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【YouTuberからの依頼】救急搬送時の動画撮影について

救急搬送時の動画撮影

 近年、消防組織で気を使う話題となっているのが災害活動時の動画撮影です。

 一般住宅などの火事がニュースで流される時の映像などの多くは、マスメディアが撮影しているわけではありません。

 その場に居合わせた方がスマートフォンで撮影されたものを報道機関が放送しています。

 映像の中には、消防隊が消火活動をしている様子を詳細に映し出しているものを数多くありますね。

 そして、消防隊の活動状況の映像を見て感じることは人によって異なるでしょうが、消防組織の観点から言えば、気を使う必要があるということです。

 ・悪意のあるような切り取り方をされて報道される可能性がある

 ・活動が適切でないと批判を受ける可能性がある

 このようなことを考える必要があるからですね。そして、このような動画撮影の心配は消防隊だけではなく、救急隊にも少なからずあります。

 ・YouTube配信している方が救急要請して動画撮影の許可を求められた

 ・記録に残すために動画撮影をしてもよいか聞かれた

 私の勤めている自治体でもこのようなケースが見受けられるようになってきています。

 ・動画撮影の実例

 ・救急活動を動画撮影してもよいか

 ・救急活動を動画撮影することのデメリットについて

 今回は、救急目線からこの3点について考えてみたいと思います。

動画撮影の実例

 この実例は私が対応した方ではありませんが、勤める自治体で起こった動画撮影の実例です。

 ・成人女性

 ・主訴は38度台の発熱、呼吸苦、喉の痛み、悪寒

 ・自分自身で119番通報

 ・歩行不可

 ・病院搬送を希望している

 ・既往症は無し

 このような方が救急要請をされました。

 まず、この119番通報を受信したのならば、救急車は間違いなく出動します。

 意識障害やSPO2の低下、補助換気が必要なほどの呼吸状態であれば、ドクターカーを要請するのですが、自分で119番通報できていることから、そこまでではないことがわかります。

 ・意識レベル 正常

 ・体温 39度台

 ・SPO2 93~95%(酸素4L投与で98%まで上昇)

 ・脈拍 頻脈

 ・血圧 正常値

 初期観察時点では、このようなバイタルサインだったと思われます。SPO2が低い時点で緊急度はそれなりに高いということですね。この容態であれば、早急に近隣の2次病院へ搬送します。

 ここまでは、一般的な救急傷病者の対応でよかったのですが、付き添いの方が救急隊の様子を動画撮影していたことから、話はやや複雑になります。

 ・傷病者はYouTuberをしており、この動画をYouTubeで使うかもしれない

 ・救急隊の顔にはモザイクを入れるから、動画撮影を継続させて欲しい

 動画撮影について確認したところ、このような申し出があったということです。

救急活動を動画撮影してもよいか

 このような申し出は救急隊としては判断が悩ましいところですね。私の自治体では、そのような事態の対応が定められていないからです。

 ・救急車を呼ぶのはよいが、動画撮影してはいけない

 ・救急隊の活動の妨げになる

 このような意見を持つ方もいるでしょうが、私は救急活動を動画撮影されること自体に特に抵抗はありません。

 ※もちろん、全ての救急隊員がそうではありません。救急隊も人なので個人差はあります。私は抵抗がないということです。

 今回のケースの場合、傷病者が動画撮影しているわけではなく、他の方が動画撮影をしている状況です。それならば、救急活動に大きな支障はないので、なおさら問題はありません。私ならば、動画撮影の申し出を受け入れて特に気にすることなく活動します。

 しかし、動画撮影することはあまりおすすめはできません。なぜなら、傷病者の病院搬送に不利に働く可能性があるからですね。

救急活動を動画撮影することのデメリットについて

 救急搬送の様子を動画撮影することをおすすめできない一番の理由は、受入病院が制限されてしまう可能性があることです。救急隊は搬送する病院に様々なことを伝えます。

 ・傷病者の基本情報(年齢・性別など)

 ・主訴

 ・バイタルサイン

 ・救急隊の処置内容

 このほかに、付加的な事項も伝える必要があります。

 ・お酒を飲んでいる

 ・暴言を吐いている

 ・暴れている

 ・社会的知名度がある(政治家、芸能人、スポーツ選手など)

 付加的な事項があることによって、病院も事前に準備をする必要があるからですね。例を挙げると、社会的地位がある方を搬送する場合、病院は個室を用意したり、マスコミ対応をする可能性があるということです。

 そして、容態的には問題ないが、付加的事項が特殊であれば、傷病者を受け入れすることができないという場合があるということです。

 今回の動画撮影している状況は、この付加的事項に該当します。この動画撮影している状況を病院が嫌がれば、受け入れ拒否されることは十分にあり得るのですね。

 そうなった場合、このケースでは、動画撮影をしていることがネックになり、受入病院が決まらず、適切な医療が受けられないことがあるということです。

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動画撮影自体は何ら問題はない。しかし、自分の状況を悪いものにする可能性がある。

YOHの考え

  今回紹介したケースは私が対応したものではありませんが、スマートフォンの普及によって、時代が大きく変化しているのだなと感じます。

   ・誰でも発信者になることができる

 ・いつでも映像を残すことができる

 ・手軽に全世界に発信することができる

 このような時代になっているということです。このようなことは発信者、受信者にとって多くのメリットがありますね。しかし、デメリットも多々あるということです。

 私がこの事例を聞いた時に一番最初に頭に浮かんだことは、自分の救急搬送を動画にすることの意味がよくわからない、ということです。

 YouTube動画は見てもらう方に何かを伝えたいという思いから作るものだと思うのですが、自分が救急搬送されることが何かを伝えることになるのか?というのが私の感想です。

 先述していますが、動画撮影をすること自体には問題はありません。しかし、自身にとって不利に働く可能性があるということを知っていたのかどうかはわかりません。

 ・動画撮影していることによって、受入病院が制限される可能性がある

 このことを知っていて動画撮影していたのであれば、行為自体に問題性は全くないと言ってよいですね。動画撮影の重要度は人によって異なるからですね。

 ・自身を身の危険にさらしてでも、動画撮影したい

 ・動画撮影こそ命

 このような価値観は誰にも否定することはできないということです。

 ・救急車を呼んだことに問題はない

 ・動画撮影もしてもらって問題ない

 ・しかし、動画撮影していることを病院に伝える必要はある

 ・その結果、動画撮影していることによって、病院が受け入れ拒否する可能性がある

 ・その場合は、適切な医療を受けられない可能性がある

 私がこの現場に出動したのであれば、傷病者と動画撮影している方にこれらのことを伝えます。その結果、どのように判断するかは相手方次第ということです。

 ※バイタルサインが著しく悪い(酸素10L投与でSPO2が90%に届かない、異常な頻呼吸など)場合は、動画撮影を中止してもらい、早急に搬送することに努めます。

 今回のケースであれば、救急車を要請することに問題性はありません。

 ・しんどい

 ・苦しい

 ・死ぬかもしれない

 このような抽象的な身体の異常の感じ方は人によって異なるからですね。体温が37.5度でしんどくない人もいれば、動けないぐらいしんどい人もいるということです。救急車の要請基準も人によって異なるのは、当たり前といってよいのですね。

 今回救急要請された方にとって動画撮影がどれほど重要なものかを推し量ることは、他人には出来ません。しかし、命を危険を感じて救急要請するのであれば、傷病者自身も命を優先した行動をとっていただきたいというのが、救急隊としての私の考えです。

 ご覧いただきありがとうございました。

 救急車の有料化というのはよく話題になりますね。そのことについて、私の考えはこちらで記事にしています。

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 救急隊が医師から苦言を呈されたことについては、こちらで記事にしています。

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 救急隊は活動において損害賠償請求される可能性があります。

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