現在の相場環境
現在、米国株投資をしている方にとって、相場環境は決してよいものではありません。
2019年のコロナショックから一本調子で上昇を続けていた米国株式市場が停滞しており、2022年はS&P500が約-20%のパフォーマンスで終えることになるなど、我慢の展開が続いているということです。
現在は円安の恩恵からそれほど影響を感じていない投資家もおられるでしょうが、このまま下落局面が続けばどのようになるのかはわかりません。
・米国株式市場のさらなる弱気相場入り
・ドル円の為替レートが110円ほどの水準に落ち着く
このようになれば、米国株式投資をしている投資家は資産を大きく減らしてしまうということです。
そのような環境下での対応策として考えられるのが、ディフェンシブな銘柄をポートフォリオに組み込むということです。
下げ相場においては資産を増加させることを考えるのではなく、資産減少を最小限に抑えるようにする守りの株式投資ですね。
その守りの株式投資の選択肢として挙がるのが、景気に左右されることが少ないディフェンシブなETF銘柄です。
・ディフェンシブなETF
・VDC(バンガード・米国生活必需品ETF)
・VHT(バンガード・米国ヘルスケアセクターETF)
・ディフェンシブなETFをポートフォリオに組み込むべきか
今回はこの4点について考えてみたいと思います。
ディフェンシブなETF
下落局面への備えとしては様々な方法がありますが、シンプルな方法としてポートフォリオに下落局面でも値下がりしにくい銘柄を入れることが挙げられます。
・VDC(生活必需品セクターETF)
・VHT(ヘルスケアセクターETF)
この2つのセクター別ETFはディフェンシブな銘柄として非常に有名です。この2つにつのETFについて触れていきます。
VDC
VDCはバンガード社が取り扱っているETFで正式名称は「バンガード・米国生活必需品ETF」です。
MSCI USインベスタブル・マーケット・生活必需品25/50インデックスをベンチマークとしており、同じパフォーマンスを出すことを目標としています。
・食品
・飲料
・流通
・家庭用品
・パーソナル用品の製造業
このような景気に対して敏感でない企業の株式で構成されています。生活必需品は好景気不景気関係なく使用するものなので、景気の影響を受けにくい特性があるのですね。
・設定日 2004年1月26日
・純資産総額 66.8億ドル
・経費率 0.1%
・配当利回り 3.05%
・構成銘柄 96銘柄
2023年1月28日時点での主なデータはこのようになっています。
組入れ上位10銘柄はこのようになっています。日用品、飲料、小売りなどで構成されていることが分かります。
オレンジ色がVDC、青色がVOOの直近1年間のチャートになります。全体的に見ると、VDCがVOOをアウトパフォームしています。
下落局面においてはS&P500よりもよいパフォーマンスを出していると捉えておいてよいですね。
VHT
次にヘルスケアセクターETFのVHTについて触れていきます。VHTはバンガード社が取り扱っているETFで正式名称は「バンガード・米国ヘルスケアセクターETF」です。
VHTはMSCI USインベスタブル・マーケットヘルスケアセクターをベンチマークとしています。
・製薬
・医療機器
・保険業
このような企業銘柄で構成されています。製薬や医療機器も生活必需品と同様に景気によって業績が左右されにくいとされています。
・不景気だから病気になる人が少なく保険加入者が少ない
・不景気だから医薬品が売れない
このようなことは考えづらいと言ってもよいからですね。
・設定日 2004年1月26日
・純資産総額 170億ドル
・経費率 0.1%
・配当利回り 1.6%
・構成銘柄 445銘柄
2023年1月28日時点での主なデータはこのようになっています。
構成上位10銘柄はこのようになっています。有名な保険業、医療機器、製薬企業が上位を構成していることがわかります。
オレンジ色がVHT、青色がVOOの直近1年間のチャートになります。一貫してVHTがVOOを上回っていることがわかります。
VOOはパフォーマンスがマイナスで推移していますが、VHTはプラス圏内に留まっていることを考えると、底堅くディフェンシブな役割を果たすことができると考えておいてよいですね。
YOHの考え
ディフェンシブなETFとして生活必需品セクターETFのVDC、ヘルスケアセクターETFのVHTについて触れてみましたが、2つのETFは構成銘柄などを見ても底堅いことがわかります。
・ポートフォリオのボラティリティを少なくするためにVDCを組み込む
・下落耐性をつけるためにVHTをポートフォリオに組み込む
このようなことは投資スタイルによっては検討してよいかもしてません。しかし、私個人としては、このようなセクター別ETFをポートフォリオに組み入れることはそれほど考えていません。
・VOOには生活必需品、ヘルスケア企業が多分に含まれている
・管理の手間が増える
・下がる時は結局は下がる
・為替の影響を受ける
すでにVOOにある程度資産投下している投資家にとっては、セクター別ETFを組み入れるのはこのような問題があるからですね。
私がセクター別ETFをポートフォリオに組み込まない一番の理由は「下がる時は結局下がる」という理由からですね。
赤色がVDC、オレンジ色がVHT、青色がVOOの直近1カ月の値動きです。直近1か月という短い期間で見ても同様の値動きをしていることが分かります。
・VOOと逆の値動きをする
・VOOの下落に対して比較にならないほど下落幅が小さい
このような値動きをするならば、ディフェンシブなETFはポートフォリオに組み込んでもよいのでしょうが、そのようにはならないということです。
あくまでも下落幅を限定的に抑えることができるというような認識でいた方がよいということです。
この「下落幅を限定的に抑える」というのをどのように評価するのかによって、ポートフォリオにセクター別ETFを組み込むかどうかは意見が分かれるということです。
そして、為替の影響によって起こる資産の減少に対しても考えておく必要があります。
基軸通貨が日本円である我々は外国株式投資では2つのリスクに晒されていることになります。
・株式の値動きリスク
・為替の値動きリスク
この2つによって資産が増減します。そして、VDC、VHTなどのディフェンシブな株式銘柄は株式の値動きリスクに対しては大きな力を発揮しますが、為替の値動きリスクに対しては無力だということです。
日本の基軸通貨が米ドルであれば、ポートフォリオに組み込むメリットは大きいのですが、基軸通貨が日本円である以上、長期的に見ても読むことができない為替リスクが大きすぎるということですね。
このような理由からディフェンシブなETFをポートフォリオに組み込む必要性はそれほどないということです。
私自身は株式市場の調子が悪い時に力を発揮してくれるのはキャッシュだと考えています。
・数字が減ることがない
・株価が下がれば相対的にキャッシュの価値が高まる
このように考えているからですね。そのため、現時点ではディフェンシブなETFをポートフォリオに組み込む必要性はそれほど感じないということです。
しかし、全ての投資家にとって必要性がないかと言えばそうではないですね。
・VOOなどの動きをマイルドにする
・セクター比率の調整
このようなことにディフェンシブなETFは大きな効果を発揮するからです。
大切なことは、自分自身で資産投下対象の特性をしっかりと理解して投資をすることだと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
どのETFを購入するかよりも資産形成に影響することがあります。それについてはこちらで記事にしています。
オフェンシブな株式投資手段としてはレバレッジ系ETFがあります。しかし、万人におすすめできる投資手法ではないですね。
ディフェンシブなETFはコアサテライト戦略でサテライトのディフェンシブな部分として添えるぐらいの使い方がよいですね。