新しいNISAのパフォーマンス比較
以前に新しいNISAの投資枠をS&P500連動の金融商品に資産投下した場合の検証を行いました。
・年間360万円積立を5年間行い、25年間運用
・年間120万円積立を15年間行い、15年間運用
この2つのケースで検証を行った結果は以下のようになりました。
【年間360万円積立の場合】
・最もパフォーマンスが悪いケースで30年後の資産は6,384万円(暴騰率354%)
・最もパフォーマンスがよいケースで30年後の資産4億9,067万円(暴騰率2725%)
・平均期待値は2億516万円
【年間120万円積立の場合】
・最もパフォーマンスが悪いケースは1928年に積立を開始した8,158万円
・最もパフォーマンスがよいケースは1970年に積立投資を開始した3億2,928万円
・平均期待値は1億4,549万円
結果としては、投資金額と投資運用を含めた期間が同じでも、年間360万円積立の方がパフォーマンスはよいということですね。
しかし、年代ごとに切り取って検証すると、年間120万円積立の方がパフォーマンスがよいケースも見受けられます。
そして、どちらの積立投資をしても、パフォーマンスが最もよい年代というのは同じです。
・360万円積立と120万円積立の比較
・年間120万円積立の方がパフォーマンスがよいケース
・最高のパフォーマンスを出すためには何が重要か
今回は新しいNISAの積立投資について、この3点を中心に触れてみたいと思います。
360万円積立と120万円積立の比較
先述していますが、360万円積立と120万円積立を比較した場合、投資運用期間が満期を迎えた時点で高いパフォーマンスが期待できるのは、360万円積立です。
1928年から1992年までの66回のパフォーマンスを比較した結果が上のグラフになります。
ほぼ、全ての期間で360万円積立(青色)が120万円積立(オレンジ色)を上回っていることがわかります。
10年ごとのパフォーマンスを確認しても、年間360万円積立の方が優れていることは明らかですね。
同じ金額を同じ期間で運用しているにも関わらず、1970年に積立をはじめたケースでは、1億6,139万円の差が生じていることがわかります。
しかし、全ての期間で360万円積立のパフォーマンスがよいわけではありません。
投資をはじめた年によっては、120万円積立の方が運用期間が終了した時点でよいパフォーマンスを出している年もあるのですね。
120万円積立の方がパフォーマンスがよいケース
ここからは120万円積立の方がパフォーマンスがよいケースを確認していきます。
・1928年
・1929年
・1936年
この3年に積立投資を開始したケースでは、360万円積立よりも120万円積立の方がよいパフォーマンスを出しています。
上の表は120万円積立と360万円積立の差が少ない上位を抽出したものですが、120万円積立と360万円積立の差がない年代というのは似通っていることがわかります。
・1920年代
・1930年代
この年であれば、年間積立金額に差があっても、投資運用期間終了後はパフォーマンスに大きな差がないということです。
この理由は、投資期間に元本が大きく減少しているからですね。
360万円積立で最もパフォーマンスが悪い1928年に積立をはじめたケースであれば、初年度こそは37.1%のプラスですが、その後は4年連続で暴騰率がマイナスになっています。
360万円積立はこの期間に積立投資を行って終了させているので、元本毀損の影響が非常に大きいということですね。
実際に、5年間で1,800万円を積立投資したにも関わらず、1932年の投資元本は824万円になっています。1,000万円近くの含み損を出しているということです。
ここから25年間運用して盛り返していったとしても、最初の元本毀損の影響が大きいため、投資運用期間終了後の1957年にはそれほど大きなパフォーマンスを上げていないということです。
しかし、120万円積立で投資期間を分散させることができているケースでは、下落が4年連続で続いていても、元本毀損の影響が少ないということです。
1928年に120万円積立を開始して、投資期間が終了する1942年時点で投資元本1,800万円が1495万円になっています。
投資期間を長くとっていた影響で含み損が200万円ほどに抑えられているということです。
それぞれの資産推移をグラフにするとこのようになりますね。投資期間初期は積立金額の差があることから360万円積立の方がパフォーマンスがよいですが、投資期間終了後は一貫して120万円積立の方がパフォーマンスがよいことがわかります。
このようなことから、投資期間中にS&P500のパフォーマンスが低調で推移するのであれば、投資期間が長い120万円積立の方がよいパフォーマンスを出すことができるということがわかります。
最高のパフォーマンスを出すためには何が重要か
それでは、新しいNISAの積立投資で最もよいパフォーマンスを出すために何が大切であるかを考えるために、それぞれの積立投資で最もパフォーマンスがよい年を確認します。
運用期間終了後に最もパフォーマンスがよいケースは360万円積立と120万円積立のどちらも同じ年の1970年です。
・360万円積立 4億9,000万円
・120万円積立 3億3,000万円
投資元本1,800万円がこれだけの金額になっていることがわかります。そして、順番にパフォーマンスがよい年を確認していくと、似通った年代であることがわかります。
・1968年から1972年に積立投資開始
・1997年から2001年に運用期間終了
この期間に積立投資をしたケースのパフォーマンスが高いということですね。
1968年から2001年までのS&P500のパフォーマンスを確認するとこのようになります。
30年間を通じて好調であるのですが、特に顕著なのが1995年から1999年にかけての暴騰率ですね。
・1995年 34.1%
・1996年 20.3%
・1997年 31%
・1998年 26.7%
・1999年 19.5%
この期間で資産額が3.19倍になることがわかります。
運用期間を長く取る積立投資でコツコツと投資元本が増えていき、運用期間後期に暴騰が起こって資産を大きく増やして資産運用を終了させているため、投資元本が3億~5億円に膨れ上がっているということです。
YOHの考え
今回は、新しいNISAで120万円積立と360万円積立したケースを比較して、新しいNISAで最もよいパフォーマンスを出すことについて考えてみました。
・投資期間中の元本毀損が大きければ120万円積立の方がパフォーマンスがよい
・運用期間後期に暴騰が起きればパフォーマンスがよくなる
それぞれの積立投資の結果を考えた結果としてはこのようになりました。
ここから、新しいNISAで最もよいパフォーマンスを出すために投資家ができることを考えると、以下のようになります。
・投資期間中の元本毀損はコントロールできない
・運用期間はコントロールすることができる
・高いパフォーマンスが連続した時に資産運用に区切りをつければよい
このように考えることができるということですね。
新しいNISAで最もよいパフォーマンスを出すために大切なことは、出口付近で高いパフォーマンスを連続して出すことです。
これは、投資家がどうすることもできないと思われがちですがそうではないですね。
新しいNISAは非課税期間が無期限であるため、任意のタイミングで資産運用を終了させることができます。
投資家はS&P500のパフォーマンスはコントロールできませんが、S&P500のパフォーマンスがよい時に自分自身で出口を設定することができるということです。
そのため、投資開始時点で運用期間を30年間と定めていても、運用期間終了時点で思ったようなパフォーマンスが出ていないのであれば、そのまま運用を継続するという選択をしてもよいということです。
その結果、さらにパフォーマンスが下がるということも十分にあるでしょうが、選択できるということに大きな優位性があるということです。
そして、そのような運用期間を延長するために大切なことは、資産形成を新しいNISAだけに頼らないことですね。
・ほかで生活資金を用立てることができている
・働いて給料を得ることができる
新しいNISAで任意に出口を設定するためには、このような別の資産が必要不可欠ということです。
新しいNISAは使い方によっては、それだけで人生におけるお金の問題を解決してしまうだけのポテンシャルがあります。
しかし、株式投資である以上、必ず上手く行くというものではありません。そして、投資期間を任意に設定できるというのは、自分である程度運用益をコントロールすることができるということです。
新しいNISAを使う上で大切なことは、新しいNISAだけに頼ることなく、コントロールすることができる立場にいることだと私は考えています。
ご覧いただきありがとうございました。
新しいNISAの120万円積立の詳細はこちらで記事にしています。
360万円積立についてはこちらで記事にしています。
新しいNISAの概要についてはこちらで記事にしています。