- 住民税非課税世帯に5万円の給付
- 住民税とは
- 住民税非課税世帯とは
- 住民税非課税世帯の具体的収入
- 給与所得者(単身者)
- 給与所得者(妻、こども1人を扶養)
- 公的年金受給者(単身者・夫婦の場合)
- YOHの考え
住民税非課税世帯に5万円の給付
政府は9月9日にインフレによる物価高騰に対する会合で、住民税非課税世帯への5万円給付を決定しました。
・食料品
・ガソリン
このようなものの値段が高騰しており、庶民の生活が追いやられていることが給付決定に繋がっているということです。そして、この住民税非課税世帯への5万円給付については、対象ではない世帯から否定的な意見が数多く出ています。
・住民税非課税世帯でなくとも生活は苦しくなっている
・物価高に苦しいのはどの世帯も同様
・働いて税金を納めるのは負けだ
このようなネガティブな意見が多く見られるというのが私の印象です。しかし、住民税非課税世帯とは、具体的にどのような世帯であるかを正確に把握している方というのは多くはありません。
・住民税とは
・住民税非課税世帯とは
・住民税非課税世帯の具体的収入
今回はこの2点について解説したいと思います。
住民税とは
住民税とは、その地域に住む人が地域社会の費用を分担するために負担するお金で市市町村民と道府県民税の2つに分かれます。
・市町村民税 6~8%
・道府県民税 2~4%
居住する地域によって、2つの税率は異なりますが、2つを合わせると10%になります。そして、住民税の10%は所得にかかることになります。
・収入(年収) - 控除 = 所得 ← ここに10%をかけたもの
この10%分を所得割と言います。そして、住民税は所得割の他に均等割があります。
・市町村民税 3,500円
・道府県民税 1,500円
・合計 5,000円
均等割も居住する地域によって異なりますが、概ねこのように分けられ5,000円を負担しています。
・所得の10%と5,000円
これが個人が負担する住民税額となります。
住民税非課税世帯とは
住民税非課税世帯とは、住民税がかからない世帯のことになります。
・収入(年収) - 控除 = 所得 ← ここに10%をかけたもの
住民税の計算方法はこのようになるので、控除が収入を上回っている世帯であれば、住民税非課税世帯になると考えてよいですね。(住民税は前年の所得を基に計算されます)
そして、世帯全員の所得がゼロ以下である世帯を住民税非課税世帯といいます。住民税非課税世帯はいくつかの減免や免除が認められています。
・国民健康保険料の免除
・保育料の無償化
・大学費用の無償化
・介護保険料の減免
・高額医療費の自己負担額の軽減
住民税非課税世帯はこのような減免や軽減が認められています。
住民税非課税世帯の具体的収入
住民税非課税世帯の対象は属性によって異なります。
・給与所得者(単身者)
・給与所得者(妻、こども1人を扶養)
・公的年金受給者(単身者・夫婦)
それぞれのケースで確認していきます。
給与所得者(単身者)
給与所得者とは、公務員や会社員、パートタイムジョブなどで生計を立てている方のことを指します。
住民税非課税世帯となるには控除額が収入を上回っている必要があるので、控除額から逆算して収入を求めるのがわかりやすいですね。
給与所得者で住民税非課税世帯に該当する場合、収入が180万円以上になることは無いので、給与所得控除は55万円になります。
そして、居住している地域によって、級地区分による控除があります。級地区分とは、生活保護法によって、地域による生活水準の差を解消するために設けられた控除です。
・1級地・・・大都市(大阪市)
・2級地・・・中核市(泉佐野市)
・3級地・・・地方都市(能勢町)
大阪府で言えばこのように分けられています。都会であるほど生活費が多くなると考えられるということです。
・1級地・・・45万円
・2級地・・・41.5万円
・3級地・・・38万円
それぞれの控除額はこのようになります。今回は1級地(大阪市)に住んでいるケースで計算してみます。
・給与所得控除 55万円
・級地区分による控除 45万円
・計100万円
控除額は100万円となるので、大阪市に住んでいる給与所得者は収入が100万円以下であれば住民税非課税世帯となります。
非課税計算には社会保険料控除、寄付控除(ふるさと納税)、iDeCo、医療費控除などは含まれません。そして、給与収入に失業手当や通勤費は含まないため、実際には収入が100万円以上でも住民税非課税世帯に該当する場合があります。
給与所得者(妻、こども1人を扶養)
このケースの場合、まずは級地区分による控除を確認します。扶養家族がいる場合は級地区分による控除額が大きくなります。
この計算式で級地区分の控除を計算した場合、3人世帯の控除額は136万円になります。
・35万円 × 3人 +10万円 + 21万円 =136万円(級地区分控除)
控除額が136万円となることを考えると、収入が180万円の給与所得控除55万円で所得が0円を超えてることは無さそうですね。
・収入 180万円
・給与所得控除 55万円
・級地区分控除 136万円
・180万円 - (55万円 + 136万円) = -11万円
このように考えると、3人世帯で収入が180万円であれば、住民税非課税世帯に該当することになります。そして、ギリギリで考えると、収入が206万円までは住民税非課税世帯に該当します。
・給与所得控除 69.8万円
・級地区分控除 136万円
・合計 205.8万円
これならば、所得はマイナス0.2万円となるため、ギリギリで控除が収入を上回ることになるということです。
公的年金受給者(単身者・夫婦の場合)
公的年金受給者(単身者)の場合、収入が155万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当することになります。
・公的年金等控除 110万円
・級地区分控除 45万円
・控除合計 155万円
このように計算することができるからですね。
※遺族年金や障害年金は収入にカウントされないので、含みません
夫婦で年金受給をしている場合は、年金収入が211万円以下の場合、住民税非課税世帯に該当することになります。
・公的年金等控除 110万円
・級地区分控除 101万円
・控除額合計 211万円
夫婦の場合はこのようになるということです。
YOHの考え
住民税非課税世帯に該当する収入について触れてみました。
・給与所得者(単身者) 100万円
・給与所得者(3人世帯) 206万円
・年金受給者(単身者) 155万円
・年金受給者(夫婦) 211万円
収入がある世帯で住民税非課税世帯に該当する世帯とは、このような収入の世帯であることがわかります。年金受給者で言えば、国民年金受給者はほとんどの方が該当することになります。その他には、生活保護世帯や障碍者世帯で収入が少ない場合などが当てはまりますね。
今回政府が決定した5万円給付の世帯はこのようなことに該当する世帯で、給付対象は1,600万世帯、9,000億円の財源を見込んでいます。日本の世帯数が5,400万世帯であることを考えると、給付対象が1,600万世帯というのは非常に多いという印象です。
私自身はこの5万円給付自体にはそれほど否定的ではありません。富の再分配というのは、政府による仕事のひとつで税の本来の使われ方としては、概ね正しいと思えるからですね。しかし、わずかな収入の差で給付金が行きわたらない方がいることに不公平感は感じてしまいます。
・給与所得(3人世帯) 収入210万円
このような世帯は住民税を支払っているので、住民税非課税世帯に該当せず、給付金を受け取ることができません。このような方にとっては、非常に不公平感を持つような仕組みになってしまっているということです。
国としては世帯ごとに収入を細かく見ていくことはできないので、どこかで線引きをする必要があるので、このような形でおこなうしかないのでしょうが、公平感のある救済措置とは言い難いということです。そして、収入だけで区切りを設けていることも不公平感がある要因になっています。
・収入は少ないが預貯金は十分にある
・株式の配当金などが高額
給付に不満感があるのは、このような世帯も住民税非課税世帯に分類されて給付対象となっているので、そこに不公平感を持っている方が多いということですね。
私自身の考えでは、国民全員に一律給付して、生活に困窮していない方に給付した分は、その世帯の控除を抑えるなどをして実質的に給付分を負担するような仕組みで回収するのが望ましいと思っています。
ご覧いただきありがとうございました。
資産形成において税金の知識は欠かすことができないですね。住民税決定通知書は目絵を通しておく必要はありますね。
ふるさと納税の節税の仕組みについてはこちらで記事にしています。
配当金にかかる税金については、一部を配当控除で取り戻すことができます。しっかりとしておいた方がよいですね。