公務員の資産管理の中心は預貯金
今はかつてないほど株式投資をはじめとする資産運用がブームとなっています。
・銀行預金の低金利化
・年金の不安視
・ネット証券の普及
・有価証券資産の手数料の低下
このようなことから、銀行預金だけで資産形成してくのではなく、自身で運用して資産増加させようと考える方が増えているということです。また、国もそのような声に応えるように、制度を作っています。
・iDeCo
・NISA
このような国の税制優遇制度も株式投資を後押ししているということです。そして、iDeCoやつみたてNISAは長期投資で資産を増やす最適解のひとつとして捉えてよい制度です。
しかし、公務員の中で資産形成で最も人気があるのは預貯金です。株式投資などの資産運用を行わずに、預貯金だけで資産形成をしている世帯が多数派といってよいですね。
・株式投資などの資産運用は危険
・費やしたお金が無くなるか倍になるのかギャンブル
株式投資などはこのようなイメージがまだまだあるということです。そして、投資手法によっては、ギャンブルで失敗する時のように資産を大きく減らすことは十分に起こり得ることです。しかし、会社員や公務員が資産形成のために株式投資をする場合、ここまで極端なことは望んではいない方が非常に多いですね。
・銀行の利率よりもよい金利でお金を増やしたい
・ローリスクローリターンで少しだけでも増やしていきたい
このように考えている方が多いということです。そして、このような背景にあるのは、老後への心配です。
・このまま生活していて老後を乗り切れるのだろうか
・老後生活のために資産形成しておきたい
このように考えて資産運用をされる方が非常に多いという印象です。
・公務員や会社員が貯金無しの厚生年金だけで老後を乗り切れるのか
・老後の資産形成のためにするべきこと
今回はこの2点について考えてみたいと思います。
平均的な公務員・会社員世帯の貯蓄額
国税庁の調査によると、男性の平均年収は567万円となっています。これをもとに平均的な会社員世帯を考えてみます。
・夫 年収567万円(手取り450万円、月30万円、ボーナス90万円)
・妻 パートタイムジョブ 年収100万円(手取り100万円 月8.3万円)
・こども1人
・平均年年収、共働き世帯数、出生率を考えると、これが一般的な会社員世帯と考えることができますね。
総務省統計局の調査によると、3人家族の生活費は月28.4万円となっています。ここから、定年退職までに貯めることができる預貯金を計算してみます。
・世帯の手取り年収 450万円+100万円=550万円(月45.8万円)
・貯金可能額 45.8万円-28.4万円=17.4万円
・年間貯蓄可能額 17.4万円×12カ月=208.8万円
・20年間の総貯蓄額 208.8万円×20年=4,176万円
平均的な公務員・会社員世帯で平均的な生活を送れば、20年間で4,176万円を貯めることができます。
※平均的と書いていますが、年間200万円以上を20年間継続するのは、お金のことを考えている優良家計世帯です。
平均的な公務員・会社員世帯の年金受給額
平均的な公務員・会社員世帯の年金受給額を考えてみます。
・夫 厚生年金に40年間加入 受給額138万円/年(月11.5万円)
・妻 国民年金に40年間加入 受給額78万円/年(月6.5万円)
・夫婦での合計 216万円(月18万円)
※夫の年収567万円・妻専業主婦
老後に現役と同じ生活をするとどうなるか
・月々の支出 28.4万円
・年金受給額 18万円
・月々の赤字 10.4万円
・年間の赤字 124.8万円
ここから、現役時に貯めた預貯金を取り崩して生活したとすると、以下のようになります。
・4,176万円÷124.8万円=33.4年
現役時の預貯金を取り崩して生活すると、33.4年で預貯金が枯渇することになります。65歳で受給することを考えると、98歳まで生きていれば老後生活は破綻することになります。
年金受給開始まで働く必要がありますが、これだけを考えると、何とかなりそうな気がします。
しかし、実際にはもっと厳しい状況が予想されます。
年金受給額の減少
・夫 厚生年金に40年間加入 受給額138万円/年(月11.5万円)
・妻 国民年金に40年間加入 受給額78万円/年(月6.5万円)
・夫婦での合計 216万円(月18万円)
これは、現時点での年金受給額なので、今の30~40代が年金受給する頃には、厚生年金は現水準の70%ほどになると考えられます。
※厚生労働省は所得代替率が50%を切ることはないと明言していますが、言い換えれば、50%まで下がることは間違いないということです。その点から考えてても、30年後には現水準の70%を維持できれば御の字と言ったところです。
・厚生年金 受給額 96.6万円(月8万円)
・国民年金 受給額 78万円(月6.5万円)
・夫婦での合計 174.6万円(月14.5万円)
30年後の世帯での年金受給額はこれに近いものと考えておく必要があります。これで、現役時と同じ支出をしていると、何年生活できるのかを計算してみます。
・月々の支出 28.4万円
・年金受給額 14.5万円
・月々の赤字 13.9万円
・年間の赤字 166.8万円
・4,176万円(現役時の貯蓄)÷166.8万円=25年
減少した年金で生活すると、現役時に4,000万円以上の預貯金を持っていたとしても、25年間で預貯金を使い果たすことになります。65歳で年金受給したとすると、90歳でお金が足りなくなると考えると、老後を凌げると考えるのは無理がありますね。
結論:現役時に頑張って4,000万円貯蓄していても、普通に老後を乗り切ることはできない。
YOHの考え
非常にざっくりとした計算ですが、貯金無しの年金だけ老後を乗り切ることは難しいというのが私の考えです。現役労働者の時と変わらないような生活をしていくのであれば、厚生年金受給であっても、貯金は4,000万円以上は必要です。
・妻はパートタイムジョブで共働き
・定年退職時に貯蓄4,000万円保有
このような世帯は間違いなく蓄財に熱心な世帯です。それでも、年金と貯蓄だけで普通の老後生活を送ることは難しいと言わざるを得ません。
・支出を減らす
・さらに預貯金を増やす
・年金受給後も一定の収入を得る
対応策としては、このようなことが挙げられます。支出を減らすことが、最も手っ取り早く効果がありますね。
・現役時に支出を減らして、貯蓄額を増やす
・老後は現役時よりも支出を抑えて慎ましく暮らす
いずれにしても、このような工夫が必要ということです。そして、資産を増やすなら、現役時に株式投資などの資産運用を検討してみるのも良い方法です。
・長期投資
・時間分散
・インデックス投資
このあたりを意識すれば、時間はかかり、リスクもありますが、預貯金だけの資産形成よりも資産を大きく増やすことができると私は考えています。
・平均的な支出
・平均的な収入
・平均的な預貯金
いずれにしろ、これでは老後生活は破綻してしまう可能性が高いということです。世帯によって工夫をして、現役時からある程度の準備をしておく必要があると、私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
年金に関してはこちらで記事にしています。GPIFとマクロ経済スライドがあるので、年金制度が破綻することはないと考えています。
年金は社会保険料と積立金で保険料が賄われる仕組みで、現在は積立金には手を付けられていません。そして、年金積立金の管理運営はGPIFがしています。
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