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【数字でわかりやすく解説】学生納付特例制度を利用した場合の年金は追納した方がよいのか

国民年金

 国民年金の加入期間は20歳~60歳までの40年間です。10年以上加入して掛金を納付していれば受給することができます。また、加入期間が10年未満でも追納することによって、用件を満たせば受給することができます。

 現在の国民年金保険料は16,610円です。高卒などで20歳時点で働いていれば国民年金の掛金を払うことはできますが、大学進学していた場合、支払うことは容易ではない金額です。

 ・16,610円 × 24カ月 = 398,640円

 大学卒業と同時に就職するまでに、これだけの金額を納める必要があるということです。(4月生まれの場合)

 多くの大学生に用意できる額ではないので、多くの学生は学生納付特例を利用します。

  学生納付特例とは国民年金の支払いを先送りにしておくだけで、いずれは払わなくてはなりません。

 そして、社会人になって収入を得れば貯金やiDeCo、つみたてNISAなどをしたいと考える方は一定数おられます。

 しかし、貯金や資産運用をしつつ、猶予された年金を支払うということは金銭的な面から考えると容易ではないですね。

 そのため、学生納付特例制度を利用した場合の年金の追納は感情とは別に、しっかりと数字で確認を行う必要があります。

 ・周囲が支払っているので何となく支払う

 ・利回りなどを意識せずに支払う

 このような考え方は資産形成上イマイチだということです。

 ・学生納付特例制度について

 ・学生納付特例制度猶予期間の追納について

 ・学生納付特例は追納した方がよいのか

 今回はこの3点について考えてみたいと思います。

学生納付特例制度

 年金保険料の納付について学生は申請によって、在学中の保険料納付が猶予される学生納付特例制度を利用することができます。

 この特例制度を利用するには所得基準などの一定の要件はあるものの、非常に特殊なケースを除いたほぼ全ての学生が利用できるといってよいですね。

 この学生納付特例制度を使えば、国民年金の納付が猶予されますが、加入期間には含まれます。

 ・老齢基礎年金

 ・障害基礎年金

 ・遺族基礎年金

 国民年金保険料を納付していなくても、このような年金受給に必要な加入期間の算定に猶予期間が含まれるということです。しかし、保険料を納付しているわけではないので、年金受給額には反映されることはありません。

 65歳以降(繰り下げれば60歳)にもらえる年金受給額を満額にするためには、猶予期間分を追納する必要があります。

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出典 常総市ホームページ

学生納付特例制度猶予期間の追納

 国民年金は満額の480カ月で65歳から月6.5万円(年間78万円)受給することができます。そして、現在の月々の掛金は月1.6万円(年間19.2万円)です。

 受給額や掛金は年々変化していますが、この数値から大きく乖離することはないですね。

 学生納付特例制度を使って2年間納付の猶予を受けて、納付しなかった場合、年金受給額は満額の95%となります。

 ・78万円 × 95% = 74.1万円(追納しなかった場合の年金受給額)

 ・78万円 - 74.1万円 =3.9万円(年金受給額の減額分)

 追納しなかった場合、65歳からの年金受給額が年間3.9万円減額されるということです。

 ・16,610円 × 24カ月 = 398,640円(追納金額)

 追納金額が39.8万円であることを考えると、内部収益率は以下のようになります。 

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 11年以上受給すれば内部収益率はプラス0.16%になり、平均寿命の86歳まで生きれば内部収益率は2.00%になることがわかります。

追納分は社会保険料として控除される

 学生納付特例制度の追納でもうひとつ抑えておきたいことは、「追納した分は社会保険料控除を受けることができる」ということです。

 25歳、年収400万円(課税所得190万円)の方が2年間の年金保険料を追納したケースで考えてみます。

 ・所得税 (190万円-39.8万円) × 5% = 7.51万円

 ・住民税 (190万円-39.8万円) × 10% =15.02万円

 ・合計 22.53万円

 追納した場合は納税額は22.53万円となります。一方で追納しなかった場合の納税額を確認してみます。

 ・所得税 190万円 × 5% =9.5万円

 ・住民税 190万円 × 10% = 19万円

 ・合計 28.5万円

 追納しなかった場合の納税額は28.5万円となります。

 ・28.5万円 - 22.53万円 =5.97万円

 追納した年は5.97万円税金がやすくなるということです。追納額から所得税と住民税の減額分を引くと、実質的な保険料納付額は338,940円となります。この場合の内部収益率は以下のようになります。     

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 75歳時点で内部収益率がプラスに転じて0.18%、平均寿命の86歳まで受給すれば2.03%の内部収益率となります。

 ・課税所得が多くなれば所得税率は大きくなる

 ・学生納付特例制度の追納期間は10年間

 このように考えると、追納はギリギリまで遅らせた方がよいですね。年収が上がれば課税所得も増加して、所得税額も大きくなるからです。

内部収益率を見ればしない方がよい。どのように考えるかはその人次第。

YOHの考え

 ・追納金額 39.8万円

 ・追納した場合の控除額 5.97万円

 ・追納した場合の年金受給額 78万円/年

 ・追納しなかった場合の年金受給額 74.1万円/年

 ・追納した場合の内部収益率(社会保険料控除含) 86歳時点 2.03%

 納付状況や所得税率によって数字は変わりますが、この数字が学生納付特例制度の追納のおおよその目安になるということです。

 約40万円払って、年金受給額が年間3.9万円増えると考えておくとよいですね。金銭的に元を取ることだけを考えると11年間受給すれば元が取れるということです。

 内部収益率も2.03%と悪くはない数字です。しかし、ここには大きな問題点がありますね。

 ・今と30年後ではお金の価値は同等ではない

 ・自分が何歳まで生きるか分からない

 この2つのことは頭に入れておく必要があるということです。このように考えた場合、若い時に追納で40万円支払うことにどれだけの価値があるのかは個人の考えによるところが非常に大きいということです。

 私自身は年金制度を含む社会保険の知識が無い状態で、20代の頃に小分けに学生納付特例制度の追納はしましたが、今考えると追納しないという選択をすると思います。

 追納する金額と受給できる金額のリターンが合っていないと感じるからですね。

 ※国民年金は納めるべき、という感情は別にして数字だけを考えた場合です。

 ・20代や社会人の平均貯蓄額

 ・労働者の平均年収

 このようなことを考えると、猶予期間の40万円を追納するというのは非常にハードルが高いと感じます。

 ・生活費を削減してでも追納する

 ・追納を貯蓄よりも優先する

 学生納付特例制度の追納に関しては、このようなことをする必要はないですね。自分の生活基盤とある程度の貯蓄ができて、金銭的な余裕ができたのであれば追納する、といったスタンスで構えておく方がよいということです。

 また、年金受給額が不足していれば、60歳以降に国民年金基金に加入して年金受給額を満額に近づけることが可能であることを考えると、若い時に追納する意味はさらに薄れますね。

 ・追納しないと年金額が減る

 ・追納しないと満額もらえない

 ・10年過ぎたら追納できない

 このような情報は不安を煽りますが、大切なことはしっかりと数字を確認することです。年金いうのは国民全員が加入している保険商品です。

 保険やお金に関することは、数字を確認した上で自分自身で判断することが大切だと私は考えています。

 ご覧いただきありがとうございました。

 年金の繰り下げ受給に関してはこちらで記事にしています。

fire-money.hatenablog.com

 社会保険料についてはこちらで記事にしています。

fire-money.hatenablog.com

 厚生年金の内部収益率についてはこちらで記事にしています。

fire-money.hatenablog.com