1/20のヤフーニュース
内容を要約すると、人気ユーチューバーのフィッシャーズ・シルクロードさんが体調不良(呼吸苦)で救急要請して、その際に動画を撮影。病院搬送後に医療従事者から苦言を呈されたという内容です。
コメント欄には様々なコメントが寄せられています。
・救急車を呼ぶのはよいが、動画撮影してはいけない
・動画撮影するなら自分で病院へ行けたのでは?
・救急隊の活動の妨げになる
多くはこのようなコメントです。今回は、このヤフーニュースの事柄について、救急隊員目線で触れてみたいと思います。(私は、フィッシャーズさんについては、存じ上げておらず、動画は見ていませんので、記事内容だけから考えています。)
記事詳細
まずは、記事の内容から状況を深堀してみたいと思います。傷病者の容態と状況は以下のとおりです。
・成人男性
・主訴は39度台の発熱、呼吸苦、喉の痛み、悪寒
・自分自身で119番通報
・歩行不可
・病院搬送を希望している
・過去に扁桃腺炎になったことがある
この119番通報を受信したのならば、救急車は間違いなく出動します。
記事では詳細なバイタルサインは触れられていませんが、意識障害やSPO2の低下、補助換気が必要なほどの呼吸状態であれば、ドクターカーを要請するのですが、そこまでには至っていないことがわかります。(ドクターカーについては地域差がありますが・・・)
・意識レベル 正常
・体温 39度台
・SPO2 93~95%(酸素4L投与で98%まで上昇)
・脈拍 頻脈
・血圧 正常値
推測に過ぎませんが、このようなバイタルサインだったのではないかと思います。SPO2が低い時点で緊急度はそれなりに高いということですね。この容態であれば、早急に近隣の2次病院へ搬送します。
動画撮影について
・救急車を呼ぶのはよいが、動画撮影してはいけない
・救急隊の活動の妨げになる
このような意見を持つ方もいるでしょうが、救急隊の立場から言えば、動画撮影されること自体には特に抵抗はありません。
※もちろん、全ての救急隊員がそうではありません。救急隊も人なので個人差はあります。私は抵抗がないということです。
今回のケースの場合、シルクロードさんが動画撮影しているわけではなく、他の方が動画撮影をしている状況ですね。それならば、救急活動に大きな支障はないので、なおさら問題はありません。私ならば、特に気にすることなく活動します。
しかし、動画撮影することはあまりおすすめはできません。なぜなら、傷病者の病院搬送に不利に働く可能性があるからですね。
病院には様々なことを伝える必要がある
救急搬送の様子を動画撮影することをおすすめできない一番の理由は、受入病院が制限されてしまう可能性があることです。救急隊は搬送する病院に様々なことを伝えます。
・傷病者の基本情報(年齢・性別など)
・主訴
・バイタルサイン
・救急隊の処置内容
このほかに、付加的な事項も伝える必要があります。
・お酒を飲んでいる
・暴言を吐いている
・暴れている
・社会的知名度がある(政治家、芸能人、スポーツ選手など)
付加的な事項があることによって、病院も事前に準備をする必要があるからですね。例を挙げると、社会的地位がある方を搬送する場合、病院はマスコミ対応をする可能性があるということです。
そして、容態的には問題ないが、付加的事項が特殊であれば、傷病者を受け入れすることができないという場合があるということです。
今回の動画撮影している状況は、この付加的事項に該当します。この動画撮影している状況を病院が嫌がれば、受け入れ拒否されることは十分にあり得るのですね。
そうなった場合、呼吸苦で死ぬ思いをしているシルクロードさんは、動画撮影をしていることがネックになり、受入病院が決まらないということがあるということです。
YOHの考え
まず、私がこの記事を読んだ率直な感想としては、この方は自分の救急搬送を動画にして何を伝えたかったのかよくわからない、ということです。
YouTube動画は見てもらう方に何かを伝えたいという思いから作るものだと思うのですが、自分が救急搬送されることが何かを使えることになるのか?というのが私の感想です。(動画を見ていないので、詳細は分かりませんが・・・)
今回、シルクロードさんに苦言を呈したのは、医師、看護師、救急隊員、どの属性の方かわかりません。しかし、動画撮影していること自体には何ら問題はありません。しかし、自身にとって不利に働く可能性があるということを知っていたのかどうかはわかりません。
・動画撮影していることによって、受入病院が制限される可能性がある
このことを知っていて動画撮影していたのであれば、行為自体に問題性は全くないと言ってよいですね。動画撮影の重要度は人によって異なるからですね。
・自身を身の危険にさらしてでも、動画撮影したい
・動画撮影こそ命
このような価値観は誰にも否定することはできないということです。
・救急車を呼んだことに問題はない
・動画撮影もしてもらって問題ない
・しかし、動画撮影していることを病院に伝える必要はある
・その結果、動画撮影していることによって、病院が受け入れ拒否する可能性がある
・その場合は、受け入れ病院を探すのに時間がかかる
私がこの現場に出動したのであれば、シルクロードさんに、これらのことを伝えます。その結果、どのように判断するかはシルクロードさん次第ということです。
※バイタルサインが著しく悪い(酸素10L投与でSPO2が90%に届かない、異常な頻呼吸など)場合は、動画撮影を中止してもらい、早急に搬送することに努めます。
今回のケースであれば、救急車を要請することに問題性はありません。
・しんどい
・苦しい
・死ぬかもしれない
このような抽象的な身体の異常の感じ方は人によって異なるからですね。体温が37.5度でしんどくない人もいれば、動けないぐらいしんどい人もいるということです。救急車の要請基準も人によって異なるのは、当たり前といってよいのですね。
シルクロードさんにとって動画撮影がどれほど重要なものかを推し量ることは、他人には出来ません。しかし、命を危険を感じて救急要請するのであれば、傷病者自身も命を優先した行動をとっていただきたいというのが、救急隊としての私の考えです。
ご覧いただきありがとうございました。
救急隊が医師から苦言を呈されたことについては、こちらで記事にしています。
救急隊は活動において損害賠償請求される可能性があります。