたいと思います。

学生納付特例制度

 日本国内に住む全ての人は20歳になった時から国民年金の納付が義務付けられていますが、学生は申請によって、保険料納付が猶予されるのが学生納付特例制度です。

 学生は国民年金保険料を納めるだけの収入がないから、働いてから納めることができるようにするための制度ですね。

 年金保険料の納付について学生は申請によって、在学中の保険料納付が猶予される学生納付特例制度を利用することができます。

 この特例制度を利用するには所得基準などの一定の要件はあるものの、非常に特殊なケースを除いたほぼ全ての学生が利用できるといってよいですね。

 この学生納付特例制度を使えば、国民年金の納付が猶予されますが、加入期間には含まれます。

 ・老齢基礎年金

 ・障害基礎年金

 ・遺族基礎年金

 国民年金保険料を納付していなくても、このような年金受給に必要な加入期間の算定に猶予期間が含まれるということです。

 しかし、保険料を納付しているわけではないので、年金受給額には反映されることはありません。

 65歳以降(繰り下げれば60歳)にもらえる年金受給額を満額にするためには、猶予期間分を追納する必要があります。

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出典 常総市ホームページ

学生納付特例制度猶予期間の追納

 国民年金は満額の480カ月で65歳から月6.5万円(年間78万円)受給することができます。そして、現在の月々の掛金は月1.6万円(年間19.2万円)です。

 受給額や掛金は年々変化していますが、この数値から大きく乖離することはないですね。

 学生納付特例制度を使って2年間納付の猶予を受けて、納付しなかった場合、年金受給額は満額の95%となります。

 ・78万円 × 95% = 74.1万円(追納しなかった場合の年金受給額)

 ・78万円 - 74.1万円 =3.9万円(年金受給額の減額分)

 追納しなかった場合、65歳からの年金受給額が年間3.9万円減額されるということです。

 ・16,610円 × 24カ月 = 398,640円(追納金額)

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出典 年金住宅福祉協会

 年金住宅福祉協会さんが作成されている図が非常にわかりやすいですね。おおよその平均寿命の85歳まで生きた場合、38.5万円差額として受け取れるということです。

追納分は社会保険料として控除される

 学生納付特例制度の追納でもうひとつ抑えておきたいことは、「追納した分は社会保険料控除を受けることができる」ということです。

 25歳、年収400万円(課税所得190万円)の方が2年間の年金保険料を追納したケースで考えてみます。

 ・所得税 (190万円-39.8万円) × 5% = 7.51万円

 ・住民税 (190万円-39.8万円) × 10% =15.02万円

 ・合計 22.53万円

 追納した場合は納税額は22.53万円となります。一方で追納しなかった場合の納税額を確認してみます。

 ・所得税 190万円 × 5% =9.5万円

 ・住民税 190万円 × 10% = 19万円

 ・合計 28.5万円

 追納しなかった場合の納税額は28.5万円となります。

 ・28.5万円 - 22.5万円 =6万円

 納した年は6万円税金がやすくなるということです。

 ・39..8万円 - 6万円 = 33.8万円

 追納額から所得税と住民税の減額分を引くと、実質的な追納負担額は33.8万円ということになります。   

 ・課税所得が多くなれば所得税率は大きくなる

 ・学生納付特例制度の追納期間は10年間

 このように考えると、追納はギリギリまで遅らせた方がよいですね。年収が上がれば課税所得も増加して、所得税額も大きくなるからですね。

追納分を株式投資に充てた場合

 国民年金の追納額39.8万円を株式投資した場合、65歳時点でどのようになるかを考えてみます。

 株式投資には様々な手法がありますが、今回は国民年金の追納額で年利5%の投資信託購入した場合でシミュレーションしてみます。

 ・投資信託購入時期は25歳

 ・運用期間は65歳までの40年間

 ・利回りは5%

 ・購入は39.8万円分を一括購入

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 このシミュレーションの場合、40年後の評価額は294万円になります。掛金が39.8万円、利息が254.2万円ですね。

 ・254.2万円 × 20% = 50.84万円(納税額)

 ・294万円 - 51万円 = 243万円(合計金額から税金を引いた金額)

 ・243万円 - 39.8万円 = 203.2万円(実際の手取りから元本を引いた金額)

 株式投資の利益は約20%課税されることになるので、実質的に増えた額は203.2万円ということになります。

 このように金銭的な部分だけを考えると、学生納付特例制度を使った国民年金を追納するよりも、株式投資をした方が得ることができるリターンは多くなる可能性が高いと考えておいてよいということです。

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数字で確認すると株式投資の方がリターンを得る可能性は高い。

YOHの考え

 年金未納分の追納と株式投資を比較した場合、金銭的なリターンは株式投資の方が多くなると考えた方がよいですね。

 ・約40万円追納して年間3.9万円年金受給額が増える

 ・85歳時点では未納と比較して78万円多く年金受給している

 ・差額の38万円分の含み益が出ている

 年金を追納した場合はこのようになります。次に株式投資について考えてみます。

 ・約40万円を40年間運用、実質的な運用益は203万円

 ・203万円 ÷ 3.9万円(追納による年金増加額) = 52年間

 年金の追納分が株式投資の含み益を上回るには65歳から52年間年金受給する必要があります。

 117歳まで生きる必要があるということですね。これは長寿化が進行している日本でも現実的では無い年齢です。

 このように考えると年金未納分を追納するよりも、追納する金額を投資信託を購入して40年間放置しておく方がよいということです。しかし、株式投資にはリスクがあります。

 ・元本が保証されている訳ではない

 ・自分で取り崩すことができる

 ・投資信託の繰上償還

 このようなリスクが株式投資にはあります。しかし、年金の追納はこういったリスクがありません。

 ・確実に受給することができる

 ・追納すれば確実に年金受給額が増える

 このようなメリットが年金の追納にはあるということです。どちらが優れていると考えるかは人それぞれですね。

 私ならリスクをとって株式投資をすることを選択します。リスクとリターンが見合っていると感じるからですね。

 ※今回は年金制度を金銭的な面だけから見ているので、「国民年金全ての人が等しく納めるべき」という考え方は別問題として捉えてください。あくまでもお金だけの話です。

 お金に関することは感覚や他人の意見ではなく、数字を見て自分自身で判断することが大切だということです。その結果として選んだ選択肢であれば後悔することはないと私は考えています。

 ご覧いただきありがとうございました。

 年金制度は老後生活の柱となり得るものですが、年金だけで生活するということは難しい時代になっています。ある程度のリスク資産を保有しておく必要がありますね。

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 厚生年金受給額についてはこちらで記事にしています。厚生年金については、受給開始年齢の引き上げ、受給額の減少を避けることはできないですね。

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 年金などの社会保険は非常に高額で優良な保険商品です。

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